L×R

.103『明日もどうせ雨だから』:8va rima

明日（あした）も晴（は）れないと　分（わ）かっていた

はしたない言（い）い訳（わけ）が　唯（ただ）痛（いた）かった

明日（あした）も雨（あめ）が降（ふ）ると　分（わ）かっていた

走（はし）らなくていい理由（わけ）に　浸（ひた）りたかった

成（な）し遂（と）げたことなど何（なに）も無（な）くて嚇（かかな）いた

済（な）し崩（くず）しな雫（しずく）流（なが）し放（はな）しては憚（はばか）った

泣（な）き顔（がお）へ　夜凪（よなぎ）の音柄（ねがら）も　呆（あき）れ声（ごえ）

泣（な）きながら亡骸（なきがら）が揶揄（からか）った最期（さいご）へ

書（か）き散（ち）らした幸（しあわ）せ　枷（かせ）は　億兆（おくちょう）個（こ）数（かぞ）え

奈落（ならく）に赫（かがや）く羽根（はね）の寵幸（ちょうこう）も曙光（しょこう）も皆（みな）がら

夜気（やき）よりも　さらに黒（くろ）き影（かげ）を灯（とも）した巴（ともえ）

灼（あら）たかな加被（かび）は甘美（かんび）な旅（たび）へ誘（いざな）いながら

塵溜（はきだめ）に決（き）まって溜（た）まってる羽根（はね）も黒（くろ）へ

改（あらた）めたために　認（したた）めた下心（したごころ）はさながら

座敷（ざしき）に籠（こも）りながら　恩（おん）も祈（いの）りも忘（わす）れ去（さ）った

菓子（かし）を頬（ほお）張（ば）りほくそ笑（え）む子供（こども）のようだった

明日（あした）が来（く）ることが　怖（こわ）かった

悪（あ）し様（ざま）な讒毀（ざんき）に切（き）り刻（きざ）まれていた

明日（あした）が来（こ）ないことが怖（こわ）かった

悪（あ）しき哀（かな）しみに醜（みにく）く苦（くる）しんでいた

明日（あした）に欠（か）ける心（こころ）はのさばった

足（あし）並（な）みを蔑（なみ）して　一人（ひとり）泣（な）いていた

だらしない肚（はら）の中（なか）で　嗄（か）らした終夜（よもすがら）

硝子（ガラス）に閉（と）じた虹（にじ）が　惨（みじ）めに滲（にじ）むなら

笑（わら）えない晴（は）れない　世界（せかい）なんて自（みずか）ら

灼（や）き払（はら）え　駄目（だめ）な運命（さだめ）を涙目（なみだめ）で呪（のろ）え

腫（は）らしたって明日（あした）もどうせ雨（あめ）だから

先（さき）へと　さあ行（ゆ）こう　この扉（とびら）を越（こ）え

新（あら）たな夜明（よあ）けへ　もう怖（こわ）くないから

泣（な）き声（ごえ）小声（こごえ）に　扉（とびら）からかかる呼（よ）び声（ごえ）

明日（あした）に悴（かじ）けた虹（にじ）が　黒（くろ）く崇（たか）く赫（かがや）いた

傾（かし）げた少女（しょうじょ）の頸（くび）は　唯（ただ）　微笑（ほほえ）んでいた