探していたのは

同時刻、閑散とした商店街を歩く一人の男がいた。

コツ、コツ、と単調な足音を鳴らしながら、何かを探しているような目つきで周りを見渡している。

白銀色の髪を一つに結った、蒲公英色の瞳が特徴的な細身の男性…美雨メイユイが夢の中で出会ったニンゲンにそっくりだ。

朝日に照らされ映し出されるその影の形は…どうやらニンゲンの物ではないようだ。

大きな尻尾に立派な翼…ヒトの形を保っているようだが、お天道様には欺けないようで。


「主様、本当にこっちなんですかぁ?なんにも感じませんけど…」


する、と彼の首元から現れたのは…白い蛇。神社で見かけると縁起が良いとされている神の使いだ。

白蛇は彼の首元から右手首へ移動すると、同じように目をよく凝らしてみる。主の探している者を自分も探そうと、大切な主様のために少しでも力になろうとしているのだろう。


「ン〜…確かに匂いはするんだヨ、近いはズ…」


自分のために頑張ってくれている白蛇を指の腹で撫でれば、蒲公英色の瞳を隠すかのように黄緑色のカラーサングラスをかけた。日光も眩しいし最適だろう。


暁明しぁみん様、何故そこまでして前の奥様を探しているのですか?」


暁明しぁみんと呼ばれたその男は、真っ直ぐな瞳で白蛇からの問いかけに口を開く。ぎら、と現れた龍のような牙がなんとも美しいものか。


「それハ…っ!?」


理由を話そうとした瞬間、今まで微かに香っていた彼女の匂いが急に強くなった。

お香を炊き始めたのだろうか、香りが風に乗ってこちらまで運ばれてきたようだ。

香りのする方向…今まで歩いてきた道の逆方向をぐるりと向けば、つい本能のままに走り出した。香りのする方へ行けば、探し求めていた彼女に出会える…!と。


暁明しぁみん様!?如何なさいました!?」


「アイツの匂いがすル!!行くぞびゃく!!」


びゃくと呼ばれたその蛇は、自由奔放な主の首元に巻きつけば大きく頷いた。最近は異常なほどに静かだったものだから、こんなに生き生きしている主を見れて嬉しいのだろう。


右を曲がり、この街で一番大きいであろう絢爛豪華な店をスルーする。ここから香る匂いではないようだ。

更に奥へ走れば、今にも潰れそうな一つの店にたどり着いた。スン、と鼻を動かしてみては…ここだ。ここから香る。

ふう、と大きく深呼吸をすれば、大きく開いたドアから店内へ足を踏み出した。


「ド〜モ、今やってル?」

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