第4話 コロコロでガッポガッポですわ!!(後編)
「ちょっと、きゅうになにするんですのカイチュー」
『俺もやりたくなっちゃった』
「わたくしまだやってませんわ!!」
カイチューは私の右腕を勝手に動かしてサイコロを投げたのですわ。勝負には勝ちましたけど、私もサイコロ投げたかった……
マムシさんはお椀の中のサイコロを回収し、無理やり作ったような笑顔を見せる。
「……ひ、ひひ。すごいね~お嬢さん。ひひ……」
「勝ちは勝ちだろ。ほら、早く払えよマムシ」
「……っち」
店主に催促されたマムシさんは、袋から1000ジェニー分の銀貨を渡してくれましたの。これで2000ジェニーですわ!
「次……次よ次。次はどれくらい賭けるえ?」
「えーっとつぎは……」
「運がよかったのはわかるが、もうここまでにするんだお嬢ちゃん。マムシは一回相手に勝たせて、そのあとじっくり搾り取るっていう悪質な戦法を……」
「あと2000ジェニーですし、2000かけますわ!!」
「……」
私は今勝ち取った1000ジェニーを即座に前に置く。これで勝てばおしまいですわ! 早く私にもサイコロを投げさせてくださいまし!
「ひ、ひ……」
マムシさんは一投目と違い、なにやら真剣な目つきでサイコロを投げる。
『お、456賽じゃん』
「シゴロサイ……ってなんですの?」
「ひ!?」
『出目を細工したサイコロのことだ』
「ふう~ん」
サイコロはコロコロと転がり、4,6,6と先ほどよりも高い目が出ていた
「合計14だえ……ひぃ……」
そう言うとマムシさんはすぐさまサイコロを回収し、私に渡してくる。私はそれを手元でじっと見つめる。
カイチューが言うには出目が細工されたサイコロらしいんけれど、よく見ても普通のサイコロにしか見えませんわ。
「ただのサイコロですわよ?」
『そりゃそうだ、お前に渡すわけないだろ』
「そうなんですのね、よくわかりませんわ」
「お、お嬢さん……どうかしたかえ?」
「なんでもありませんわ。わたくしのばんですわね!!」
そんなことよりもサイコロ転がしチャンスですわ!! 先ほどはカイチューに邪魔されましたが、今度こそ私が投げられますわ!!
「つぎこそわたくしがふりますわよ!! いいですわね!!」
『はいはい』
「せいや!!」
『……ほい』
「あ、あれ?」
またも腕の感覚がなくなり、勝手にサイコロを投げる。先ほどと同じように転がって、賽の目は当然のように666を示す。
「ひっ……あ、ありえん。2連続で6ゾロ……!」
「や、やったー! アリンお嬢様、やりましたね!!」
「……マジかよ。お嬢ちゃん、すごいな!」
マムシさんは見るからに動揺し、店主とクロミは喜んでいる。だけど、私はこの結果に満足していませんでしたの。
マムシさんが袋から2000ジェニーを取り出し、渡してくる。
「お嬢さま、これで4000ジェニーになりました!」
「……むぅ」
「じゃあ、わしはここで……」
「おまちになって!!」
「ひぃ!」
そそくさと帰ろうとするマムシさんを私は呼び止める。マムシさんは何を言われるのかとビクビクしながら顔を向けた。
「もういっかいやりますわよ!! わたくしがまだまんぞくしてませんわ!!」
「……ひ?」
「ええ!?」
その言葉にマムシさんは驚愕と絶望が混じった表情になる。ついでにクロミも。
「ま、まだやるのですかお嬢様!?」
「とうぜんですわ!」
だって……だって、カイチューばっか投げて、まだ私が投げれてないんですし!
「い、いや、わしには手持ちが……」
「おいおいおい、無いなんて言わせないぜマムシさんよぉ。そこにてめえがたんまり蓄えてるってのは、誰でも知ってることだ。ほら、席につけ」
「そ、そんなぁ……!」
「今までのツケを払う時がやって来たんだよ。それがこんなお嬢ちゃんにってのは、予想外だったけどな」
「なんのはなしですの?」
「マムシさんはお嬢ちゃんとの勝負がやりたくてたまらないってさ」
「そうなんですのね! ちょうどよかったですわ!!」
よかった、マムシさんもサイコロ転がしまだやり足りなかったんですのね!
「さあやりますわよ!! 4000ジェニーかけますわ!!」
「お嬢様ぁ! おやめください~~!!」
~~以下、ダイジェスト~~
「てりゃ!『ほい』あ、また! もう、カイチュー!!」
「ひぃ! じゅ、10連続6ゾロ……!?」
~~~
「もういっかい!! もういっかいですわ! そい! あれぇ?」
「ひ、ひひ、ひひひひひ。すごーい、666だぁ……」
~~~
「こんどこそ! ふん!」
「……」ブクブクブク
「あれ、マムシさん? おーい」
結局マムシさんのお金と精魂が尽き果てるまでサイコロ勝負をしましたの。マムシさんが持っていた金額は5万ジェニーもありましたが、4000ジェニーだけ受け取って残りは被害者の人たちに返してあげてと店主の人に頼んでおきましたわ!
「本当にいいのかいお嬢ちゃん。これは君が勝ち取ったお金だ」
「いいんですの! もくてきはたっせいしましたので!!」
『もったいねえな。それだけあれば俺が有効活用してやるのに』
「たのしかったのでそれでまんぞくしてくださいまし!! お~ほっほ!!」
なんやかんやありましたが、無事にお目当ての髪飾りは手に入れましたわ!
サイコロ転がし、楽しかったですわ!!
「マムシさんも、きょうはありがとうですわ!! またあいましょうね!!」
「いやだぁ……もう6は見たくない……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます