第7話


あまい、とぶつぶつ言うくせに、砂糖とミルク入りのコーヒーを飲む朝陽をみながら、あまりに変わらないいつもの風景に、俺はため息つきそうになる。


まったく変わらない風景だよなあ。


幼稚園からの腐れ縁は、田舎だと転校とか無い限り、わりと近い存在になる。


というか、俺たちの小学校とか縦割りだよな?いま?


めちゃくちゃ少人数になってきてる。


ふつうに少子高齢化、だ。


受け持ち先には、限界集落じゃないの?都会からみたら?って感じたりするが、まあ、田舎育ちの俺たちからしたら、少なくなったな?


や、また、閉店かあ。つぎ、初盆だっけ?けど、ここにはいないか?


とか系が増えていく。俺や朝陽の同級生たちも数えるほどしか地元にいない。


地元が好きもあるけど、でれない事情があるやつもいる。


花音は短大から外に出たけど。俺や花音みたいに続いてるやつは少数派で、花音は俺にはよくわからないしなあ。


幼馴染の腐れ縁だけど、腐れ縁なだけに、いつぶったぎれるか?


って短大に行く時に思ったな。俺だって県外に就職を考えなかったわけじゃないけど、じいさんばあさん、生きてるし、畑や牛舎の手伝いは昔からやってたし?


いずれたたむかもしれない職だが、祖父母が元気なら手伝っていくつもりと、まあ、とりあえず残った。


テレビなんかでみる都会は便利だとは思うけど、あんまり興味がない。


「そういう意味じゃ、おまえの妹が外に出たやついちばんか?」


神城明日菜、は、俺たちにとっては、いつも朝陽の後ろをチョロチョロしていた朝陽の妹だ。


学年が違うから、朝陽の妹かなあ?そこは花音たちも共通してる。


俺たちの大切な幼馴染の朝陽の妹。


いまじゃ国民的大スターらしいが、朝陽の後ろをチョロチョロしていた奴がなあ?


「明日菜は13歳で地元離れたしね。まあ、明日菜もこっちには戻ってこないだろね、カエルも」


「だから、カエルってなんだよ?」


俺は変わらない風景と朝陽にため息をつく。そして、


「ここにいるのが、花音ならなあ?」


ってぼやいた。


けど、


「この光景、花音に見られるのは、勘弁」


って肩をすくめる朝陽に、


「同感だ」


あんなに嫉妬するくせに、浮気ばかりの俺の幼馴染は、


自由すぎね?


ってのどかに、本物の牛の鳴き声に思った。

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