第34話


「赤木ねえ。明日菜たちの天敵みたいなヤツだよね。けど、地元じゃたしかに有望株かなあ。カエル兄の存在がまたそんなに知られてないしね?」


「朝陽、またカエル兄呼びなってるよ?」


って、花音が言うけど。まあ、親戚?義弟の兄弟をなんて呼ぶの?


だけど、明日菜からきいた時からもうカエルだったしなあ。いまさら、あの変なナガレタコガエルを、義弟とは、なんかなあ?


あの頃、明日菜がたしかに変わっていったけど。私は何にもできなかったけど、明日菜はたしかに少しずつ変わったんだ。


あの変なカエル、たち、に。


「明日菜の親友が和菓子屋の末っ子でさあ、わりとひどい振られ方したんだよね?」


「ああ、なんか噂にきいたかなあ。けど和菓子屋の末っ子って、頭はいいし美人だけど、いいイメージないかなあ?って言うか、明日菜の旦那さんと噂だったよね?」


「私もてっきりそうだと思ったけどね。まさか遠恋で続いてたとは」


花音の言葉をそのままみとめる。あんまり明日菜と恋バナとかしたことがない。


ぞもそも私に恋愛経験がないから、恋バナしようがないわけだけど。


明日菜は恋愛ドラマや映画のヒロイン役をしだしてから、仕事の話をしなくなってたし。


明日菜の性格を考えたら、なんとなくわかるけど。


(だれに似たんだか。不器用なくらい純粋だ。あっ、お父さんかなあ?)


お母さんはわりと不真面目だから、真面目で頑固となると、お父さんかも?


末っ子だから、明日菜は覚えてないかもだけど、家族中から、溺愛されている。


いつだったか、愛されてる子はやっぱり大丈夫だって言われたかなあ。


明日菜の寮母さんだっけ?


愛情を知らない子じゃない。きちんと愛されてる。また信じて歩きだす。


お母さんは、そう何人かに言われてきたらしい。明日菜が疲れ切ったとき、人形みたいに笑うだけで。


ただゆっくり休んだら、またあなカエルがひきずりだした。


明日菜を少しずつ変えていったのは、あの変態する両生類だ。


ヘンテコなのに。


村上春馬、柴原真央。あのふたりはなんか似た雰囲気がある。


「いっそ、カエル兄を狙ってみる?スタッフ側だから、カエル兄は不参加だけどさ」


「いろんな意味で、笑顔で朝陽って、イカ墨だよね?」


「いろんな意味で、相変わらず花音は、独特のワードセンスだよね?」


「朝陽と颯太に通じてるから、いいの」


「颯太に内緒にしたのは、なんで?」


さっき颯太と話してた時は初耳みたい態度だったし。


「言っても颯太がとめるとは、思えないし。颯太と駆け落ちとかリアルじゃないし」


「まあ、颯太には無理だよね…」


「都会ならまた違うのかなあ?」


「さあ?私は住んだことないから」


いずれはいろんな場所が限界集落になっていくだろうし。


(私がもし誰かと結婚して、子供が産まれても、職がなければ食べていけないし?たぶん、私は地元に残ってとは言えないだろう)


「都会にでても颯太を忘れられない?」


「私から別れようとは、ならないよ?」


「…赤木と花音は見た目なら、あり?」


「フグにならないで?捌けないから」


「たしか資格とる規定がかなり難しいんだっけ?まあ、いいけどさ。食べる機会なんかないし」


見た目には、赤木と花音なら、美男美女かなあ。さっきのカエル兄と花音は、違和感ありまくりだけど。


それにしても、フグみたいに膨れっ面の花音は、


「相変わらず可愛いね?花音」


ハムスターみたいに、可愛いが、問題はわりと深刻っぽいなあ。


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