1175 関係者専用出入り口の攻防

 面倒臭がりの警備員によって、入館を許可して貰えない眞子。

仕方がないので、誰か知り合いが通るのを待って、自分が奈緒グリのHELPで来てる事を証明しようとするのだが……


***


 ……あれから10分経過してしまいました。


寒いです。

正直言って、究極の寒がりである私にとっては、此処で誰かを待つのは非常に寒いです。

それに伴って、こんな理不尽な状態が続いてるから、さっきまで上げ上げだったテンションもガタ落ちしてきました。


だから、早く誰か来て下さい。


まぁそんな状況に陥った場合、普通なら、こんな所で変に意地を張ってないで【此処から奈緒グリの誰かに連絡すれば良いじゃん】とか思われるかもしれないんだけどね。

奈緒ネェ達って、日本にはライブをしに来てるだけの短期滞在だから、誰も携帯電話を持っていないんですよ。

だから此処からじゃあ、どうやっても連絡の取り様が無いんだよね。


現に、私を此処に呼び出した時も、奈緒ネェは公衆電話を使ってたでしょ。


あぁもぉ、なんか嫌に成ってきた。


帰ろうかな?



そんなネガティブな気分に成って来ている最中……



「なぁ、オマエ。何時まで、そうしてる気だよ?目障りだから、もぉさっさと帰れよ。そこでドンだけ待っても、東京ドームの中には入れねぇんだからさぁ」

「そうしたいのは山々なんですけどね。頼まれ此処に来てる以上、そう言う訳にもイカナイんですよ」

「チッ……まだ、そんな戯言を言ってんのかよ。面倒臭ぇなぁ、もぉ。ってかさぁ、そんなにまでして奈緒グリに逢いたいのかよ?」

「だ・か・ら、私は奈緒さん達に逢いたいんじゃなくて。HELPを頼まれて、此処に来てるの」


さっきから人の話を聞いてる?


それと、中に入れる気がないんだったら、変に話し掛けないでくれないかなぁ。


流石に、こんな所で10分も待たされてイライラして来てるから。



「あっそ。……まぁ、良いや。そこまで言ってでも中に入りたいんなら、その根性に免じて、特別、中に入れてやっても良いぞ」

「ホント?」


でも、そうは言われたものの、なんかこの国見さんの甥っ子さんからは嫌な雰囲気しか漂っていない。

その証拠に、なんか私の全身を、嘗め回す様な嫌な視線を向けてきている。


まさか……ゲスな事を考えてるんじゃないですよね?



「マジマジ。但しな。魚心あれば水心ってな。だからそこは、オマエの、ちょっとした心掛け次第だな」

「なにそれ?私に、なにを要求する気よ?」

「なぁにな。オマエさぁ。さっきは暗くて、よく顔が見えてなかったから、今まで軽くあしらって来たけど。よく見るとスゲェ可愛い顔してるからさぁ。ちょっと、俺の退屈凌ぎに付き合って欲しいだけなんだよね」

「だから、それが、なにか?って聞いてるんですけど」

「なぁ~~に。そんな大層なこっちゃないから、そんな警戒しなくても良いぞ。それにHをさせろとかゲスな事も言わない」

「それで?」

「……ただ単に、退屈凌ぎに、10分程、オマエのオッパイ揉ませてくれよってだけの話」

「はぁ?」

「それで奈緒グリに逢えるんだから、それぐらいなら安いもんっしょ」


ヤッパリだ。

下衆い事は言わないとか言ったクセに、思いっ切り下衆い事を要求をして来てるし。


しかも、此処で職権乱用みたいな真似をしようとするなんて、どういう神経してるんだろう、この人?


大体にして警備員って、その施設や、VIPの安全を守る為に配備されてる人達の事を言うのに。

これじゃあ、なにも守れてない処か、寧ろ、自らの欲望を満たす為だけにトラブルを呼び込んでるだけじゃない。


そんなんじゃあ、とても、とても警備員の仕事をしてるなんて言えたもんじゃないですよ。


あぁ、因みに、これはご存じだとは思うのですがね。

さっきから貴方は、当たり前の様に、警備員の権力を行使しようとしてるみたいですけど。

警備員って言うのは、警察官と違って、そんな「国家権力」みたいなものは一切ないんですよ。

なので実際は、こうやって【此処に私を居る事を、貴方に咎められる言われもない】ですし【施設内に入るのを邪魔する権利すらない】事ぐらいはご存じですよね?


まぁ、そんな事も知らないから、こんな馬鹿な事を堂々と言って来てるんだろうけどね。



「……っで、どうすんの?奈緒グリを間近で見れる、こんなチャンス滅多に無いぞ。それをオッパイ揉まれるだけで、そのチャンスを掴めるんだから安いもんっしょ」

「あのさぁ。……アンタって馬鹿なの?なんで、HELPを頼まれて来てるのに、アンタに胸を揉まれなきゃならないのよ?そんなの、丁寧に、お断りさせて貰う。嫌だ」

「オマエって、ホント、馬鹿な奴だなぁ。オッパイ揉まれるぐらい、別に良いじゃんかよ。減るもんじゃなし。それにさぁ。ちょっと我慢すりゃ、憧れの奈緒グリに逢えんだぜ、奈緒グリに……これって、良い取引じゃね?」

「最悪。こんな人を警備に雇ってるなんて、此処の管理会社、どうかしてるんじゃないの?終わってるよぉ」


……ってかね。

そんなにオッパイ揉みたきゃ新宿の『オッパイ・パブ』でも『ラン・パブ』でも、五反田の『風俗街』にでも、好きなだけ勝手に行って来れば良いんじゃないの。


なんなら、真琴ちゃんの実家の下部組織が経営してる、上辺だけ安い質の悪い店を紹介してあげるよ。


そこで……ボラれて死ね。



「こんな二度と無い様なチャンスを逃すなんて、マジで馬鹿な奴。……じゃあ、そこで凍え死ぬまで、勝手に待ってれば良いしょ」

「はぁ……」

「うん?桜井、なにを騒いでるんだ?なんかあったのか?」


そんな風に国見さんの甥っ子さんが、好き勝手な事ばかり言ってたら。

誰か、もう一人、厳つい感じの警備員さんが、こちらにやって来たんだけど。


あっ……誰かと思ったら、鮫ちゃんだ。


流石、奈緒ネェの陰には、鮫島有りと言われてるだけはある男。

此処の警備でも活躍してるんだね。


それにしても、此処で鮫ちゃんの登場はラッキーな展開だ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


桜井さん……中々の下種っぷりですね(笑)

自分勝手な欲望満載な職権乱用をかました上に、認められていない人間(此処では眞子の事)を、勝手に施設内に入れるなんて警備員としては以ての外。


もし眞子が、奈緒グリのストーカーみたいなファンだったら、どう責任を取るつもりなんでしょうね?


まぁまぁ、そんな事すらも考えてないから、こんな事が出来るんでしょうが。

此処に来て、漸く、眞子の知り合い(知ってる人)である鮫ちゃんが登場しましたので、この現状を打破出来るかもしれませんね。


さてさて、そんな訳で次回は。

その鮫ちゃんを踏まえた上での会話が始まりますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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