第10話


俺は中学時代、同じサッカー部で、いまは実家の家業ついで、養豚と農家をしてる広崎和也に連絡した。


和也は三人兄弟の長男で、足が速い。エースだった。


俺が借りてるワンルームマンションに遊びにきた。


「悪いな?明日、はやいのに」


土日祭日休みの俺と違って生き物相手の職業だから、和也は明日もはやい。


ちなみに髪の毛は金髪で、むかしの爽やかなイメージはない。


耳と鼻になんか牛みたいに輪っかしてる。ピアスか?


「どんどん変わるな?」


「ネットべんりだしな?ほんとうはもっとロン毛にしたいんだが、豚がくいやがる」


「ーだろうな?けど、こんど地域の合コン参加するんだろ?さすがに、怖がられるんじゃないか?」


俺だって、久しぶりにあって、びびってた。俺の身長は178あるが、俺より上の身長。


180はこえてるし、身体つきもゴツいし。


「ああ、その前にはもどすか、サボるか?」


「さぼる気なのか?」


「だってさあ、真面目な格好をしたら、ありのまま、の俺じゃないだろ?見た目でどうこう言われんのはさあ?」


「第一印象がわりとすべてだぞ?というか、何歳になった?」


「おとなになったからの、自分らしく?まあ、だってなあ、人目気にしないでも豚の味は変わらないぞ?豚への愛情は変わらない」


「生産者の写真は?」


「笑顔がばつぐんのうちのばあちゃん」


俺は和也のばあちゃんを思い出し、納得した。こっちよりは、いいだろう。これはこれで若者に、


(映え?)


南九州のハエはでかいけどなあ。


「まあ、おまえは変わらないよな?竜生」


ミネラルウォーターを飲みながら(霧島の水)和也が笑う。人懐っこい笑顔は変わらない。


「相変わらずのイケメンだ。東京に彼女置いてきたのか?というか、弟と比べられたらお前の彼女や奥さん大変そうだな?」


「比べてどうすんだよ?俺が選んだのに」


「そういうとこ、お前って感じだよな?」


「どういう意味だよ?」


「根っから真面目な優等生。出来過ぎで、嫌味すら言う気にならない」


「優等生は留年なんかしねーよ」


俺はぼやいた。大学留年はべつに遊んで留年したわけじゃない、


けど、どっかで腐ってたよなあ。春馬の志望校が県外で、しかも県外うけるには、じゅうぶんな理由。


ー勉強ができる。


あいつなら、もっと関東とかの大学も行けたんだろけど、経済的に同じ九州をアイツはえらんだ。


高校だってかなり遠距離通学だったしなあ。


(結果的に俺の方が金かかってるし?)


あいつはストレートだ。


「まあ、お前の場合、弟が春馬だからなあ?大変だな?年子でライバルだろうし?」


「まあな。春馬ができすぎるんだ、俺には劣等感しかないけど、それと俺の彼女はべつだろ?なんで俺の評価が彼女にいくんだよ?」


「俺にきくなよ?」


「お前が言ったんだろ?」


あきれつつ、俺もミネラルウォーターをのむ。


「ビールあるけど?帰り送るぞ?」


「いや、ばあちゃん最近、夜中に具合悪くすることあってさ?運転手がいる」


「ーそっか」


俺の脳裏にじいちゃんの最後の方の記憶が蘇る。たしかになあ。


家族なら、友人ならできる、赤の他人でもできるけど、法律の縛りがある。


が、ある。


って、公務員になり、親父の立場やいろんな意味を知るけど。


「ばあちゃんに久しぶりにあいにいくよ?」


「そうだな?そういえば、よく役所から、神城のお姉ちゃんと若い役所の人がコンビでまわってきてくれてさあ?あのふたりってできてんのかな?いちおう身内?だろ?知ってるか?」


って真顔で和也が言った。

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