18杯目 努力
蒼き雷鳴とのダンジョン探索を繰り返し、コミュニケーションを高めてチームワークを築いていく。
きちんとしたアジェンダを構築し、それぞれのマターを理解し高いレベルのチームとしてのコンセンサスを手に入れていく。
プライオリティの高い問題が起きたときにはペンディングせずにすぐにブレストを行う。
その際には俺がファシリテーターとして一歩引いた位置からの意見を出しながらアンコンシャス・バイアスなどを正していく、その際にはエビデンスをしっかりと添えるように気をつけている。
クリティカルなクエスチョンも全体のプロフィットを優先してベネフィットを高めるアライアンスを選択してシナジーを生み出して行く。
皆がジョインしてフルコミットすることでレベルの高いチャレンジが可能になっていく。
つまり、頑張って30階層に到達した。
「決戦の日は明後日、きちんと仕上げられた。俺達なら出来る」
「明日はしっかり休んでくれ、私達の挑戦が、今、形となって実現するぞっ!」
「地獄のような日々が報われる……」
「ゲンツ、鬼、スパルタ、糞教官」
「もうそんなこと言ったら駄目ですよ、お陰で明らかに私達は成長しました」
「そうよぉー、でも、ここまで厳しいとは思ってなかったからぁ、しんどかった、まじで」
「ほんと、なんでゲンツさんはそんな元気なんスか……」
「自分でも驚いている。だが、お陰でずいぶんと自分の力を知ることが出来た。
本当に感謝してるぞ」
「とりあえず、今日はしっかりと英気を養って、明日はしっかり休む。
せっかくだ、豪勢に行こうじゃないか!」
「流石リーダー太っ腹!」
「いや、今日は教え子たちの晴れ舞台の前祝い、俺がいい店を紹介しよう」
「それは楽しみですゲンツさん。では、戻ろうか」
俺達は転送石でダンジョンを脱出した。
やはり、収納袋を複数持ってのダンジョン探索は非常に楽だ。
収納袋が全く無い頃は荷物管理が非常に大事になる。
何を持っていき、何を持っていかないのか、ここでその考え方を叩き込まれる。
小型と言えど収納袋を手に入れると世界が変わる。
それが大型、しかも時間停止なんて物がついていると更に世界が変わっていく。
持って帰る素材もガラッと変化する。
生物で価値が高いものを持って帰れると、儲けの桁が変わることが有る。
ダンジョン内で比較的安全に過ごせる階段で休むことが多いから、大規模な物を持っていっても仕方ないが、それでも大型調理魔道具などを持ち込めばかなり快適に過ごせるのは事実だ。
高度なダンジョンの大規模攻略などでは建材を持ち込んで拠点を作りながら進む場合もある。
物資の供給、兵站管理はどんな場合でも一番大事だ。
収納袋の欠点は、中身を持ち主ごとの管理になる。
荷物係が独りだと、万が一即死などの事故が起こると、突然の物資消失につながってしまう。
各自がそれぞれ用意しつつ、メインとなる物資係、それとサブを置けている今の状態は精神衛生上もいい。
戦闘に参加せず、絶対に生き残るということを目的にする荷駄を専門とする運び屋もいる。
それくらい物資管理はダンジョンに潜る冒険者にとって重要だということだ。
「ちょっと歩くぞ」
「街の外に有る店、それは楽しみだ」
街から歩いて30フンー程でその店にたどり着く。
こんな場所に有るが、一部の冒険者からは穴場として人気だ。
元冒険者がやっている店で、後ろに広がる森で毎日狩りや採取をして、その品を出してくれるというスタイルでやっているので、ドロップ品とは一味違う生命力溢れた料理が魅力の店だ。
そういうわけだから、値段は少し高い。
そして店長がクセが強く、気に入らない奴は叩き出される。というか紹介がなければ見つけることも出来ない、ある理由で……
「お久しぶりですフェイナさん」
「なんだい、ゲンツ、顔出さないから死んだのかと思ったよ」
サルーンも女性にしては大柄だが、この店の店主であるフェイナさんに比べれば小柄と言っていい。
年齢を聞くと叩き出される初老の迫力のある女性店主だ。
「実は一度死にかけまして、これ、お土産です」
俺は街で買っておいた樽を取り出す。
「ほう、どうしたんだい、こんな上等なもの……」
「じつは、 色々ありまして今はシルバーになりまして」
「あんたがシルバー、しかも、ネームド装備かい、はぁー、こりゃ驚いた……」
「今はこちらの蒼き雷鳴に一時的にお世話になってます」
じろりと蒼き雷鳴を見渡すフェイナさん。しかし、にっこりと笑うと俺にかける言葉とはガラッと変わって優しく話しかける。
「大丈夫かいお嬢ちゃんたち、このおっさんになにかされたらすぐ私に言うんだよ、ぼっこぼこのぎったんぎったんにしてあげるからね? ささ、上の席を使いな」
「!?」
ケイトたちは皆驚いた。一見して全員が女性だってことを気が付かれたことがないんだろう。
まぁ、ちょっとこうなると思っていた。
フェイナさんは、女性に優しい、特に見た目がいい女性はくそったれな男の冒険者に苦労をかけられているだろうからってことで、非常に優しい。この店で一番いい席を使わせてもらえた。
「ゲンツ殿は非常に紳士で皆、師のように慕っております。
今晩はよろしくお願いします」
「うんうん、そういう様に脅されてるんだねぇ、男の冒険者はクソ野郎ばっかりだからね、ま、ゲンツは少しはマシな方だがね、ほらゲンツ、皆をエスコートしておやり! 気が利かないねぇ」
「はぁ~、それでは皆様階段を上がり上の階へどうぞ」
俺は仰々しく礼をして階段に皆を促す。
最後に俺がついていこうとすると……
「ほらゲンツ、皆にこれを出しておくれ、今日の給仕は任すからね」
「はいはい」
「返事は一つだよ! 叩き出すよ!」
こうして俺は皆の給仕役もすることになった。
こんな扱いだが、それでも俺はこの店が大好きだ。
理由はすぐに判ることになる……
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