つられて
見た夢を思い出せないなんて歳かもしれない、でもまだ17なんだけどな…と、頭に何個も疑問符を浮かべながら自問自答を開始する。
それを遮るかのように先ほど寝間着に突っ込んだ鱗の存在を思い出しては、そこら辺に投げ捨てた物のポケットをまさぐった。
『思い出せないもんは考えたって時間の無駄だしね〜…お、あったあった』
枕のそばにおいてあった白銀色の鱗。きっとこの先なにか良いことが起こるはず…!と前向きに考えながら、寝室をあとにした。
***
開店前の作業台には多種多様な花が転がっている。金木犀、蓮、牡丹…これらを巧い具合に加工して木炭と合わせる。そうしたら…
自画自賛になってしまうが、本当にいい出来だと思う。だが何故客足は無いのだろう。
『なんでなの…私そろそろ悲しいんだけど…』
昨日作ったお香をお香たてに入れ、近くにおいてあった木の棒で模様を描く。ぐるぐる…と渦巻き模様を描き出せば、形を整えながら
崩さずに乗せれば、昨夜の木炭の中に潜んでいた火の粉を取り出して香炉灰に寄せてみた。すると、うまく着火したようで白い煙が店内に充満し始める。それを客寄せパンダのように扱おうと、店の扉と小窓も開き香りを外へ解き放った。
『お店に人が来ますよーに…』
ぱん、と音を立て手を合わせれば、神に縋るように必死な声色でそう呟いた。
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