第8話
りっぷ:ロイナルさんの事ばっか考えてるから駄目なのかもしれないし。
しぃ:そうだね。それはあるかも!
シン:りっぷにしては良い事言う(笑)
りっぷ:失礼な!
あすやん:自分磨きは自分の為になるぞ~! モチベーションを上げる為にロイナルを使え(笑)
シン:使い方が草。
グダグダと、進む事もしなければ諦める事も出来ない、代わり映えしない私の話。それを真剣に聞いてくれるだけでなく、こんなに沢山アドバイスまでくれる皆は優しすぎて、嬉しさに涙が出そうになる。
しぃ:ありがとう。
りっぷ:可愛いネイルに、雰囲気の違うメイクに挑戦してみよー! あ、スマホのグループメッセージも使わない?
あすやん:私も! 飯を写真撮って送ればアドバイスする!
シン:俺、全く役に立たないやつだから、女同士で別にどうぞ(笑)
既に四人で作っているグループメッセージはあるのだが、シンに言われては別に作るしかない。
まぁ、ほとんど待ち合わせの連絡だけで、話すのはゲームのチャットばかりだ。仕事中やプライベートな時間に鳴りまくっていても迷惑だからという理由からだ。
しぃ:皆、面倒見良すぎ! 優しすぎ!
シン:俺は役立たないって言った側からそれ言うか!?(笑)
しぃ:話を聞いてくれるだけでも十分すぎるよ!
あすやん:じゃあ、グループメッセージ立ち上げるよ~! シン坊の覗き見も大歓迎!
シン:しねぇわ!
りっぷ:草w
立ち上げられたグループの検索方法とパスワードをチャットで貰い、私はそこに入った。
――ありがとう。
この言葉は、何度言っても足りない程、感謝してもしきれない。
私はこのゲームで、どれだけかけがえのない人達に出会っているのだろうか。
◇
『こんな感じでどうかなぁ』
『お、栄養バランスばっちり!』
『しぃさんの料理、美味しそう~!』
作ったご飯の写真をグループメッセージに送れば、すぐさま返事がくる。
『頑張って痩せるぞ!』
気合を込めて、メッセージを送る。
『しぃ。気合は良いが、食事は抜くなよ?』
『あ、少し手荒れしてる? 良い匂いのハンドクリームあるよ』
『私は無臭のハンドクリームだからなぁ……りっぷの女子力見習おう』
女子ならではのやり取りが楽しい。
皆の得意分野が違う分、色んな方面からのアドバイスが貰える事は、とても面白い。
そう思った矢先、私には何があるのだろうと考えた。
『私の得意分野って何だろう……』
『しぃは器用貧乏的なところがあるからな~』
『しぃさんには、しぃさんの良いところがあるの! 落ち込む必要なし!』
そう慰められても、自分の良いところなんて全く分からない。
ここで愚痴のようなネガティブさを吐き出しても仕方ないし、今は自分磨きに集中するかと画面を見ていれば、別のメッセージ通知が入った。
『ロイさんからメッセージきた!』
『いってら~。いちゃついてこーい』
『しぃさん、今絶対顔にやけてるよね。後で話聞かせてね!』
男を優先するなんて嫌がられてもおかしくないのに、二人は常に応援してくれる。
その有難さを胸に、後で良い報告できると良いな! なんて思いながら、ロイさんからのメッセージを開いた。
『最近ゲームしてる? あんま見ない(笑)』
『減ってるかも! 自分磨きしてる!(笑)』
『おー良い事だね! 応援してる!』
『バランス良い食事を作るだけで時間つかっちゃう~』
ロイさんの為に。なんて事は言わないけれど、それ以外ならば他愛のない会話として送る。
ただの雑談で話題が広がれば、メッセージのやり取りが増えて楽しい時間が増えるからだ。
『自分磨き成功したら会おうか? ご飯奢るよ(笑)』
『まだ言ってる(笑)』
正直こんな事を常に言われていれば、期待する気持ちを持ってしまい、諦めようとしている心が揺れ動くものだ。
ならば連絡を絶てば良いのだろうけれど、それも出来ない。
この時間が大切で、楽しみで、かけがえのない小さな幸せでもあるのだ。
『今、動画あげた(笑)』
『見に行く!』
今、という言葉に胸を高鳴らせる。
前とは違って、今回は時間が経ってからじゃないのだと、嬉しさでマウスを持つ手が震えてしまう。
サイトの立ち上がりが少し遅いだけでイライラしながら、上げられた動画に辿り着けば、既に再生数が百を超えており、沢山のコメントが書かれていた。
「早……」
気落ちした気持ちを吐き出すかのように、ポツリと呟いて動画を再生すると共に、少しだけコメントを見てみる。
<かっこいい><さすが><イケボ>
お決まりのように並ぶ言葉の中、ある1つのコメントに、思わず目を見開いた。
<ひなたん:明日は雨らしいよ! 傘持って仕事行かなきゃね>
「……え?」
背筋が震えた。
明日は雨……。ロイさんの住んでいる所が、と言う事?
私が住んでいる所でも、明日は雨だ。
思わず全国版の天気予報を見てみると、一部地域でだけ雨の予報になっている。と言う事は、私とロイさんの住む地域も近いのかと嬉しい発見を覚えたと同時に、恐怖心と嫌悪感が心を被う。
『……ひなたんのコメント、危なくない? こっちも明日雨だけどさ……地域バレじゃない?』
『うわ。何これ。さすがに削除する』
ネット意識の低さに、不快感が襲う。
ロイさんに何かあったら、どうするのだろうか。
『見える人が調べたら、地域バレるよね~。てか、教えたの? 危ないよ?』
既に私は調べてしまったけれど、私と同じような人が他にも沢山いるかもしれない。むしろ、居るだろう。
『あえて言った覚えはないけど……あ、サブ垢のSNSに載せてたかも!』
『サブ垢持ってるんだ?』
知らなかったと言う事実が心を抉る。まぁ、SNSのチェックなんてしていないけれど、教えてもらえっていないというだけで心は傷ついてしまう。
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