また今夜
は、っとした刹那、いつの間にか彼…
かすかに香る彼の残り香さえも心地よく感じてしまう。
不意に抱きしめられた相手…高級な素材をふんだんに使った、何処か近寄りがたい香りを纏った男性。自分と同じくらいの年頃だろう。
緋色の髪を短く切り揃え、すべてを包み込むような母なる海を流し込んだ蒼い瞳。
『
この国の王子、
見るからに高貴な服装に身を纏い、ふわりと微笑むその姿さえも近寄りがたい。
腕の中で赤面する
「やぁ、今日は君の顔が見たい気分だったから来てみたんだけど…誰だい、彼。」
き、と
そりゃ、
「…お前に名乗ル名はねぇヨ、俺の
ち、と場が悪そうに舌打ちをすれば、
自国の王子くらいは知っているだろうが…この国の者ではないのだろうか。
「俺の?聞き捨てならないね。君は彼の物なのかい、
『っ…!?ちが…』
ぎゅ、と抱きしめられながらそんな事を耳元で囁かれては、頭がパンクしてしまいそうだ。咄嗟に首を振れば、ふわりと広がる彼女の香り。
確かに、自分は
「どうやら違うようだけど?第一、
「なんデお前を通さナきゃなラねーんだヨ」
べ、と舌を出し挑発すれば、くるりと後ろを向いて扉へ足を動かした。
潔く諦めて帰るつもりなのだろうか…と思いきや、外に出た瞬間に立ち止まる。一回転して
「今夜、まタ会おうネ」
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