第2話 序章➁

「ハッ…」

 

 俺は突然目を覚ました。

 

 周囲を見たらさっきまでいた公園ではなく、真っ白な空間にいた。


 「俺は死んだのか…」

 

 20歳の若さで死ぬなんて思っていなかったので、  

絶望した。


「若者がクヨクヨするもんじゃないぞ。」


 喋り口調は年寄りで声色は小さい子供のような声が、後ろから聞こえた。

 

 振り向くと白い服を着た少年がいた。

 

「お、お前は誰だ。」

 

「我は日本支部の神。名前はあるが個人情報だから秘密じゃ。だから神と呼べ。」


「ここはどこなんですか。」


「ここは現世とあの世の狭間じゃ。」


「俺は死んだんですか。」


「死んでないぞ。我が現世をのぞいていたとき丁度良く死にかけのお前がいたから、現世に時間停止の魔法をかけてお前の精神だけこの空間に運んだからじゃ。」

 

「じゃあ俺は、現世に戻れるんですか。」


「死んではいないがまだ戻れないんじゃ。このままお前の精神を現世に戻しても、我が時間停止の魔法を解いたらお前は即死じゃ。」


「神、ふざけるな〜!期待させといて結局俺は死ぬんですか。それなら何故この世界に俺の精神を運んだんですか!!」


「ちょっと待て、まだ話は終わっていないんじゃ。別に『まだ戻れない』とは言ったが、戻せないとは言っていないんじゃ。我は神じゃからお前の身体を修復してから、時間停止停止の魔法を解き、お前の精神を現世に戻すのは容易たやすいんじゃ。だが条件があるんじゃ。」


「条件?」


「それは、亜人などの人外や魔法が当たり前な異世界に転生して魔王を倒すことじゃ。」


「何故··?」

 

「何故それが条件かは、理由があるんじゃ。それは…我は異世界支部の神と友達なんじゃ。よく神界で世間話をするくらい。」


「それで?」


「最近、神界で異世界支部の神が担当している異世界が魔王の脅威にさらされているという話を、神界で聞いたんじゃ。だから我の担当している日本支部から1人、人間をその世界に派遣してほしいと異世界支部の神がお願いされたんじゃ。日本人は異世界に行くと強くなるから。それで、我は了承した。」


「でっ?」

 

「我は異世界に転生させる人間を探していたら、適任の人物を見つけたんじゃ。それは、お前じゃ。」


「なんで俺なんですか?」


「我が現世をのぞいていたらお前は、女に刺されて死にかけていたし、女癖の悪さ以外は良く頭脳明晰ずのうめいせきで賢いし、善人に異世界に行ってもらうのは心痛むが、お前みたいな女癖の悪いクズが異世界に行くのは心が痛まないからじゃ。だからお前には、異世界で転生して魔王を倒してもらうぞ。転移だと身体の負担が大きく、すぐ死ぬ可能性から転生のみじゃ。終わったら、現世に戻れるからいいだろ。」

 

「いいわけないですよ。勝手に決めないでください!!」


「我に口答えしてもいいのか!我がお前の身体を修復しないで精神を現世に戻して時間停止を解いたら即死じゃし、このままだと死んだ後、お前は女癖の悪いクズじゃから確実に地獄行きじゃ…折角、現世に戻ることができるチャンスをお前はドブに捨てるのか!!」

 

 流石に地獄行きは嫌だった。


 それなら魔王を倒して現世に戻れるのなら、選択肢はそれ一択しかないと思った。

 だが、神が勝手に死にかけの俺を選び、異世界転生させるのが理不尽だった。

 だから俺は、

「分かりました。異世界転生して、魔王を倒します。でも条件があります。それは、俺を異世界転生させるなら、役に立つスキルを下さい。このまま転生しても犬死にするだけなので」


「わかった。」と言って、魔法で宙に10枚のカードを何もないところから出現さした。

 

「この10枚のカードには、スキルが書いてあるんじゃ。その中から3枚選んで引くんじゃ!でもハズレスキルは、10枚中7枚だから気をつけるんじゃ。

 本当は、お前が我に口答えしなければ、当たりスキルのみで10枚じゃったのにね〜」


 俺は3枚のカードを引いた。

 見たら、【武人】【賢者】【醜男色】…?と書いてあった。

 神に3枚のカードを見せたら、神は少しにやっとして説明した。


「【武人】は武術の上級スキルでだいたいの武器は、初見で使いこなせる。 

【賢者】は『火、水、土、風、雷、光、闇』全属性の魔法が使える。

【醜男色】はププゥ…は秘密じゃ!この3つのスキルを登録したぞ。スキルは使えば使うほど値が上がるんじゃ。選んだスキルはキャンセルできないんじゃ。」

と言った後、聞こえにくい声で

「これで●●●●●も治れば良いんじゃけど………」とぼそっと何かうっすら聞こえた。


続けて神は、

「大サービスでお前の記憶は保持したまま異世界転生させてやる。良かったな。自慢の頭脳はそのまま使えて。ついでに説明すると言語はお前は転生者だから、異世界の言葉を理解したり、文字が書けるように自動的になる。何か質問はあるか?」


「亜人などの人外や魔法が当たり前なのはわかったのですが、俺はどの国のどの家の子になるんですか?まず人間なんですか?亜人ですか?」


「お前は、人族の国アンスロポス国で人間に転生するんじゃ。だが、どの家の子になるかは秘密じゃ。全部わかると面白くないんじゃ。他に質問はあるか?」


「魔法やスキルの概念があるならば、レベルやジョブとかあるんですか?」


「もちろんあるぞ。レベルは経験値で上がる。お前はレベル1からじゃ。転生者だから早くレベルが上がる。だから心配するんじゃないぞ。ジョブはなる職業によって使えるスキルが変わる。他に色々あるが、異世界に転生してから自分で調べるんじゃ。」


「ステータスを見たいときは?」


「レベルやスキルなどのステータスを見たいときは心の中で、『ステータスオープン』と念じるんじゃ。すると、空間に出て、自分だけに見える。

これでもう質問は受け付けないんじゃ。キリがないからじゃ。」

 

 聞きたいことは、聞けたのでまぁいいかと思った。


「もう異世界転生の準備はできたようじゃな。最後に言い忘れたんじゃが、魔王を倒したら異世界に転生したお前はいなくなる。そして異世界で出逢った人達に忘れ去られるんじゃ。それは肝に銘じとけ。後で辛くなる。」


「はい。わかりましたので、もう異世界転生させてください。」


「そうか」


 神様は異世界に転生させる魔法を使うために、呪文を唱え始めた。

「………………」


 足元に魔法陣が浮かび上がり、俺は光に包まれ、この空間から消えた。


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