1171 奈緒さんからのリハへのお誘い

 奈緒さんの凱旋ライブの前日、眞子は崇秀の店のオープンを手伝っていたのだが。

その手伝いが終わると同時に、奈緒さんから電話がかかって来て「東京ドームに来ないか?」っと言うお誘いを受ける事に。


***


「ドームですか?……あぁっと、どうしようかなぁ?」

「なに?眞子、ひょっとしてこの後、なんか予定でも有るの?」

「あっ、はい。予定って程の話じゃないんですけどね。今から崇秀さんの家で、夕飯をご馳走に成ろうと思ってたんですよ」

「あぁ、そうなんだ。そっか。そりゃあ残念。……折角の東京ドームだから、眞子にも、此処で演奏させてあげたいなって思ってたんだけどね。……仲居間さんと食事じゃ、しょうがないよね」


あぁ……本当に、どうしようかなぁ?

良かれと思って、電話をしてきてくれてるだけに、奈緒ネェ、なんか、ちょっと凹んじゃったみたいだね。


崇秀と、奈緒ネェに優先順位なんてものは殆どないんだけど、流石に体は1つ。

一片に両方は無理だからなぁ。


これは困ったなぁ。



「あの……」

「あぁ、いいよ、いいよ。別に気にしなくて良いよ。今のは聞かなかった事にしといて」

「いや、あの、そうじゃなくてですね。有無を決める前に、崇秀さんに相談しても良いですか?」

「いや、眞子。ホント、無理しなくて良いんだよ。ゆっくり、仲居間さんと食事をさせて貰いなさい」


うぅ……そう言われると余計に辛いなぁ。



「あっ、あの、奈緒ネェ。私、無理してるんじゃなくてね。本音では、結構、東京ドームに行きたいんですよね。でもね。正直言っちゃうと、崇秀さんとの食事もしたいから……崇秀さんに相談しても良いですか?って話なんですよ」

「あぁ……そっか。じゃあ、悪いけど、仲居間さんと一回話し合ってみてくれる?」

「あぁ、はい♪じゃあ奈緒ネェ、ちょっと待っててね……崇秀さ~~ん!!」


携帯電話の受話器の部分をグッと押え。

出来るだけ、こちら側の会話を聞こえない様にしながら、崇秀さんの元に走って行き。


そこで声を掛けさせて貰った。


( ゚д゚)ハッ!……

でも、就業時間が終わったとは言え、崇秀さんは、まだ中山さんと仕事の話をしてるんだった。


慌ててたとは言え……空気読めてないなぁ。



「んあ?急に大声出して、どうかしたのか?」

「あぁ、ごめん」

「いや、別に構わねぇんだけどな。なんか用か?それとも腹が減ったか?」

「うぅん。お腹は、そんなに減ってないよ。ただ、今ね。奈緒ネェから電話が掛かってて。奈緒ネェが、崇秀さんと一緒に東京ドームで演奏しませんか?って言ってくれてるんですけど。……崇秀さん、どぉする?」

「あぁ、そう言う事な」

「行けそぉ?」


お忙しいとは思いますが、行けますかね?



「ふむ……あぁ、けど、悪ぃな。今日は、流石に無理だわ。店のオープンの事もあって、他の人間の事でしなきゃイケネェ事が山積みでな。俺だけの事なら、後でもどうにでもなるんだが……悪ぃな眞子」


……だよね。

崇秀さんは、お気楽に動き回れる立場の私とは違うもんね。


これはどう考えても、しょうがないよね。



「うぅん、良いの、良いの。……じゃあ、奈緒ネェには申し訳ないけど、断って置くね」

「いや、別に、俺は行けねぇけど。オマエは、折角なんだから、東京ドームに行って演奏させて貰えば良いじゃんかよ」

「えぇ~~~っ、やだよ。私はドームなんかより、崇秀さんと一緒に食事がしたいよぉ。だからヤダ」

「このカラパカ。あのなぁオマエ。俺と飯なんぞ、いつでも一緒に喰えるだろうに。それに比べて、リハとは言えドームで演奏するなんて、極一部の有名なミュージシャンにしか許されてない行為なんだぞ。だから、今後の為にも行っとけよ」


一緒にご飯食べたいのになぁ。


でも……



「うぅ……それは、崇秀さんが、私に、そうして欲しいって事?もしそうなら、行って来るけど」


そう言ってくれれば、行く気にも成る。


偶にはね。

そう言う要求を、崇秀さんの口から直接言って欲しいんだよね。


決して『命令されたい』って訳じゃないけどさぁ。

なんて言うか、崇秀さんに『頼まれてみたい』なんて、厚かましい願望があったりするもんでして。


故に、マスター!!


眞子にオーダー・プリーズ!!



「おぅ。これは、オマエにしか頼めない、俺からのお願いだ。行って来てくれるか眞子?」

「あぁ、はい!!じゃあ喜んで、マスター♪」

「マスター?ハハッ、なんだかなぁ。……つぅかオマエ」


はっ……恥ずかしい!!

なに言っちゃてる訳、私ってば!!


崇秀さんに頼まれたのが嬉しくて、ついつい頭の中で考えてた『マスター』って言葉を口走っちゃったよ。


最悪だよ。



「あぁ、あっ、はい!!なんですかマスター!!」


うわ~~ん!!連続で、またやっちゃったよぉ!!


マスターごめんね。


……って!!マスターと違うって!!崇秀さんだし!!


あぁ……でも、崇秀さんは、私のマスター様でもあるよね。


じゃあ……このマスターって呼び方も有りだよね。


えへへ、翌々考えると間違ってないね。



「あのなぁ眞子。マスターも良いけどな。電話……早くしろな」

「( ゚д゚)ハッ!!!スッカリ忘れてた!!」

「……ったく、オマエだけは」


あぁ……今度は違う意味で、またやっちゃった。

頭の中で馬鹿な事バッカリ考えて浮かれてたら、本気の本気で……電話の事をスッカリ忘れてた。


なので今から、心の底から『奈緒ネェごめんなさい』と謝罪します。



「あぁ、あの、奈緒ネェ、ごめんなさい。電話口で長い事待たせて、ごめんなさい」

「……別に良いけどね」


そう言ってるけど。

敢えてテレフォンカードを使わずに、10円玉や100円玉を、沢山チャリチャリと公衆電話に入れてますね。


それは俗に言う……



「怒ってますか?……怒ってますよね。すみませんでした」

「別に怒ってないけど。……っで、アンタ、どうすんのよ?」


ヤッパリ怒られた。


いつもと違って、言葉尻がキツイや。



「あぁ、いや、あの、行きます。あぁ、いやいや、行かせて下さい。あぁ、いやいやいや、そちらに行かさせて頂いて、宜しいでしょうか?」

「アンタさぁ、ホントに来たいのぉ?そこに居るマスターとやらに頼まれたから『無理して来る』って言ってるだけなんじゃないのぉ?」

「違いますよ!!本当に東京ドームには行きたいんですって!!マスターは関係ないですって!!信じて下さいよぉ」

「ぷぷっ、なにをマジになってるのよ?そんなの冗談に決まってるでしょ。真に受けるかなぁ。……まぁ、そんな事は、どうでも良いからさぁ。早くコッチにおいで眞子」


今度は、からかわれたのね。



「あっ!!……ぷぅ!!じゃあ、直ぐに行きます」

「怒ってやんの」

「怒ってません!!」


怒ってませんし、直ぐに行きますね。


……っと言う訳でして。

私は直ぐに、店を出て、荷物を置かさせて貰ってる崇秀さんの家で帰り支度をしてから、再び店に戻り。

崇秀さんに挨拶をしてから、東京ドームに行こうと思ったんだけど……


あり?居ないや。

忙しくて、私のマスターは、何処かに行っちゃったのかなぁ?


うぅ……帰りの挨拶も出来無いなんて、寂し過ぎだよ。



まさに『陰の風が吹き、滅の雨が降る』陰々滅々状態ですよ。


早い話、落ち込みですよ!!


とほほほほ……そりゃあないよぉ。


……なんて、悲劇のヒロインを演じながらも。

そんな風に1人で悲嘆に暮れていても虚しいだけだし、なにも生産性が無い事に気付き。

店に残られて、まだ頑張ってらっしゃるSTAFFの皆さんに愛想よく挨拶をしてから、本日は『N`s F』を後にする事にした。


でも、とほほですよ……


マスター!!私を置いて、どこに行っちゃったのですかぁ!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


どうやら眞子は、これが原因で東京ドームに行く事に成った様なのですが。

矢張り、これはまだ、ライブ前日の話であって、ライブ当日の話ではありません。

なので、ライブ当日に、関係者エリアを歩いてる理由にはならないのですが。


この後、一体、何があったのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思います……が。

その前に、東京ドームに到着しないと話に成らないので、その道中のお話をしたいと思います。


そんな感じですが、良かったらまた遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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