第17話


相変わらずいつのまにか、美人になった花音がいた。


花音の場合、SNS通りの姿だ。田舎じゃ見ない格好で、相変わらず見た目も派手だが、となりのイケメンも、


(噂通りのイケメンだよなあ)


明日菜のカエルの兄だろう。朝陽がカエルって言うから、カエル顔だと勝手に思ってたけど、長靴ぬいで、安いシューズで小太りな俺より、花音の隣には、


「なんか似合わない組み合わせだな?」


「だね?花音の帰省の理由はわかったけど、後輩くんはどうして?」


って朝陽が目の前にいるイケメンに言う。なんか人種?が違いすぎて、同じ美男美女で、間違いないのに、違和感ある二人に内心であきれていた。


ってか、カエル兄はたしかに爽やかなイケメンだ。


爽やかなイケメンだよなあ?


けど、同じ美男美女だけど。


この対比って、違和感すげーな?


ゲップ飲み込みそうだ。イケメンが封筒を朝陽にわたした。


「…先輩、相変わらずマイペースですね?友人から預かりました。たぶんこんど地域主催の合コンイベントの参加についてです」


「合コン⁈なにそれ!楽しそう」


って、花音が目を輝かせた。相変わらず俺の彼女は、そういうイベントが大好きらしい。


「参加する?花音?颯太、申し込みあったよね?」


「ああ、たしか」


朝陽に促されて、俺がパソコンのデータ開こうとすると、


「参加日いつ?どんな人がエントリーするの?」


花音が興味深々に画面をのぞいてきたから、俺は画面を非表示にした。


「いちおうまだ守秘義務がある」


「けち!というか、なんで私が参加すると思うの?参加するなら、朝陽も颯太も一緒だよ?」


「いや、俺たちは違う部署だ」


いちおう彼女いるし?目の前に?


「私も興味ないかなあ?いまは。けど花音が参加するなら、保護者がいるよね?後輩くん、参加してみる?」


「ひとつ質問いいですか?」


イケメンが俺たち3人をみる。


「先輩方の関係は?」


「幼なじみで、颯太と花音が恋人だよ?」


イケメンは俺を理解できないって顔でみた。


「…彼女に合コンすすめてるんですか?」


「いや、花音だし?」


俺は朝陽をついみる。


「ね?」


って朝陽が肩をすくめて、けど笑う。


「ムードメーカーなんだよ?花音。それに、颯太にわりと一途なんだ」


って笑ってる。一途かは別にして、俺も似たような感想だ。賑やかで、華やかな世界が大好きな花音は、クラスでも朝陽とふたりでムードメーカーだった。


今度のイベントを盛り上げてくれるはず。イケメンがまだ微妙な顔で花音をみた。


「でるんですか?」


「うーん?颯太でる?」


って、少し警戒した顔で花音が俺をみてる。


「まあ、変なヤツにお持ち帰りされないように、帰る時は連絡しろよ?というか、マジなヤツいるからな?そこだけは気をつけてやれ?」


田舎じゃ貴重なイベントになる。本気で後継者不足だ。


「じゃあ、参加しない。朝陽と颯太いないなら、参加しない」


って、ぶすくれてる。


朝陽が笑って、花音を抱きしめてた。


「そう言うと思った。花音、かわいい!」


「もう!朝陽⁈そういえば、さっきの颯太が好きって発言なに?」


「えっ?嫌いの方がいいの?」


「…それも、なんだかイヤ」


「でしょ?久しぶりだね?」


「うん、久しぶりだよ?」


ってますます花音が不機嫌になる。そして、俺と朝陽は耳をふさいだ。


「なんで、あんたたちは、喜ばないの!もっと反応しなさいよ!?」


って、静かな夜の古い建物に響く花音の相変わらずな高周波だった。

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