第30話 今日も配信やっていくぞー

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ドラゴンノベルスで1発狙ってます!


では本編どうぞ!

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 翌朝。

 もちろん地上時間の朝なので、カメラのこっちのキャンプ地は真っ暗だ。

 取り敢えず今日の夜は昨日の宣言通りに深淵第15層にチャレンジするので、それまではダラダラと13層や9層辺りでレベリングをしておくことにした。

 

 ついでに以前やったように、俺は特に喋らずコメント欄も見ない垂れ流しの配信をしておこうと考えて、ドローンを起動する。

 配信を開始して話そうとしていると、何やらコメント欄が騒がしいことになっていた。


「なに、どしたの。なんかあった?」


:今朝のニュース

:ダンジョンエースが潰れた

:家宅捜索からの逮捕かこれ

:ダンジョン省も警察も仕事するじゃん

:やっと潰れたかダンジョンエース

:ザマァ見ろダンジョンエース!


ほうほう、どうやらなかなかおもしろいことが起きてるらしい。

そう思い、俺も配信とは別の窓でスマホのニュースを検索する。

そして一番上に出てきたのがこれ。


『大手探索者事務所ダンジョンエースと官僚の癒着疑惑!?』

『ダンジョンエース、探索者を脅迫し従わせていたか』

『人の道を外れた悪行。業界最大手ダンジョンエースの実態とは』

『ダンジョン省と機動隊の合同家宅捜索か』


 そんな記事がズラッと表示されている。

 記事のタイトルを見るだけでおおよそ何があったか理解することは出来た。


「ダンジョンエースが潰れたのか……」


:まあ噂酷いものだったしな

:ブラック企業よりブラックとは言われてた

:ダンジョンでも小競り合い起こして邪魔だったんだよな

:敵対したところが業務勧告食らってたわ。そんだけ権力あったのに逮捕されたか。

:あそこで潰された探索者相当おるしな。残念でもないし当然


 多分、俺の想像が間違いでなければ、これは俺という存在が表に姿を現し、更にダンジョン省とある程度協力体制を築くような話し合いを行った結果の副作用のようなものだろう。

 

 調べる限りと俺の推測では、これまでダンジョンエースは、その大きな規模と多数の探索者によって、国にとっては無くてはならない存在だったのだろう。

 現在の各国間のパワーバランスは、ダンジョンの攻略力や攻略率、そして探索者という戦力の差によって決まっていると言って良い。

 だからそれに大きく貢献しているダンジョンエース、そしてその上層部は、多少の悪事やグレーな事をしても許されていたし、国やダンジョン省の権力を行使することも黙認されていた。


 だがそれを代替出来る可能性のある俺という個人が出現してしまった。

 しかも俺がダンジョンから持ち帰るのは、ダンジョンエースの所属者が集める深層程度のものではない。

 それよりも遥か下に存在している深淵産のアイテムや素材は、まさしくここにしかない唯一のもの。

 世界で唯一日本にだけ得る権利が与えられたものだ。


 そんな俺という存在が出現したことで、ダンジョンエースを切る、潰す余裕が国の方に出来たのではないだろうか。


 あるいは、俺がダンジョン省探索者局局長の葦原さんに対して懸念を示して見せたように、鳴海が狙われる可能性を先に潰してくれたのかもしれないが。 

 しかし流石にいくら俺が有力な探索者とはいえ、そこまで俺の意思だけで動いてくれるとは思えない。

 それほどにダンジョンエースという探索者事務所の果たしている役割は大きいものだと、俺は最近の情勢を調べた中で知っていた。 


 それを潰したのだ。

 俺の懸念表明もあり、国内の探索者のパワーバランスもあり、ダンジョンエースのこれまでの悪行もあり、といったところか。

 おそらく単一ではなく複数の要素が絡み合ったことで、今回のニュースのような結果になったのだろう。

 あるいは一石二鳥や一石三鳥を狙ったのかもしれないし、俺の出現でダンジョン探索という業界が大きく揺れた隙に汚物を除去しておいた、と取ることも出来る。


「ま、あんまり良い噂聞かなかったし、特に思うところは無いけど……俺が余計なちょっかいかけられる前で良かったわ」


:実際社長の大木平祐はヌルを取り込もうとしてたらしい(内部告発)

:まじで? いくらなんでも命知らずすぎんか

:実際それされて探索に支障が出た人もおったしな

:ヌルが余計なことに煩わされずに探索出来てるの嬉しいわ

:妹ちゃん狙うとか言ってたぞ(内部告発)

:ダンジョンエースの常套手段。身内を使って脅しをかける


 なるほど、そこまでエグい事をやることでダンジョンエースという事務所は業界最大手の地位についていたということか。

 とはいえ、そこまで相手が手を出してきていたら、俺も加減をする必要など1つもない状況になったということだ。

 首の1つや10個ぐらい落としたところで誰も文句は言わないだろう。


「妹狙われたらダンジョンエースが跡形も残らんかったと思う。割とマジで俺のブチ切れラインだからなそこは。首の1つや2つは獲ってた自信があるわ」


 探索の邪魔はまた行けばいいか、となるので多少邪魔されたぐらいでは強く苛ついたりした無いが、鳴海を害されたらその時点で俺の沸点を軽く越えるだろう。

 友人同士の喧嘩などならともかく、俺を利用するなんてくだらない事をするために鳴海を害するというならそのときは、俺も容赦はしない。


 そう配信を見てるかもしれない他の余計な事を企ているかもしれない奴等に向けて、画面越しだが圧力をかける。


:ガチでやりそうな圧を感じる

:国がそれを止めようとダンジョンエース潰したんかもしれんな

:ヌルはダンジョンに放り込んでおいたほうが本人にとっても他者にとっても安心

:お前はもう余計なこと考えないでひたすら探索しててくれ、ぐらい国がバックアップしてもいいぐらい

:そう言えばヌルって上級探索者の手当とか待遇受けてるの?

マネージャー:とても大事にされてて嬉しいと同時に気恥ずかしいです


 あれ、この時間に鳴海がいる。


「マネさん、今日学校は?」


 その俺の問いかけに、怒涛の如くコメントが返ってきた。

 

:今日は土曜日です

:お仕事休みだから朝から見てる

:探索者は時間間隔狂うとか聞くしな。自由業だし

:今日は朝から普通に配信してくれても良いんやで?

:垂れ流し配信もあれはあれで見どころはあったけどな


 なんと。

 探索者なんて完全に個人で完結することをやっているために、今日の曜日に気づいていなかった。

 そうか、今日は土曜日だからわざわざ昼間はレベリングの配信して夜から第15層を見せに行く、とか考えなくても良いのか。


「まじか。じゃあ今から普通に垂れ流し配信しようと思ってたけど、15層とか行っても良いの?」


:安全なら、とは言わんからお前が死なんなら

:昨日の配信でお前が異常な奴だってのはわかったから、もう何も言わん

:命がけでも良いから死なん所にして

マネージャー:分身じゃないときは無茶しないだろうし、許す


 なんか昨日よりも視聴者達が俺に優しいような気がする。

 昨日はアレだけ罵倒を受けたのに。

 何故だろうか、と思ってコメント欄を見ていると、視聴者数の欄が目に入る。

 同時接続者数が数万はあった俺の配信の視聴者数が、今は数千人にまで落ち込んでいるのが目に入った。


「今日なんかみんな優しいなと思ったら、昨日悲鳴上げてた人の大半が見てないんかな? この視聴者数は」


:よく自分でわかったな

:ヌルは意外と頭が回る。やってること馬鹿だけど

:こんな朝早くにお前の配信に張り付いてるのなんてお前がやることが見たいやつしかいない

:夜とかになったらその人達も戻ってくるんじゃない?

マネージャー:取り敢えず配信タイトルはこっちで勝手に変えるから、昨日のスケルトンみたいに無茶するときは先に言って。視聴者にも見れるものと見れないもののどっちをしているか教えるから


「なるほど? 確かにそれもそうか。そんでマネさんの件は了解。今日は前回みたいに俺の分身が死ぬようなことは無いよ」


 今日からしばらくは取り敢えず全体的にレベリングをする予定だ。

 まずはスケルトンを討伐するのに足りていない身体能力や反射神経の強化をレベル上げを通して図っていく。

 だから分身で死ぬつもりで戦ったりはしない。

 それをするのはある程度レベル上げが完成した後で、亡霊騎士相手に武器の使い方を学ぶときだ。


マネージャー:了解

:そう毎日アレを見せられても困る

:流石にたまにするぐらいにしてくれ

 

「んじゃ、雑談でもしながら向かいますか。昨日は結局夜雑談なんてしなかったし」

 

 俺のその言葉に、コメント欄が沸き立つ。


:待ってました!

:幸神博士の論文読んだけど、ヌル的にはガチだと思う?

:ヌルって総理大臣みたいな偉い人とは知り合いなんか

:凄腕探索者は偉い人と知り合いとか聞くけど、ほんと?

:収入はどんくらい?


「別に良いけど君等ダンジョン関連については聞かなくて良いの?」


 深層のボスモンスターはどんなやつか、とか聞かれるかと思ったが、どうもそういう雰囲気ではないらしい。

 まあそれならそれで俺は別に構わないのだが。

 それともここにいるのはほとんどが非探索者で、ダンジョンの細かいことにはそこまで興味がない、とかなのだろうか。


 そんな事を考えながら問いかけると、こんなコメントが返ってきた。


:いや、聞いても参考ならんと思った

:ヌルにも興味が出てきた

:普通にヌルという個人に興味がある

:やあ、初めて見に来たよ。君凄いね。色々と(英語)

:うおっ、外人さん来てるやん

:ついにヌルが海外進出し始めたか


 俺個人に興味がある、というコメント。

 それはつまり、『ダンジョンの新しい場所に関する情報』より『俺個人というコンテンツ』の注目度が上がってきた事を意味している。

 鳴海と配信について話したときに言っていた、『コンテンツの中身じゃなくて人についてもらうことが出来た状態』に近づいている、ということかもしれない。


「なるほどね。『こんにちは、海外の視聴者さん。刺激的な配信をしてるから、ぜひ見ていってくれよ(英語)』」


 ついでについに海外からも視聴者が俺のチャンネルに来るようになったらしい。

 チャンネルの幅が広がるのは嬉しいことだが、同時に世界的に俺が注目されることにもなるので、余計なちょっかいかけられたりしないかと不安だ。

 鳴海には一応お守りの魔法具を持たせてはいるから大丈夫だと思うけど。


:ヌルめっちゃ普通に英語話すやん

:ファッ!?

:ヌルの口から英語が出てきてビビった

:おお! 君は英語が話せるのか! なおさら良いね(英語)


「これでも難関大行ったぐらいには頭良かったからな。英語は話せるようになりたかったから結構頑張ったし。で、まあじゃあいくつか質問に答えていくか」


マネージャー;ヌルが紹介した幸神博士の論文についてはどう思うか

     偉い人とは知り合いなのか。

     収入どれくらい?

     趣味は? 普段何してるの?

:流石マネージャーまとめるのが早い

:有能


「ありがとうマネージャーさん。で、まず論文か」


 幸神博士の論文。

 それは、スキルが同名でも個人個人でわずかに差があったことに着目し、そこからスキルの効果には個々人の想像力やスキルに対する先入観などが影響を与えて、1人1人違う形のスキルになっているのではないか、という内容を実験結果とともにまとめた論文だ。


「実際俺の《分身》スキルが他の人と違うのもそれのせいかなって思ったから、俺は割と本当のことだと思ってる。まあこれから検証とかされてくんだろうけど」


 実際俺の複数のスキルも、おそらく人とは違う挙動をしているものがいくつもあるだろう。

 例えば《魔法陣魔法》は地面にチョークなんかで書いたりする人がいるらしいが、俺は魔法陣はホログラムのように空中に投影できるものだ、というアニメなどから得た先入観があったので、スキルがそっちの方向に成長したりしている。

 

:確かに

:言われてみればヌルの分身も大分普通と違うよな

:てことは本当なのか

:想像力とか先入観か。じゃあ逆にめっちゃ使いやすくなったりもするのかね。想像次第では


「まあそれについてはこれぐらいで。で2個目は偉い人、か。まあ、うん。知り合いだな。流石にこんだけ突出して進んでると、ダンジョン省のお偉いさんから声かけられて話聞かれたりはしたな。でも長い付き合いがあるかっていうとそこまでではないよ」


 後はアラナムの社長さんとかもいるけど……まあそれについては下手に触れて一から説明するのは面倒くさいので黙っておくことにしよう。


:会食とか行ったりはせんの?

:パーティーとかは?

:あ、でもヌルスポンサーとかおらんのか


「行かんなあ。言ってる人いるけど、俺スポンサーとかいないからそういうお付き合いはほんとにギルドとかダンジョン省の偉い人ぐらいだよ」


 多くの有力な探索者は、所属事務所やクランとは別に個人個人にスポンサーがついていたりする。

 そのため、スポンサーが何かパーティーをやるときには出席したり、時折会食をして話したりする必要もあったりするのだが、俺の場合はそんな義務を発生させるような繋がりはない。


「で、3つ目は収入か。まあ具体的には言わんけど、現段階で一生遊んで暮らせる程度には貯めてる」


:やっぱり探索者は儲かるんか

:ヌルなら深層のモンスターでも余裕だし、荒稼ぎしてそう

:深層勢は年収億とかでもおかしくないっていうしな


「まあ、知っての通り分身で鍛錬するときはアイテム拾って帰れないから、できる限り先に貯めておいたんよ。だからもう貯蓄は十分、後は適当に運用しとけば一生困らん。ダンジョン産の武器だって、俺の場合は自分で探した方が早いしな」


:あんだけ狂気を見せつけてからの理性的な判断で頭おかしなるで

:何故そこまで考えられるのにあんな無茶をするのか

:普通に頭良いというか先のこと考えてるよな

:くー大金羨ましい!


 まあそうでもないと、命がけのダンジョン探索に挑む人なんていなくなるだろうしな。

 大金が稼げるからこそ人々は命がかかるダンジョンへと踏み込み、探索者として活動するようになるのだ。

 中層でも同年代のサラリーマンでは良い方になるぐらいには稼げるのだ。

 下層や深層においてはもはや言うまでもない。


「で、最後の質問。趣味はダンジョン探索、攻略」


:知ってた

:知ってた

:だろうなと思った

:愚問でしたな。すいませんね


 そして最後の質問は、誰もがもう既に俺の様子を見て知っていることだろう。

 そう思って俺は、簡潔に終わらせるのだった。



~~~~~~~~~~~

今ならなんと先行公開が10話以上(第42話まで)あります。

サポーターとファンボックスhttps://www.fanbox.cc/@amanohoshikuzu/posts/7831399

で読めます。


まあこの小説は今のところ1日1話公開しているので10日もあれば追いついてしまいますが。

しかし、逆を言えば私が書き続ける限りは追いつかないということ……!


嘘です、しばらく別作を書くためのストックです。

だからそのうち追いつきます。

それでも応援してやろうという方は、是非お願いします

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