第12話


支部に戻って報告書を作成したら、わりと遅い時間になっていく。


ブラックとかよくわからないが、俺が入ってからずーっとなので、もうなれた。


(俺はこの場所しか知らないし、外に行きたいとかないしな)


そんな俺を花音は臆病だとか、退屈だとか、は、言わなかった。


そういうところは、花音だな?とは思う。


(私は外に出たいから)


って強気な瞳で、けどほんとうに颯太来ないの?って少しだけ不安そうな顔してたよなあ。


まあ、あいつは俺がこの場所にいることに反対しなかったけど。


花音は美少女から、最近は年齢的に美人になった。


たまにインスタとか、SNSを見るけど(半分は強制的に?)知らないやつばっか。


カメラの機能やなんかテクニックもあるんだろうな。加工って言うんだっけ?


盛り付け?


(そのままでも、花音は美味そうに見えるけどなあ)


チラッととなりで、パソコンに向かってる朝陽の横顔をみる。


(小さい頃からまず変わらないしな?こいつ)


大人の女性にはなったんだろうけど、あんまり男っ気ないからから、幼い印象しか朝陽には残らない。


まあ、朝陽の場合、根っからのブラコンでシスコンで、わりとファザコンだ。


(明日菜の姉って立場はめんどくさそうだよな)


俺は知り合いすべて無名でいて欲しい。まじでそう思うけど、花音は違うらしいしなあ。


こんな田舎のいきつく給料なんかたかがしれてる俺を選ぶわけないよな?


SNSでよくグループ写真あげてるやつの方のSNSとかみたら、花音とのツーショットとかだし、なんか彼女みたいに書いてるし。


(花音に直接きいた事ないけど)


この場合、俺が外行ってももう手遅れだろしなあ?


俺の視線に気づいた朝陽が、顔を上げた。


「どうしたの?また花音のこと考えてたの?変な顔してるね?」


「切ない顔とか言えないのか?」


「しみったれた顔?ジメジメして、カエルが出そう」


「いい加減にカエルからはなれろ?」


「離れられるなら、とっくに。って言うかさ、わりと花音と颯太って、割れ鍋に綴じ蓋、だと思うよ?」


「われぶたに閉じふた?」


「違う、綴じだよ?だから、閉じないよ?」


「それは明日菜とカエルだろ?」


「ほら、カエルでしょ?」


「いや、おまえがあまりにカエルって言うからだろ?あだ名はやめてやれよ?」


「いいじゃん、カエルも色々いるし?まあ、明日菜はカエルじゃないけどね」


って肩をすくめる。そりゃそうだろ?


俺はあきれながら、時計をみて朝陽の頭をこずいた。


「ほら、もうこんな時間だ、はやく帰ろうぜ?少しこっちにまわせよ?」


「ほいほい、待ってました」


ありがとー♪


と相変わらずかるいノリで朝陽がデータを俺の方に送ってきたが、


「ーおまえ、最初から俺にやらせる気だよな?」


「だってパソコン得意じゃん、颯太の方が。適材適所だよ?」


って背伸びしてる。


(割れ鍋に綴じ蓋ねえ?それは花音相手には、俺じゃなくね?)


わりと俺たちの場合、ほんとうに腐れ縁だよなあ。


「まあ、サンキューな?朝陽。けど、明日の缶コーヒーはお前だぞ?」


「せこくない?」


「同じ給料だ」


って俺は朝陽にあきれた。まあ、朝陽とも腐れ縁なのに、俺の相手は、


ー花音。


不思議な幼馴染だよなあ。

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