第36話


久しぶりに訪れた地元は、私には、やすらげる場所じゃなかった。


私は本家の長女になる。分家筋は年上だったり、後継がいなかったり、公営の墓地なんかにいくと生花はほとんど見なくなってきた。


どうしても、生花は腐って枯れていく。


(それがわかってるくせに、なんでわざわざ、人は生花を飾るんだろ?死者にもう一度亡くなれ?とでも?)


そう不思議だったけど、勝手なもので、周りが造花だらけになり、その意味をしったり、もう墓じまいを終えたところも多かった。


都会に出た親類はお墓でなく納骨しているし。最近では遺灰の一部を散骨するとかもらきいたことがあるけど、幼い頃から、墓参りは毎回連れられて、


「うちはほんけだかなら、お前がまもらんとな」


と言われ続けてるけど。


きっと長男の颯太はもっと言われるだろうけど、いずれお供えした生花すら、野晒しになり、枯れるなら、本家や分家なんか意味なくないの?


そもそも私の曾祖母は、いまでは聞き慣れない名前でよばれていた。米兵と間に子をなし、米兵は帰国した。


都会に紛れながら生活していたのに、人手が少ないからと、また田舎にもどされ、子は地元では裕福な農家の嫁となりetc。


私のような容姿がうまれた。どうせ美少女に生まれるなら。和菓子屋のいかにも日本人形的な美少女か、明日菜みたいなタイプか。


ギャルが嫌いってわけじゃないけど、完全にギャルだよね?


って自分で思う。


そんな私に田舎の血筋を残せなんか、終わってる気もするけど。


私の母はずいぶん田舎では居心地悪かったらしいし。


「私が本家から戸籍外したら、自由かなあ?」


「さあ?颯太は望まないんじゃない?」


世帯分離して税金とかは安くなるけど、そもそも花音はもう他の県に移住してる?


田舎の地域に入るけど、大都会すぎず、のんびりした街並みだ。


「颯太はあきらめ気味だよ?」


朝陽がため息混じりにいう。私はつい目を逸らした。


「颯太つれて駆け落ちなんかしないよ?」


「颯太にはできないし、そんな颯太に惚れました?でしょう?」


「朝陽なんでもわかるか、イヤなの!」


クッションに八つ当たりしたら、


「花音かわいい!」


ってまた朝陽がじゃれてきた。


たまに朝陽はネコっぽい。

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