第8話


颯太と一緒に事務所にもどる車内で私のスマホがなった。


表示には、村上竜生(カエル兄)。


私は忘れないようにご丁寧にカエルのイラストマークいりにしてる。


便利。


って思いながら、スマホの時計表示をみる。どうやら相手は仕事が終わったようだ。


仕事中に真面目なあの子は、私用のスマホを見ないだろし?


ついでに明日菜のカエルは、仕事中どころか、わりとかなりの率でスマホをみないらしい。


いま明日菜がカエルに、明日菜からのスマホをみるように、工夫してるらしい。


まあ、癖にしてしまえば、なんとか?


と言ってたなあ。もともとマメじゃないたちらしいし?


明日菜のカエルは、国民的大スターの彼女相手にもマイペースらしい。


それにしては?いや、それだからかなあ?


(真面目だよねー、カエル兄は)


うちのお兄ちゃんも、真面目といえば真面目だけど、カエル兄の方がリーダータイプかなあ?


結婚式でも思ったけど、顔立ち以外は似てない。


ただあのカエルの兄と言われたら、たしかに?


って思う。


(明日菜のお姉ちゃんが、私?だと、えー?だけど。まあ、お兄ちゃんも、えーだし?)


私にはお兄ちゃんいるしなあ。カエル兄はどうなんだろう?


そんなどうでもいいことを思いながら、


「でていい?」


一応、運転してる仕事中の颯太にきいたら、黙って前を見たまま頷いた。


ハンドルを握る颯太は口数がやや減る。私も社用車は苦手だから、減るよなあ。


「はい、神城です」


と私はでる。いちおう私も神城だ。


「こんにちは、村上です。先輩。いま大丈夫ですか?」


穏やかなイケメンボイスがきこえる。いや、清涼飲料水みたいな子だなあ?


そういえばあのストーカーのナガレタゴカエルは、清流にいるんだっけ?


「うん、少しならへいきだよ?さっきのメールみたの?」


「はい。ダブルデートって、どっち用ですか?」


少し不審そうにカエル兄がきいてきた。


おっと、そっちか?


って、横で颯太がつぶやいてた。どうやら颯太にもきこえたらしいし、


「…先輩、誰かと一緒にいるんすか?」


相変わらずこのカエル兄、兼、後輩くんは、勘がいい。


「うん、幼馴染で仕事仲間で、ダブルデートの彼氏と一緒だよ?」


「朝陽、そのいい方は、なんかいろんな意味で、問題発言だ?」


「大丈夫だよ?後輩くん、頭いいから?」


「褒められて悪い気はしないですが、たしかに面白い発言じゃないです。先輩、俺は好きなんですよ?」


「まあ、そうだろうね?あのカエル珍言、ばっかり言ってるから、こういう発言は好きでしょ?」


「いや、そりゃあ、まあ、あんなんでも大事な俺の弟ですけど。というか、そろそろカエルから、人間にしてやってください」


「いいじゃない?あそこのカエル、玄関で話してるよ?」


「いつから、春馬がウシガエルに進化してるんすか?」


「最近はウマも増えたとか?」


「ーはっ⁈」


本気で驚いてるから、最近明日菜からきいたウッドパズルの馬の話をした。


カエル兄はため息つきながら、


「まあ、神城がそれで幸せなら、いいですけど。まあ、もう、いいっすけど。先輩、ダブルデートってー」


後輩くんが言ったとき、事務所に車が到着した。


「あっ、事務所についた。ごめん、またね?」


私はつい習慣でスマホを切る。


そして、視線を感じた。隣で颯太が私をみてため息ついていた。


「なに?」


「いや、貴重なカエルを、少しは大切にしてやれよ?あまりになんかなー」


「颯太は花音の蛇でしょ?」


「花音はバジリスクだな?」


「ハーベスターじゃないんだ?」


「花音を刈ったら咲かないだろ?」


「いまのセリフ花音に言ってやればいいのに?」


「腐れ縁のおまえにしか言えねーよ?」


「だろうね、ま、カエル兄と私は私で楽しむから、花音と久しぶりのデートたのしみなよ?ダブルデートするほど、なにを花音を怒らせたの?」


「おまえと職場が同じでコンビだから」


「ーだよね」


田舎は若手が少ないし、これはもう、絶対に周囲が数少ない若者を地元に残したい、って企み感じる配置なんだ。


まあ、体力ある若手は私たちじゃあるけど。


長靴を履いたまま、地面におりた。


のどかに牛の鳴き声がする。それが私の故郷だ。

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