第4話 私がホス狂?!
3回目の訪問を果たしたのも、1週間ほど過ぎてからだった
それほどにRに"沼ってる"というところまで
陥っているのか
お店に入ると、Rが手をつないで席へと連れて行ってくれる
やはり可愛い、かっこいい、愛しい!
安いシャンパンを飲んでみた
日頃お酒は飲まないが、美味しい
ここまでは一万円と少しで済む
これでやめよう
……なんて気楽にしていられたのはつかの間
ついついヘルプのホスト数人にも
「飲んでください」と言ってしまう
みるみる空になる
「売上が必要なんだよね」
Rが物憂げにつぶやく
「あおってんの?」
「ちょっとね」
かわいさ余って憎さ百倍
その手に乗るか!という理性も
アルコールのせいなのか制御できない
実はこの日の午前中、休職中だったパートの退職が決まった
ムシャクシャしていた
何歳になってもイライラしたり
やるせなかったりするのは人の常だろう
シャンパンコールなるものも経験してみたかった
Rの売り上げにも少しでも貢献したい
元来どんぶり勘定な私だ
大体でお金を使ってきた
もちろん資産家でも社長夫人でもない
庶民レベルでやってきたのだ
追加注文した
店内の照明はさらに暗くなりレーザーが彩る
アップテンポな曲が流れマイクのコールが響く
私が主役?!
これがシャンパンコールかぁ
ホストたちに囲まれ、なんとも居心地いいやら
悪いやら
どう振る舞っていいのか分からず、スマホで撮影する
そしてRからマイクで感謝の言葉を聞く
「姫はいつも……」
ん?いつも?いやいや、これ初めてのことですよー!
周りの客に盛って聞かせたいのか?
はたまた、おばさんからのシャンパンが恥ずかしいのか……
私が若かったら、優越感に浸って楽しい時間を満喫できただろう
また自分を卑下し、面白くなくなる
もっとお酒が飲みたい
妙なテンションになっていく
もう一本シャンパンをお願いする
お酒は美味しい
Rは肩を組んで言う
「離婚したら結婚しよう」
嘘でも嬉しかった
枕営業があることも知っている
枯れた身体をさらすことはできない
性病もこわい
だけど若かったらRともっと親しくなりたかったという思いは浮かぶ
「おばさんでごめんね」
何回言ったことだろう
はたから見たら気持ち悪いおばさんだっただろう
だけど私は恋をした
正しくは恋をしたような気分を味わった
会計は十万円以内にはおさめた
たかが十万円、されど十万円
庶民の私にとって十万円は大金なのだ
最後の給料はまさしく泡と消えた
これから何十万何百万とふくれあがっていくのだろうか
そんな心配はなかった
なぜか達成感に満ちていた
これでもう、ホストクラブとはさよならでいい
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