第26話


赤提灯をくぐると、派手な頭の色が目に入ってきた。


(なにも赤木だから、って赤にちかい茶髪にしなくても?もとバスケ部で、実家の建設作業を手伝ってるだけあり、体つきもごついし、


(いい筋肉ついつんなあ?)


仕事で鍛えた身体だろう。デスクワークの俺も、東京だとジムに行ったり、歩いてたけど、学生時代のように毎日身体を動かしてるわけじゃない。


もっというと、走り込み体力をあげるタイプの俺は、下半身がしっかりしてる。


赤木は全体的にシャープなイメージだが、一瞬、身構えたおれを。もうほろよいなのか、カウンターにある生ビールを一口のんで、


「村上春馬の兄貴だよな?たしか村上竜生?中学のときにやたらモテた先輩だ」


って、カウンターにいる微妙な高齢者の女将だから、ママさんだかに言った。


カウンターと、ミニテーブルが2個くらいの小さな店だ。カラオケもあるのか?


スナックに近いのか?


とにかくあまり学生時代やオンラインでの東京では、馴染みがない店に、ふらりと入ったわけだが。まさかの人物と初対面だ。


お互いに面識はないが、こんな田舎だ。お互いに有名人だし、おれは春馬を介して、悪い印象しか赤木に抱いてない。


思わず睨みつけたおれに、赤木は肩をすくめた。


「村上春馬は、嫌いだけど、それはそれだし?暇なら一緒にのみません?」


体育系らしく、先輩の俺にはきちんと敬語だ。見かけや行動はアレだけど、アレにしては、俺たち同年代のやつは、赤木を可愛がってた。


ただ赤木は、春馬の天敵だというか、なんというか…。


「あら、イケメンね?赤ちゃんのお友達?」


「赤ちゃんはやめてよ?おばさん」


「おばさんはやめなさい。たしかに、血のつながりのあるオバだけど」


って女将さんが口挟んできて、そんな会話がある。赤木の血縁者か?どうりで60代なのに、奇妙な色気がある垢抜けた人だ。


和食中心のお通しが、赤木のとなりに置かれて、俺は迷いながらも赤木の隣に腰掛けた。


外装のボロさからは、わからないほど、中はきれいにリフォームしてある。


落ち着いた和食やにも、バーカウンターにも、お気楽な田舎のスナックにもみえる、まあ、昼間は近所の高齢者がカラオケ喫茶として、集まってるらしいから、メインは昼なんだろな。


「うちの会社が、リフォームしたんすよ?どうです?」


「きちんと、仕事してんだなあ?」


「そりゃあ、こんな田舎だけど、後継ですしね。おれんとこ、そこそこ従業員もいるし」


チャラいみために反してしっかりした答えが返ってきた。そういえば、高校も工業系に通ってたよなあ。


そういう意味では、社会人キャリアはずーっと上かあ。


「神城と村上が結婚したらしいっすね?」


「いろんなところで、適当な事言ってた奴がなにをいまさら?」


「あんた、おれが何人いたら、あんなに赤木増えると思うんですか?内容バラバラでしたよ?」


まあ、きらいだから、放置したけど。


って赤木はつづけた。たしかに赤木の名前は、でなくて、元同級生とかだよなあ?


「けど、おまえも答えただろ?」


「まあ、初恋は引きずるでしょ?」


「初恋?」


「生でいい?」


「いや、ハイボールで」


「イケメンっすね」


いや、生でもいいが糖質が…。っておれは親父かよ?って呟きつつ、さっきの浅井さんが、ふっくらしていたのに対して、赤木のこの身体だ。


少しは考えるだろう。


ハイボールを礼をいいながら、うけとり、俺はついきいた。


「初恋?神城のことか?」


「俺は神城と付き合ったりしてないですよ?狙ってもない」


「えっ?」


「赤ちゃんは真央ちゃんに夢中になってたものね。神城明日菜の結婚より、和菓子屋の末っ子の結婚にないでたわよ?」


「うるさいな」


おかみさんの言葉に耳まであかくなってやがる。そういえば、赤木が付き合ってたのは、春馬が金魚の糞みたいにくっついて離れない、柴原真央だ。


「柴原なら、春馬と同じ会社のイケメン先輩と結婚したぞ?」


「なにがイケメンだ。黄原に頼み込んで、写真みせてもらったけど、完全にゴリラじゃないか!なんで,あんなのに、俺がまけんだよ!」


「酒乱なら帰るぞ?」


「まてよ!兄貴だろ!責任とれよ!あいつが真央を奪ったんだから!」


ガシッと腕を強い力で掴まれた。


「柴原と春馬は、なんもないだろ?神城と結婚してる」


「その神城がいないのに!仲が良すぎて、復縁出来なかった!俺もガキだけど、ガキだけど、そうさ、ガキすぎたけど!俺の初恋を返しやがれ!」


叫び、殴りかかっては、来なかった。


机に突っ伏し泣き出した赤木に、俺はただ戸惑い、


(いや、俺の先輩への悩みは?)


って思ったんだ。

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