第14話 団長の師匠って一体誰なんだ
サーシャはルークの弟子になったのは良いものの、すぐに仕事が始まるからと碌に訓練をできずに王都に帰還した。そのことが凄く不服だったのか、あちこちで愚痴を零していた。
「はあ……師匠と二人きりのラブラブ訓練したかったのに、なんで仕事なんて……」
王都の有名な高級カフェで、物憂げな表情をしながら窓の外を眺め、ため息をつくサーシャ。美人だからか、その様子は凄く絵になった。しかしその対面に座るS級冒険者パーティー【愚者のエーテル】に所属する魔法使いレイラは何度も聞いたその台詞に辟易としていた。
「だから、その師匠とはどなたですの? 名前くらい教えていただけないかしら?」
「いやぁ、言いたいんですけど、言いふらすなって師匠から言われてまして……」
レイラの問いにニマニマしながらサーシャは言った。その表情にレイラは思わずイラッとする。サーシャが師匠とのその約束に優越感を感じているのは明白だった。腹が立ってきたレイラは少しでも情報を得ようとサーシャに探りを入れる。
「でもサーシャさんほどの方が師匠とお呼びするのですから、相当お強いのですよね?」
「強いってもんじゃないですよ! 私の切り札【天空の雷剣】の雷を全て剣一本でパリィしたのですから!」
探りを入れたつもりが、思ったより衝撃的な話が出てきてレイラは目を見開く。やはり得意げなサーシャに苛立ちは覚えるが、それ以上に興味が勝った。
「それ、本当にできますの……? 【天空の雷剣】と言えば、上級剣術スキルではありませんか。パリィできるようになるには、相当レベルを上げなければならないでしょう?」
「そうなんですよ! でも師匠のレベル、教えてくれないんですよねぇ……」
今度は悲しそうに言ったサーシャに、レイラは心の中でガッツポーズをする。レベルすら教えてもらえないとか、案外信用されてないのだろうと少し溜飲を下げた。しかし苛立ちが解消した途端、レイラの感情は全てその師匠に向いてしまう。気になる、凄く気になる。どんな人なのか、どこに居て、どんな修行しているのか、凄く気になる。レイラもS級冒険者パーティーの一端だ。強さに対してはものすごく貪欲だった。
「って、そろそろ仕事の時間なので、私は戻りますね!」
そう言ってサーシャは騎士団の宿舎に帰っていった。残されたレイラは少しばかり一人で紅茶を楽しんだ後、カフェを出て、サーシャの師匠についての情報を探しにありとあらゆる場所に赴くのだった。
そのせいで巷に『零式騎士団団長のサーシャの師匠で、S級冒険者の魔法使いレイラの探し人がいる』という情報が出回ってしまうのだった。
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