第5話


俺は一時間の残業あと、役所をでて、駐車場にむかいながら、スマホをとりだした。


そして、先輩からのメッセージに気づいた。


ちなみに弟はスマホ嫌いだが、俺は便利なツールとして使いこなしてる。


先輩の姉妹会話経由で聞く最近の弟の春馬はウッドパズルにハマってるらしい。


インテリアじゃなく動くパズルにハマって、動くまで、


(その場を離れない、ってどうなんだ?おまえの奥さんいま大事な時期だろ?)


とあきれる俺だが、俺の家族はもうそれが春馬だし?だけど、先輩の家族、神城一家に申し訳なさはあったけど、


「明日菜が選んだ相手よ?信頼できるわ」


なにしろ自慢の妹だよ?って先輩は朗らかにいつも笑う。


そういえば、中学の頃に一度だけ神城の微笑みを見たことあったな。


春馬からは見えない位置で、けど春馬にむけた優しい微笑み。


ある意味で神城の存在は特殊すぎて、俺たちには同じ人間とすら思えなくて、だから、神城の微笑みにドキッとして強く惹かれたのは、たしかだ。


人間らしいな?って、人形じゃなく、感情があるって、なんというか、画面越しにネットだらけの情報じゃなく、そのままに、


(ああ、神城って感情がある人間なんぁな)


その優しい笑みを、結婚式で俺にも向けられだけど。


(あれは、春馬の兄貴だから、だしな?)


その春馬は神城の親父さんと、なぜか外資系の自分のステージボスみたいな外人相手によくわからないバトル?いや、春馬がおちょくり、相手がさらに激怒?


よくわからないお笑い劇場をひらいていたが。


神城も春馬の同僚たちもスルーしてたなあ。不思議な光景の結婚式だった。


(しあわせそうだったな、神城)


10年以上まえにみた神城より、ぐっと大人びて、けど優しい包み込むような笑顔だった。


おなじ事務所だって、後輩たちからも慕われてるのがよくわかる。


あんな大スターが田舎の春馬を選んだって、不思議だけど、


俺はほろ苦く笑ってた。


あの微笑みまで、俺はどんなに理不尽な目にあっても目立つ神城が悪いんだ。


神城に感情なんかない、べつの生き物だ。


そうどっからで思ったんだよなあ?


でも、春馬?


おまえには最初から、神城は神城だったんだな?


乾杯しながら、完敗だよ?って思ったさ?


そうおもいながら、俺はメッセージボックスをあけたんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る