第16話 その頃、呑気な父親たち
ルークが両親に対する復讐の手立てを考えている頃、件の両親はバカ呑気に転売で荒稼ぎしたお金で豪遊していた。父親の方は隣国のアガトス王国の王都の娼館で無駄にお金を配り歩いてはおべっかを使われることに気持ち良くなっていた。
「ほれ~! 俺を気持ち良くしてくれたらお前にもこの金貨をやるぞ~!」
「きゃあぁああああ! ドリトンさん素敵ー!」
「ふははははっ! お前とお前も俺を気持ち良くさせろー!」
お金の匂いにつられて、さらに女の子たちが寄っていき、ルークの父ドリトンは余計に気持ち良くなっていく。母親バミラのほうも似たような感じで、男娼館で豪遊していた。ドリトンはしばらく気持ち良くなった後、更なる快楽を求めるべく、女の子たちに対して面白くもない身の上話を語り始める。
「ふふふっ、そうだ、お前たちに面白い話をしてやろう!」
「えー、それはすっごく気になりますぅ!」
「だろうだろう? 俺の抱腹絶倒の昔話をたくさん聞かせてやるからな!」
女の子たちは心底興味なかったが、お金を配ってくれそうだったので、興味がある振りをしていた。しかし酔っ払いかつ鈍感なドリトンはその本心を全く見抜けず、女の子たちが興味津々なのだろうと心から思い込み、大きな腹を揺らめかせ、口元を高揚でニヤつかせながら話し始める。
「俺にはなぁ、今年で11……いや、12歳だったか? まあ、幼いガキがいるんだ。俺は前は別の国で領主をやっていたんだが、村人どもやメイドどもを扱き使いまくっていたら、徐々に領地から離れて行きやがってね、俺はこの先経営が苦しくなると予見して、その何も知らない無能なガキに爵位を継がせて別の事業を始めたってわけなのだよ! いやぁ、我ながら立ち回りが天才過ぎて恐ろしいよ」
それを聞いた女の子たちは一同に「親としてどうなの」とか「子供と領民たちが可哀想」とか「自分のことを堂々と天才って言っちゃうヤツほどバカだよね」とか、様々なことを思ったが、そんなことを言ってしまえばお金を配ってくれなくなりそうなので、必死に引き攣りそうな口元を抑え、笑みを浮かべてこう言った。
「さすが、ドリトンさん! あったまいい~!」
「そんな立ち回り、普通の人じゃできないよ~!」
「私、ドリトンさんに憧れちゃうなぁ!」
そんな見え透けたおべっかを聞いて、鈍感すぎるドリトンはさらに冗長する。
「はははっ! やっぱりお前たちにも分かっちゃうか、俺の天才さが! バカな女を欺し娶って、無能なガキをこしらえたのも、こうなることを予見していたからなんだなぁ!」
それから四時間ほども続いた見栄話に女の子たちは酷く疲弊してしまったが、その分たくさんお金をもらえたから良しとした。ただもう絶対にこの店には来ないでほしいと、全員一致でそう思うのだった。
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