第15話 ドワーフがやってきたぞ

 朝、目を覚ますと屋敷の扉をドンドンと強く叩かれる音が聞こえてきた。なんだなんだ、ようやく暴動が起きたか? レベリングに苦しみを覚え始めた村人たちが一揆を始めたのかもしれない。そうだとすれば、ようやく俺も悪役として道を歩き始めたらしいな。そう思って俺は寝室を出て階段を降り、玄関に向かった。


「おい! エレクトリア家の屋敷ってのはここだろう!」

「今すぐ出てきて謝りやがれ!」


 野太い声だ。う~ん、こんな声の村人はいなかった気がするけど。てか村人なら俺の屋敷は知っているはずだから、確認するようなことは言わないはずだしな。もしかすると村人じゃない……? だが村人じゃなかったら誰だ? 俺はいまだこの領地から出たことないから謝るも何もないはずだが。不思議に思いながら玄関を開けると、そこには数十人ほどのドワーフがいた。


「……む? お前はエレクトリアの息子か?」


 代表して一番ヒゲを蓄えているドワーフがそう尋ねてきた。俺はそれに頷いて答える。


「ああ、俺がエレクトリア家の息子、ルークだが」

「そうか! ならお前の両親を出してもらおう!」


 両親? 俺の両親はこの前に俺に爵位を譲渡してから出て行ったが。出せと言われても、今どこで何をしているのかも知らない。そのことを俺がそのドワーフに伝えると、さらにそのドワーフは青筋を立てて怒り叫んだ。


「あのクズども! 自分の息子すらも捨ててあんなことしてやがるのか!」

「あんなこと……?」


 あんなことって何だ? あいつら、また方々で悪事を働いているのか? それなら悪役の親としては合格なんだが、俺が尻拭いさせられそうで凄く嫌だ。両親の悪事の尻拭いをする悪役って何だよ。ドワーフは俺の問いにムスッと不機嫌そうな表情で話し始めた。


「あいつら……お前の両親はな、俺たちドワーフの作った武具を格安で買い叩いた挙げ句、余所で高値で転売していたのだ! 俺たちの誇りを穢されたぞ! 許せるかよ、ちくしょう! しかもそのせいで、我らの村から買い叩かれた若者たちが出て行ってしまい、村としても機能しなくなって、その村から出なきゃいけなくなったんだぞ!」


 怒り心頭といった感じでつばを飛ばしながらそう悪態をつくドワーフ。確かに言われてみれば、ここにいるドワーフたちはみな歳をとっていそうだ。しかしなぁ……うちの両親、やってることが完全に小悪党だぞ。悪役としてはギリ落第点レベルの程度の低さである。もっと悪役としての誇りを持ってほしいものだ。とと、うちの両親に対して愚痴ってる場合じゃないな。このドワーフたちをどうするか考えなければ。


 う~む、そうだな、少し優しくしてやって信頼を得た後、馬車馬の如く働かせるのも有りだな。ドワーフは鍛冶や建築が得意だ。こいつらは歳はとっているが、使えないってことはないだろう。色々働かせてみるか? やはり領地を発展させるともなれば、ドワーフを好きに使えるってのはデカいからな。


 俺はそう判断すると、にやりと笑みを浮かべてこう言うのだった。


「そうか。お前たちの事情はよく分かった。俺が両親に対する復讐のお膳立てをしてやろう。そしたら俺の手伝いをしてほしい」

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