第15話
「まあ、神城の姉ちゃん攻略なら、これをいまから、持っていくついでに顔見てきたらどうだ?」
和也がカバンから、便箋をとりだした。
「なんだ?これ?」
「近所のじいさんから、神城の姉ちゃん宛のラブレター」
俺は思わずペットボトルから、吹き出しそうになり、あわてて、ペットボトル内に吐き戻した。
(もうこれ、飲む気ならねーな。もったいない)
春馬なら気にせず飲むんだろけど、こういうところが同じ兄弟だけど、まったく似てない。
われながら、めんどくさい性格だと、自嘲しながら、いや、ドッグフードや乾燥した藻とか食って腹こわしてるヤツがいたら、俺になるよな?
春馬がいつも母親から怒られていて、俺は、素直にああはなりたくない、だった。
春馬がやる事と真逆をやれば、母親は俺を褒めたし。
(でも、いつだって家族の中心は、春馬だったよな)
って、大学を留年するまで、俺は荒れてたな。優等生きどりながら、荒れたんだ。
どっかですねてたけど。
(あの時の親父の言葉で、きちんとわかった)
あれ以来、親の見方が違う。
春馬に対しても、俺から距離をとるようになれたけど。
(こんな時は、やっぱり思い出してしまう。ちいさいよなあ、俺って)
内心、苦く思いながら、俺は封筒をうけとる。きちんと役所の封筒だ。
「ラブレターじゃないだろ?まあ、いいけど。集団見合いかなんかの書類か?」
「まあ、そんなとこだよ?おまえはいいよな?好きな人できてさあ?」
「失恋したら最悪だよなあ?身内の身内だし」
冠婚葬祭で、会う機会があるよな?
わりと俺は、黙ってあきらめた方がいいんじゃないか?
とも思わなくない。
が、この後、それは甘い考えだって痛感した、んだよなあ。
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