騎士の来訪3
ベルナルドを含む四人は、応接室でテーブルを囲む事となった。
「俺の睡眠時間……」
マティアスは、右手で頭を押さえている。
「成程。事情はわかりました」
一通り話を聞いたベルナルドが、腕組みをして頷いた。
どうやら彼は、帰ろうとした時に、まだ明るいのに応接室のカーテンが閉められる瞬間を見て不審に思い、戻ってきたらしい。
「しかし、聖女様が殺人を犯し、ガブリエラ嬢の命を狙っているとは、にわかには信じ難い話ですね。聖女様を暗殺しようとしたガブリエラ嬢が、罪を逃れる為に嘘をついていると考えた方がしっくりくる……なにせ、君の社交界での評判はお世辞にも良いとは言えないからね」
ベルナルドの言葉を聞いて、ガブリエラはシュンとして目を伏せた。
「とにかく、ガブリエラ嬢に詳しく話を聞きたい。ご同行願えますか?」
ガブリエラは、助けを求めるようにマティアスを見た。
「そんな顔をするな。……ランディーニ殿、こいつを連行するのは待った方が良いのではないでしょうか。ただでさえ聖女様は信頼されているのに、こいつの社交界の評判が良くないという事は、こいつが無実でも、裁判で有罪の判決が出る可能性が大きい」
「敬語を使わなくても結構ですよ。……バルト伯爵、ガブリエラ嬢を連行しないわけにはいきません。それと、あなたにも来て頂きますよ。罪人を匿った者もまた罪人です」
ガブリエラは慌てた。強引にマティアスと契約を結んだものの、マティアスの人生を壊す気などさらさら無かった。
「待って下さい、ベルナルド様。私がマティアス様の優しさに付け込んで、ここに居座っているんです。マティアス様は、何も悪くありません。連行するなら、私だけにして下さい」
「本当にお前はお人好しだな。連行されたら、裁判で死罪になるかもしれないのに」
「マティアス様こそ、お人好しです。見ず知らずの女を助けた上に、あんな強引な契約をしたのに私の事を庇ってくれるんですから」
二人の会話を黙って聞いていたベルナルドは、突然笑い出した。
「ハハハッ」
ガブリエルとマティアスは、ベルナルドに目を向けた。
「いや、試すような真似をして悪かった。……ガブリエラ、君を連行したりしないよ。もちろん、バルト伯爵も」
「……本当ですか……?」
「ああ。君は異性との付き合いは派手だが、聖女様を殺害しようとする程愚かではないと思ってるよ」
ガブリエラは、胸をなで下ろした。
「君がここにいる事も、秘密にしておこう。……友人を試すような事をしたお詫びに、何か出来る事があったら言ってくれ」
「そうですか?それでは……」
ガブリエラは、遠慮がちに言った。
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