4 いざ、ダンジョンへ!
夜も更ける中、ダンジョンに通ずる穴を見張る騎士達は寝ずの番をしていた。
「誰だ!」
近づいてくる足音に、騎士達は声を上げる。
「お疲れ様です。差し入れを持ってきました」
「昼間の……」
近づいてきたのは、昼間中に入らせてくれと懇願していた羊飼いである。
「どういう風の吹き回しだ」
「だって、俺達のためにお仕事をがんばっておられるんでしょう」
羊飼いはワインを小鍋に入れると、はちみつと果汁を足してたき火にかけた。
「パンとチーズもありますよ」
「……もらおうか」
漂ってくるいい匂いに騎士達は顔を見合わせて、ひとまず厚意を受け取ることにした。
「ちょっと気分転換に一曲披露しますよ」
「おお。聞かせてくれ」
腹を満たして、騎士達の態度は軟化した。羊飼いが角笛を取り出した。
羊飼いの奏でる曲は素朴ながら落ち着いた音色で、張りつめていた騎士達の精神を優しく解きほぐしていく。
「いい音色だな」
「ああ。心が落ち着く……」
腹が満たされたところに、ゆったりとした気持ちのいい音色を聞いて、騎士達は心と体を寛がせて休めていく。
「あれ?」
羊飼いが一曲終えた頃、騎士達は静かに寝息を立てていた。
「……俺、またやっちゃいましたかね」
羊飼いはニヤッと笑うと、そそくさと片付ける。
「それじゃあ、お邪魔しまーす!」
羊飼いは音を立てないようにしつつも、意気揚々とダンジョン内部へと入っていった。
「ダンジョンは一般的には攻略を阻むために、罠や魔物が配置されています。その多くは廃城や遺跡などに造られた地下迷宮です」
ドロシー達は、宰相の私邸の一室で話し合いをしていた。
ダンジョンに詳しい騎士からその知識を教えてもらう。
「人工的な構造をしているかと思えば、非現実的な異世界の自然が広がっていたりと、地上での常識が通用しません。階層ごとに気象が大きく違うことなどもあり得ます。灼熱の砂漠地帯から一階層降りると極寒の雪と氷の世界だったなんて話も聞きます」
「……ただでさえ、持てる道具に限りがあるのに、それは困るわ」
ドロシーは話を聞いただけで、その攻略の困難さが想像できて難しい顔をする。
「そうです。だから、一気呵成にすべての階層を攻略するなどまず不可能です」
ドロシーはぐっと言葉に詰まる。一気に攻略して、あの悪魔アロケルの鼻を明かしたかったのだ。
「まず、一階層を確実に攻略してから少しだけ先に進んで次の階層を確認してから、一旦戻る。そして、装備などを確認し、体制を整えて改めて攻略に向かう。こういう攻め方をするのが現実的かと思います」
「そう、ね……」
一筋縄ではいかなそうだ、とドロシーは先行きに不安を抱えた。
「でも、不思議のダンジョンだったらどうするんだ?」
「不思議のダンジョン?」
別の騎士から何かの固有名詞かのように言われて、ドロシーは首をかしげる。
「一度入るごとに、ダンジョンの構造が変わるタイプのダンジョンです。せっかく攻略しても、マップが作れないんですよね」
「えっ……それは、本当に困るわ!」
より一層困難を極めることを言われて、ドロシーはまた憂いを増やした。
「でも、このタイプのダンジョンは入るごとにまたアイテムを手に入れられることが多いんです。そして、出てくる敵や罠の難易度は大体同じくらいのことが多いです」
「なるほど……腕を上げたければ何度でも挑んでいけばいいのね。そうやって対応を学べるのね」
攻略の糸口がほんの少しだけ見えた気がした。
「では、次に持ち込む武器などを検討しましょうか」
攻略に向けて、話し合いは続く。
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