第3話 誕生

 光に包まれて現世とあの世の狭間から消え、鏡だらけのトンネルで異世界に飛ばされる途中だった。

 

 最初は現世の佐藤和也(20)だったが、身体はだ んだん小さくなっていき、骨格は大人から赤ん坊の生まれる前の姿へ、髪などの毛は黒から金、目の色は黒から碧に変わり、性別はそのまま男、俺は異世界に到着した時には別の人間だった。 

 

 その後異世界人として生まれ変わるために、母になる女の腹の中に入った。


 暗い闇の中で赤ん坊として生まれるまで待った。

 

 生まれるまでの時間は、ほぼ母になる女の腹から栄養をもらうだけの生活だった。

 

 生まれるまで約1年かかるので、とても暇だった。

 だから異世界人として生まれ変わったら、次はどんな人間になれるのか考えたりした。

 どうせなら現世のように女にモテる人間ではいたいと俺は思った。

 モテないのは考えられないからだ。

 それも折角ファンタジー世界に転生するならば、現世にはいなかった亜人のエルフとか、ケモ耳の獣人とかはべらし、ハーレムを作りたい。

 なんて馬鹿げたことを、ずっと考えていた。

 

 そうやって暇な時間を過ごしているうちに、身体も大きくなり、手や足の形ができてきた。

 俺はそれからたまに、元気なアピールを外に示すために母の腹の内側から足で蹴った。外の母は我が子の成長を喜んでいる気がした。         

 

 

 何ヶ月か経って俺は生まれた。

 

 目を開けると、真っ先に見えたのは真上のクリスタルでできたシャンデリアだった。

 次に見えたのは出産するときの服を着た女、高そうな服を着て王冠をかぶっている男、執事の男複数、医者の男が俺を見ていた。

 

 高そうな服を着て王冠をかぶった男が、

「よくやった、ルイーズ!元気な男の子だぞ!我が子、第二王子イザークだぞ!」

 と嬉しそうだった。

 

 ルイーズという女は生まれた俺を見てひきつった顔で、

「レオン陛下、私の目の前にいる怪物はなんですか?」


「怪物?そんなものここにいないが?」


「ここに醜悪な怪物がいるではないですか」

とルイーズは俺に向かって指差した。

 

 レオン陛下は悲しそうな顔で

「ルイーズ、お前には失望した……我が子である

第二王子イザークにそんな酷い暴言を吐くなど、我が妃でも許せないぞ!!」


 生まれたばかりの俺はそんな急展開についていけなかった。

 同じ部屋にいた執事と医者も俺と同じでついていけてなかった。

 何か呪いが自分自身にかかっているのかもしれないと思い、神に転生前にきいたステータスを 

見るやつを初めてやろうと思った。俺は

『ステータスオープン』と念じた。


『ステータス』

[種族]人族 イザーク·アンスロポス(0)      

[レベル]1[ジョブ]王子 [魔力] 100 [武力] 2 

[スキル]

【武人1】武術の上級スキル。初見でだいたいの武       器が使いこなせる。

【賢者1]『火、水、土、風、雷、光、闇』全属性の魔法が使える。         

【醜男色1】女は、誰でもこのスキルを持つものが、怪物にみえて嫌悪する。男は美男は普通で、醜い男には好かれる。これは、種族関係なく発動。                                                                                   

【王族1】街で買い物をするとき、安くアイテムや武器が買える。 

 

 ステータスを見て絶望した。

 呪いのせいではなく、神にもらったスキル【醜男色】のせいで母であるルイーズに怪物にみられたからだ。

 

 折角異世界転生したから、亜人をはべらしてハーレムを作ろうと思ったのに、これでは無理ではないかと思った。

 

 そういえば異世界に転生する前、神に3枚のスキルのカードを見せたとき、ニヤッと笑ったのは【醜男色】のせいか。

 その後神がボソボソ言っていたのは、『女癖の悪さも治ればいいんじゃけど』と言ったのではと思った。

 嫌味じゃないか。

 神に口答えしまくったから仕返しに、俺にとって一番いらないスキルを神は押し付けたとしたら、本当ふざけるなよと思った。


 その後、レオン王とルイーズ王妃は不仲になった。

 

 俺はルイーズ王妃を筆頭に女に避けられるので、世話をするのは、男のみだった。

 

 人生は薔薇色になるかと、転生前は思っていたが、現実は灰色だった。

 

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