休憩

 一面に広がる冬の田んぼの中にポツンポツンと民家が見える。ずいぶん遠くまで来た。初めて来た土地。ナビがわりのスマホを見ると、かれこれ1時間以上走り続けていた。

 片隅に公園が見えた。原付を歩道に寄せ、エンジンを切る。ゆっくりと原付を押しながら公園の中に入ってみる。

 公園といってもあまり広くもなく、空き地に遊具を少し置いてみたといった表現が正しいのかもしれない。子供は1人もいない。この時期は冬休みのはずだが、クリスマスを過ぎているということは、みんな年末年始で家が忙しいのかもしれない。

 原付を邪魔にならない場所に置き、公園から道路を挟んで反対側の自販機へと向かう。あたたかいブラックコーヒー缶を1本買い、再び公園に戻る。原付の椅子に腰をかけ缶コーヒーを飲みながら一息つく。

 あいにくの曇り空で、なおさら昼間でも気温が上がらないが、缶コーヒーのおかげで幾分マシになった気がする。

 最後の一滴を飲み終え、吐いた白い息が消えていく様子を眺める。

 缶を自販機の横のゴミ箱に入れ、原付を歩道まで押し出した後に鍵を差し込み、勢いよく足元のバーを踏み込む。バッテリーが上がってしまい、キックスタートでしかエンジンがかからなくなってしまったことは不便だ。

 シートにまたがり、後方確認してグリップを回した。

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