第2話 幻想と現実の間
暗い照明
真っ赤なソファ
アルコールはやめておいた
ドアを開けた瞬間の記憶はほぼ無い
案内されるままに座っていた
落ち着かずタバコを吸う
「いらっしゃいませ」
小顔のお洒落なホストが初回の説明をする
初回接客
ホストたちにはギラギラとした熱量を感じた
「50歳だよ?」
「見えませんね!」
チヤホヤされる
気分は高揚する
年齢を重ねるごとに無くしていた気持ち
これは彼らの営業である
本心ではないと分かっていながらも
幻想の世界へ浸っていく感覚
次から次へと現れる若く整った顔立ちのホスト
よくもまあ、こんな素敵な子たちがいるものだ
アイドルにさえ負けてないのではないか
しかし私はシラフである
正常な感覚の中、気を使う会話
対面という絶妙な距離
気になる他の客……若い女性たち
浮いている……
早くこの場から去ろう
そう決心していたが
「Rです!」
対面ではなく、いきなり隣へ座る
ハイトーンな髪色、軽いノリ
手を握る馴れ馴れしさ
いとも簡単に受け入れる自分に驚く
「年上、興味あります!」
またもや営業トークかとも思ったが
惹かれる
「LINE交換しよ!!!」
……私はホストクラブで大金を使うつもりはない
何よりこんなおばさんと本当に交換したいわけではないだろう
「私は育たないからね」
交換はしなかった
驚くほど安い初回料金を支払う
送り指名はもちろんR
ドアから出る
Rに抱きしめられ「待ってるから」と耳元で
囁かれる
足早にビジネスホテルに戻る
あんなに若い、自分好みの男性に
抱きしめられる
嬉しい?恥ずかしい?
部屋に入り、鏡に映る50のおばさん
現実へと引き戻される
何をしているんだろう
ただホストクラブに行ってみただけだ
なぜ背徳感が消えないのか
そんな心とはうらはらに
Rにもう一度会いたい
幻想でもいい、女性として見てほしい
鏡の中の現実に向き合いながら
もう一度行く決心を固めた
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