1166 待ち惚けしてたら

 受験勉強のノルマも終わらせ。

東京ドームで行われる奈緒グリのライブへ、いざ赴かん!!


***


 ……まぁ、そんな訳で御座いましてですな。

心躍らせながら自宅から出て、地元の最寄駅から京急に乗り。

一旦、横浜まで出て行き、まずは此処で軽く腹ごしらえ。


その後、横浜駅からは、東京に向うJR線に乗り変えて。

今日、奈緒さん達がライブをする東京ドームのある『水道橋駅』まで一気に向う。


ホンで今現在、水道橋の駅前で待ち合わせ中な訳だぁな。


でもよぉ……思ったより、電車の乗継ぎが上手く行き過ぎちまってだな。

約束の時間より30分も早く、この水道橋駅に到着しちまったんだよな。


此処で早くも予想外の展開。


……けど、こんなに早く着くならよぉ。

途中で御茶ノ水にでも寄って、チョロっと楽器屋でも覗いて来りゃあ良かったな。


SHOPに、なんかヴィンテージ物の掘り出し物が出てたかも知れねぇからな。


なんせ最近の俺は、眞子のベースの音を聞いて。

アイツの持つヴィンテージ品が、ちょっと羨ましいなぁ……っとか思ってた節があったもんでな。


でもまぁ……こうやって、待ち合わせ場所に到着しちまったもんは、しょうがねぇ。

今更、御茶ノ水に戻る気にも成らねぇし、偶には、こうやってボケ~~っと待つのも良いっか。


姉弟の眞子とは言え、女の子との待ち合わせをしてる事だしな。

待ち合わせ場所に早く来て、女の子を待ってるのも、別に悪かねぇやな。


あぁ因みにだがね。

待ち合わせの相手が崇秀や、山中のアホンダラァの様な男連中だった場合、今頃、御茶ノ水に直行してただろうと思われる。


男を待つのなんざ、ぜってぇ嫌だし。

アイツ等なら、一時間位遅刻しても平気だからな。


***


 ……まぁそんな感じの勝手な事を思いながら。

駅前で、更に5分程。

魂が抜けた様に、ボケ~~~~っとしながら、1人でプハァ~~~っとタバコを吹かしてたら……


突然、なんの前触れもなく、背後から声を掛けられる。



「あの、申し訳ありません。そこに居られるのは……もしかして、倉津さんじゃありませんか?」


その声は、なんか聞き覚えのある可愛い声で、俺の名前を名指しで声を掛けられたんだが……この声は、明らかに眞子の声じゃねぇよな。


アイツの声は、少し鼻に掛かった様な声で、アニメみたいな声をしてやがるからな。

こんな落ち着いた雰囲気の声質ではない。


だったら、外出中の俺に声を掛ける奇特な女子って、一体、誰だ?



不明瞭な点が多すぎて、一瞬、かなり不機嫌な声を出してしまう。



「あ~ん?誰だよ?」

「あっ、矢張り、倉津さんでしたね。こんにちわ。その節は、お世話に成りました」

「へっ?へぇぇぇえぇぇ~~~?まっ、まっ、まっ、真上さん!!なっ、なっ、なっ、なんで、こんな所に?」


なんで真上さんが水道橋に?

一体、こんな所で、なにしてるんッスか?


日夜忙しい筈のアナタが、此処に居るって事は、特殊な生地の買い出しか、なんかの為に、ワザワザ水道橋まで出向いて来たんッスか?


これは謎だ。



「えっ?あぁ、今日、私が、此処に居る理由ですか?」

「あぁ、はいッス」

「あの、実を言いますとですね。先日のカラオケの際に、向井さん(奈緒)からコンサートのチケットを、ありがたくも頂戴致しましたので。厚かましいとは思いましたが、コチラの会場に来させて頂きました。……それで駅前に、倉津さんらしき方を、お見受け致しましたので、お声を掛けさせて頂いた次第なのですが……矢張り、ご迷惑でしたでしょうか?」


あっ……なるほど、なるほど。

そう言う経路で、コチラにいらしたんですな。


それにしても、自分から迷惑だなんて言わないで下さいよ。

真上さんに声を掛けられて、迷惑だなんて思う人間は、この世には存在しないッスから。



「いやいやいやいや、迷惑だなんて、とんでもねぇッスよ。俺も、丁度、今、退屈してた処なんで、声を掛けて頂いただけでも、マジで嬉しいッスよ」


うわ~~~……それにしても、今日の真上さんは一段と綺麗だな。

外出用の格好だからかして、いつもの普段着よりも数倍以上に可愛らしい服装をしてるし。

服飾系の仕事をしているだけの事はあって、流石にコーディネートも、着こなしも、どこをとっても完璧だ。


普段から綺麗な人なのに、50%増し位で綺麗に成ってるッスな。


この場で話してるだけで、道行く人が振り返るから、優越感もバリバリッスな。



「そうでしたか。でしたら良かったです。私、コンサートに行くのって初めてなので、少し1人で居て不安になっていた所だったもので……この場で、知り合いの倉津さんにお逢い出来るなんて、私も、本当に嬉しいです」


相変わらず、強烈な後光を刺しながら、無垢な可愛らしい笑顔で微笑み掛けてくれるッスな。


毎度の事ながら、俺みたいな日陰者には、その笑顔は眩しすぎッスよ。


真上さんの背後から差し込む光を浴び。

俺みたいな邪悪な生き物は、一瞬にしてドロドロドロって消滅してしまいそうな勢いッス。


ホンに今日も、お美しゅう御座いますな。



「そっ、そうなんッスか?じゃあ、今日は、お1人なんッスか?」

「あぁ、いえ。本日は、飯綱さんと、お約束をさせて頂いていますね。ですが飯綱さんが、まだ、コチラには、お越しじゃない様なので……」


オイオイ、チビ太……なにがあっても、遅刻はイカンぞ。


遅刻大王の俺が言うのもなんだがな。

真上さんを待たす様な最低な真似は、絶対にしちゃイカンぞ。


オマエと違って、真上さんは繊細なんだからな。

こんな寒空で待たせて、風邪でも引いたら、どうするんだよ?


イカンだろ?



「そうなんッスか?そりゃあ、難儀な事ッスね」

「いえいえ、そうじゃなくてですね。私が1人でそわそわして、勝手に早く来てしまっただけですので、飯綱さんは、なにも悪くありませんよ。……それはそうと倉津さんも、どなたかと待ち合わせされているご様子ですが、どなたをお待ちなんですか?」

「あぁ、いや。俺は、ただ単に眞子を待ってるだけッスよ。……真上さん同様、俺も此処に早く着いちまったもんだから、ちょっと待ち惚けを喰らってる最中だったんッスよ。だからッスね。真上さんに声を掛けて貰って、ホント有り難かったッス」


眞子……ちょっとの間、此処には来るなよ。


まだ来なくて良いからな。


俺に、もぉちょっとだけ、真上さんとの、この緩やかな時間を満喫させろ。


だから来るのは、ゆっくりで良いぞ。

寧ろ、遅刻しても、全然かまわないからな。


……あぁイカンなぁ。

真上さんは、自分の彼女でもないのに、また本能的に独占欲が沸いて来てやがるよ。


前回の真上さんの魔力が、まだ心の中に残留してやがるな……こりゃあ。


ヤベェ。



「そうでしたか。でわ、お互い、まだ、待ち人来ずな訳ですね」

「そうッスね。……あぁ、それはそうとして真上さん」

「はい。なんでしょうか?」

「あの、真上さんって【奈緒グリ】とか聞くんッスか?」


奈緒さんにチケットを貰ったから、この場に来ただけなのかの?


って言うかな。

真上さんが奈緒グリを聞いてるイメージが、あんま湧かないんだが……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


奈緒グリのライブを観戦しに、やって来ました東京ドーム♪

そしてそこでは『真上さんと再会する』っと言う事態に遭遇したのですが。

彼女も倉津君同様に、奈緒グリのライブを見に来たと言う事。


ですが、どうやら「真上さんが奈緒グリを聞いてるイメージが湧かない」様なのですが。

果たして、真上さんの好む音楽とは、一体、どの様な音楽なのか?

そして倉津君の持つ、真上さんの音楽の好みのイメージとは?


次回はその辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る