第16話 夢から依頼へ
『····和也死んで····』
『醜悪な怪物』
『汚らわしい』
『こんなの産みたくなかった。』
『本当に兄弟なの?』
『王族のお荷物』
『ゴミ以下』
『化け物』·····
····またこれか。アンスロポスから離れてから見ていなかったのに。
これは異世界に転生してから見るようになった悪夢だ。
現実で起こった辛い出来事のダイジェストがループして目覚めるまで終わらない。
これの対処法はない。
目を閉じ、耳を塞いでも駄目だった。
我慢しかない。
何時間も見た。
しばらくして終わった。
目覚めたらガテツが俺の頭を撫でていた。
「あなたは何故俺の頭を撫でているんですか?」
と聞き、ガテツの手をどけた。
「これはオーガ族に伝わるまじないだ。」
「まじない?どんなまじないですか。」
「悪夢でうなされている子供がいたら、すぐに目覚めさせる効果があるまじない。」
「本当に効果あるんですか?」
「やった瞬間にお前目覚めたぞ。」
「そんなの偶然ですよ。馬鹿言ってないで、依頼の虫型魔物の退治に行きますよ。」
「わかった。しかしその前に道具を補充しよう。依頼はそれからだ。」
「そうですね。魔力と体力の回復薬がないと危険ですしね。」
「そうだ、準備は怠ってはいけない。行くぞ。」
道具屋に行った。
俺のスキル【王族】の効果で安く回復薬をガテツの金で買えた。
ガテツがいつもより回復薬が安くて驚いていた。
俺は理由は言わずににやにやしていた。
買い物は終わったので、虫型魔物の退治に向かう。
目的地はヴェリアスの北にある村だ。
俺は巨大ゴーレムを1体つくり、肩にのった。
それを見てガテツが、
「ゴブリン達にはゴーレムを貸さないのか?」と聞いてきたので、
「虫型魔物退治用に魔力がいるので無理です。」
と言ったら、
「そうか。だったらわしが代わりに全員分のゴーレムをつくってやる。歩くと時間がかかるから。」と言って四体の巨大ゴーレムを瞬時につくった。
「ガテツさんは魔法もできるんですね。」
「ソロ冒険者で活動するなら両方できないと詰むからな。」
「へーそうなんですか。」
「トニー、わしにも興味なさすぎだろ。」
「そんなことないですよ。ほらゴーレムあるから早く行きましょうよ。」
巨大ゴーレムで移動したら、すぐに目的地に到着した。
到着したら、依頼人の村長に虫型魔物の出没場所と時間を聞いた。
夜に作物を栽培している場所に大量発生するらしい。
まだ朝なので夜まで修行をすることになった。
魔法は夜までに魔力がなくなると困るという理由でなしになり、武術のみだ。
まずは木刀で素振りを1万回することになった。
普通の木刀は大きいので小さい木刀をガテツは用意してくれた。
修行が始まった。
地味ですぐに飽きて、疲れた。
辞めようとしたら、鬼の形相で
しばらくして、どうにかお昼過ぎで1万回素振りを終わらせることができた。
終わって安心したら手が痛みだした。
見ると豆ができていた。
ガテツに手を見せたら、回復魔法で治療してくれた。
そのとき思った。
回復魔法を教えてもらえば、回復薬買わない済んで得だと。
ガテツに聞いた。
「ガテツさん、回復魔法が使えるようになりたいから教えてください。」
「急にどうしたトニー。どうして回復魔法を。」
「回復魔法が使えれば回復薬を節約できて便利だと思ったんです。」
「それでか····教えてもいいけど、そんなに便利ではないぞ。」
「どうしてですか?」
「手の豆とかたいしたことのない怪我しか治せない回復魔法の初級しか覚えてないからだ。」
「それなら別にいいです···」
「諦めるの早!まぁいいや。素振りが終わったから次の修行に入るぞ。」
「次は何ですか?」
「木刀でわしに攻撃を1回当てること。」
「いや無理ですよ。当たるわけがない。」
「まぁ最後まで聞け。ハンデはある。」
「何ですか?」
「1歩も動かないし、目隠しをする。」
「そんなにハンデもらえるんですか。」
「それぐらいでないとずっと無理だから。」
「わりました、やりましょう。」
「わかった。」
ガテツが目隠しをしたら、始まった。
目隠しで見えないガテツに攻撃をした。
全てギリギリで避けられた。
色々な方法を試しても全部避けられた。
A級冒険者の実力を垣間見た。
いつの間にか夜になっていた。
虫型魔物が出没する場所に向かった。
まだいなかった。
しばらく待っていたら、
〈バタバタバタ············································…〉
羽の擦れる音がしたと思ったら、黄緑の塊が向かって来た。
虫型魔物だ。
例えるなら巨大なイナゴのような見た目だった。
····どう退治しようか。
火、雷、風、水、闇属性の魔法は作物を駄目にしそうだし、土、光属性の魔法が良さそう。
何か思いつくだろうか。
考えた。
少しして閃いた。
光だ。
現世にいた頃、夜に飲み物を自販機で買うときにその明かりに虫が集まっていた。
それを利用したら、一網打尽にできるのでは。
しかし光か…光属性の魔法を使ったことがないから困ったな。魔法基礎の本でも光属性の魔法は読まなかったしな。
困った表情をしていたらガテツが、
「トニー、1人で抱え込むな。わしがついているから。」と励ましてくれた。
「そうですね。2人いればどうにかなりますよね。あの作戦を思いついたのですが、いいですか?」
「おぅ頼れ。」
「光で虫型魔物を集めてから土属性の魔法でつぶして一網打尽にする作戦なんですけど、ガテツさんは光を魔法で出せますか?」
「光属性の魔法でできるぞ。」
「それだったら、やってもらっていいですか。俺が土属性の魔法でつぶすので」
「わかった。」
作戦が始まった。
ガテツが光属性の魔法で光を出した。
作戦通りに虫型魔物が寄って来た。
距離が近づく前に土属性の魔法で巨大な手をつくり始めた。
巨大な手に行くように光で誘導したら上手く手の方に虫型魔物が行った。
手の中に全て入った後、つぶした。
全てぺしゃんこにつぶれた。
依頼達成だ。
村に戻り、村長に報告したら感謝された。
お礼に村特産のコムの粉をもらった。
俺達は冒険者ギルドに報告するために村から離れた。
ギルドに到着した。
受付に報告して、報酬に大銀貨40枚をもらった。
分け前を半分にした。
その後、夕食にした。
昨日と同じ飲み屋で同じものを食べた。
初めての依頼達成記念でガテツが払ってくれた。
夕食が終わったら、宿屋に向かった。
全てガテツに払わせるのは良くないので宿代は自分の金で払った。
昨日と同じ1部屋の雑魚寝だけど昨日よりも気分が良かった。
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