1170 お手伝い終了と共に鳴り響く携帯電話

 何故か東京ドームの関係者以外立ち入り禁止区域を、ベースを持ちながら歩く眞子。

その原因を紐解くには、前日から行動が鍵と成っているのだが。

今の所、崇秀の手伝いをしていた事以外解らず……


***


 ……まぁ、そんな非常に忙しい状態が、朝から晩まで長時間に渡って継続していたのですが。

崇秀さんは、相も変わらず、なにをするのにも手が早いのか。

閉店時間まで後1時間も残して、本日分の予約のお客様及び、予定していた一見さんのカットをアッサリ済ませ。

今はアイスコーヒーを片手に、ホッと一息着いている。


それで、自分の今日の売り上げについて、会計士の中山秋奈さんと、なにやら熱心に話し込んでいる様子だ。


でもさぁ。

その表情が、仕事をする男の真剣な表情だからさぁ……これがまた、見蕩れるぐらい格好良いんだよね。


……けど私は、そんな崇秀さんを尻目にしながら。

まだ他の人のお手伝いを続行中だから、ソッチに行けない。


これは虐めだよ……くすん。


そんな崇秀さんの表情を間近で見たいのに。


 あぁ……因みに、なんだけどね。

崇秀さんは、まだ年齢的にも『美容師の免許』を取得出来ない年齢だから、基本的には、お客様から料金は頂かないの。

此処で変にお金を貰ちゃうと、これ自体が違法行為に成っちゃうから、後々色々と問題が出ちゃうからね。


でもまぁ、その代わりと言っては、なんなんだけどね。

カットしたお客様全員には、必ず『お客様満足度アンケート』成るものを書いて貰ってるみたい。


……ただね。

そのアンケート回収箱の横に『善意の募金箱』って言う、如何にも胡散臭いものが置いてあってね。

その上で、何故か、その箱には、あからさまに『平均的なカット料金』が書かれてるんだよね。


あれ……どう言う意味だろうね?


崇秀さんがカットしたお客様は、皆さん、そこに、お金を入れて行ってるみたいだけど……


『善意の募金だと、料金を貰ってない』とでも言いたいんだろうか?


***


 ……まぁ、そんな感じでですね。

更に1時間が経過して、店の終業時間である20時に成り。

漸く、私のお手伝いさん業務は終了の時間を迎えた。


でもまだ、残られているお客様の相手をされてるSTAFFの方も数人見受けられる様なんだけど。

崇秀さんは閉店時間に成ったら、私を呼んでくれて……私のお手伝い業務も終了させて貰う事になった。


……で、漸く此処からが、私が待ちに待った、お楽しみTIMEなんだけどね。


実は、この後、崇秀さんと、静流お母さんと一緒に夕飯を頂いちゃう予定なんだよね。

これが、お店のお手伝いをした後の一番の楽しみって訳。


それで食後、一息付かせて貰ったら。

私は上星川の実家に帰って、本日の業務は全てお仕舞いって寸法。



……の予定だった筈なんだけどね。


何故か20時ジャストに携帯電話の電源を入れた瞬間、携帯電話の電子音が鳴り響く。


……これこそが12月3日。

私が、東京ドームの関係者以外立ち入り禁止の場所を、重たいベースを、わざわざ2本も抱えて歩いてる理由になる、そのプロローグだった。


***


 電話を掛けて来た相手は『非通知』なので、どうやら公衆電話を使って電話を掛けて来ている様だ。


故に、この時点では、全く誰かは解らない状態。


……でもね。

此処は安心して、電話に出ても大丈夫なんだよね。


だって、私の携帯の番号を知っているのは極限られた人間しか居ない。

だから意外と、なにも考えずに電話に出ても、問題が無かったりする。

それに、今まで1度も間違い電話が掛かってきた事が無いから、尚更安心。


そんな理由から、無駄に警戒をする必要は、此処には無い訳だね。


……ってな訳で、私は、なにも考えずに、何気に電話に出てしまった。



「あぁ、はい。向井ですけど、どちら様でしょうか?」

「あぁ、眞子。私、私。奈緒、奈緒」


ほらね。


案の定、奈緒ネェから電話だったから大丈夫だったでしょ。



「あぁ、奈緒ネェ。急に、どうしたんですか?なんかありましたか?」

「うぅん、なんにもないよ。……ただ、眞子が『今なにをしてるのかなぁ?』って思って電話しただけ」

「そうなんですか?」


あれ?これはまた早くも、なんか不穏な空気が流れて来てるなぁ。

って言いますのもね。

確か奈緒ネェには、私が昨日・今日の2日間は、崇秀さんのお手伝いしてるって前以て知らせて置いた筈なんだけどなぁ。


それだけに、今奈緒ネェによって発せられた言葉にはおかしな点が多い。


それに、この狙ったかの様なジャストなタイミング。


なんか尚更、妙な胸騒ぎがしますな。



「そぉそぉ。……っで、なにしてんの?」

「あぁ、はい。昨日、今日は、この間、奈緒ネェに伝えた通り、崇秀さんのお店のお手伝いをしてましたよ。まぁ、それも、今しがた終わった所なんですけどね」

「そうなんだ。じゃあ、グッド・タイミングだったね」

「えぇっと……なにがですかね?」

「なにって……そんなの決まってるじゃない。今、私達、東京ドームでリハやってるんだけどさぁ。今から仲居間さんと一緒にドームに来ない?って話」


……出たよ。

ヤッパリ、そう言う事だったんだ。

電話が掛かってきたタイミングからして、最初からそうじゃないかとは思ったんだけど。


それがまさか……予想を裏切らない、まんまの展開とはね。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪


奈緒さんの電話で、うっすらとではありますが、眞子が観戦ではない理由で東京ドームに居る訳が見えてきましたね。

ですがこの日は、奈緒さんの言った通り『リハ』っであって、ライブの当日ではありません。


なら、この後一体、何があって、眞子はライブ当日にアソコの場所を歩く羽目に成ったのか?


次回は、更にその真相に迫っていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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