第3話 思うツボ

翌日、ためらいもなくホストクラブへ向かった

ドアが開いている

オープン早々に入る

臆病な私はしつこいほど

「一万円しか使えません」と宣言する

痛い、我ながらいい大人のすることとは思えない


Rとは違うホストを指名した

他のホストに興味があったのも事実だが、1人のわが子ほどの年齢のRにのぼせるなんてことは回避したかったのだ

明らかに気まずそうな指名をした男性

対面のまま会話も弾まない

空気を読んで

Rを指名した

ホスト界隈のルールなんて知らない

知らないなりに頑張っている

頑張りに来る所か?

冷める自分もいた


「ショックだったわ!」

イラつきながらRが隣に座る

こんなおばさんからの指名も必要なのか?

そして、自分の事を卑下する自分が惨めにもなる

今夜もノンアルで1時間ほどいた


Rのことが好きだ

30年前に戻れたら、あなたを好きだと言えただろう

二十歳の私なら……


懐かしい恋心

甘い言葉

もっとRを知りたい、応援したい

これなのだ

こういう気持ちにさせることが仕事の彼らにとっては思うツボ


若かったら勢いでのめりこんだだろう

そう考えると50歳で良かったのかもしれない

短い時間だけ疑似恋愛をする

楽しい

どこか虚しい


Rが可愛くて仕方がない

店を後にすると後ろ髪をひかれる

次の日も行こうと思った

バカな私でもいいじゃないか

とことんまで会いに行こう

たとえバックヤードで「気持ち悪い」と言われていたとしても、どうでもいい


3日連続で行くのはやめた

理性を勝たせるように努めた

いい加減ビジネスホテル生活からも撤退しなくてはならない


Rへの想いを残して帰るべき場所へ戻った



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