第22話


浅井さんから鋭く睨まれて、


(なんだ?やる気なら負けないぞ?)


って反射的に身構えていた。そうしたら、そんな俺に、浅井さんは、カリカリて短髪を手でかきながら、


「そういえば、おまえも朝陽側の立場か」


ってつぶやいた。


「いや、ごく最近までふたりの関係を知らなかったんで、あんまり?」


おかげで大学留年が知れ渡りはしたけど、入試試験でもうバレてるネタだし。


たまに俺の元カノが記事に話したりしていたが、


(だれだよ?)


だし、俺には、きちんと説明が親父からきていた。あまり仲良くない兄弟だから、親父経由だけど。


もうすべてをスルーしていたら、いつのまにか、俺の人間関係も、そういえば、変わっていったよなあ。


不思議だけど。なんかきりかわったよなあ。人間関係が。


春馬の身内の俺ですら、そうだしなあ。春馬は逆にそれを利用したけど。先輩はほんとうに神城の身内だしなあ。


(有名人だから、仕方ない、らしが)


わりと簡単にふつうに有名人に、動画とかでなれるだろうけど、その場合は、その動画をしらなきゃはじまらなくて、全員知ってるのは、その意見の総意らしい。


は、みていたら俺でもわかるけど。春馬を知ってるから、絶対はない、とも思うし、いまは、無料アプリを登録しなくても、強要されたり、不思議がられることもなくなった。


そんなふうに世界は変化してるけど。


けどなあ、わりと春馬派じゃないのか?とも思う。まあ、アイツの場合、なにか意味不明な遊びにいつも夢中だから、世間知らずに生きていけたんだろうけど。


(結婚式で挨拶したあいつの会社は、パロってるけど)


外資だからか?


その真逆の立場になる俺や先輩の職種だけど。


(…そっか、先輩には、ここしかないのか)


あのデミオ事件の時に、俺の周囲はうるさくなったけど、赤の他人がたくさんいる大都会で、しかもコロナでリモートワークしたしなあ?


情報とか一人暮らしだし?簡単にシャットアウトしたよなあ。


彼女ともなんとなく疎遠なったしなあ。


けど先輩には、違う世界が広がってたのかな?


春馬は柴原って女子がずーっと引っ張っていって、金魚の分みたいだけど。


柴原ってやつと神城は親友らしいし、わりと春馬とラッシー思い出したような?


どちらかと言うと、結婚式は柴原の旦那のじいさんが、印象的だった。


あと例のカエル。


(…あいつ結婚式あげる必要あったのか?)


苦手なものを克服するための式か?


それは成人の儀式では?


そのわりとどうでもいいくだらなさなら100%の春馬の結婚式は、奇妙なあたたかさと幸せがあり、やっぱり母さんたちはないて、けど、あの時も先輩は笑ってたよなあ。


号泣する父親をちゃかしながら、けど、やさしいから、そのやさしげな笑う姿に、俺は見惚れたというより、


(そういえば、先輩はかなり鋭いよな?じゃあ、じゃあ、無意識にスルーかよ?)


「先輩を落とすには、どうしたら?俺、野球はやってないんですけど」


「まあ、数うちゃあたる?」


「バッティングセンターですか?」


「おまえ、器用に打ち返しそうだな?バッティングセンター系」


「運動神経ならわりといいですけど」


「…朝陽じゃなく花音どうだ?」


「なんで自分の彼女すすめるんすか?」


「いいやつそうだから。花音、いい女だぞ?あれでも一人暮らしだから、家事はできるし?わりとしっかりしてるが、耳栓はたまにいる」


「いやですよ。あの人、そもそも浅井さんしか見てないじゃないですか?」


俺はあきれて浅井さんをみるが、さっきの敵意はどこへやら、浅井さんはふにゃとパグみたいに笑った。


ブルドッグじゃなく、パグがおだよなあ。


「まあ、朝陽をくどくなら、ストレートだ」


って肩をすくめて、


「東京に連れて行くなら、どうぞ?」


「俺は帰ってきたんです」


たしかに先輩もいたけど、故郷の就職は俺の意思だと、俺はキッパリ言ったら、浅井さんは、なんとも言えない顔で、笑ってた。

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