第三十三話 組織

川名組と桐口組のゲームより一日前、千葉では加納組と森葉組とのゲームに決着がつき、千葉をとったのは加納組であった。


「俺らも動くとするか、なぁ、亜久津。」


とある一室のソファに座ってスマホを見ているスーツ姿の白と黒が交互に入り交じっている髪の男が同じくソファに座っている横の男の名前を呼んだ。


「そうしよう。」


阿久津と呼ばれたその男の声は強弱の無い、下手な声優が当てたかのような感情が感じられない不気味なものであった。


「じゃあ、動くぞ。」


スーツ姿の男がソファから腰を離し、部屋を出る。それに続き、阿久津も同様に部屋を後にした。





森葉組とのゲームに勝利し、千葉一の組となった加納仁かのうじんは組長室にある椅子に座り、机の上に置いてある資料に目を通しながら次の計画を考えていた。


(森葉組を倒したことで俺の組は千葉一となったことで、加納組を狙う輩が増えるだろう。)


机に置いてある資料の中から桐口組に関する資料を手に取る。


(問題は桐口組だ。桐口組が千葉を狙っているという情報は前から手に入れていたが、今まで攻めて来なかったのは森葉組と俺の組の二つの組があり、二つの組が争っていたからだろう。今は川名組とかいう組とのゲームがあるから直ぐには攻めては来ないと思うが、おそらくそのゲームが終われば次は俺達の番。)


桐口仁が思考を巡らせていると、唐突に組長室の扉をノックする音が響き渡った。


「加納組長。」


(この声は若頭の佐川か。)


「入って来ていいぞ。」


その言葉を確認したのか、佐川は思いっきり組長室の扉をひらいた。


扉の先にいた佐川は何か焦っているように加納の目にはうつった。


「組長。」


佐川は部屋に入るなり、一直線に加納の座っている椅子に向けて歩みを進める。


「そんなに焦ってどうした。」


偉く焦って見える佐川を落ち着かせるような柔らかい口調で言葉をかけた。


「それが、間鳥組が来てまして、」


「は?」


思いもよらない出来事に加納の口から間抜けな声がでてしまった。


(千葉に新しく出来たぽっとでの組が加納組に何の用があるんだ?)





「我々に何の用ですか?」


間鳥組の組長である間鳥明まとりあきらとそのギャンブラーである亜久津成義あくつなりよしを組長室に招き入れたのであった。


「まずは、千葉一となったことに拍手を送ろう。」


パチパチパチパチパチパチ。


間口組の組長である間口明は部屋中に響き渡る程の拍手をした。


「加納組に何の用ですか?」


間口明の拍手を無視し、先程よりも語気を強め、改めてここに来た目的を聞く。


「そんなに怒らないでくれよ。」


ヘラヘラとした態度をとりながらここに来た目的を話し出す。


「加納組に来た目的は、」


加納仁は固唾を飲みながら続きの言葉を待つ。


「あぁ、その前に、加納組には謝らないいけないな。」


間口明は唐突にそんなことを言い出し、手を手前にして、合掌した。


「ごめんな。」


謝罪をし、軽く頭を下げた間口明に加納仁は困惑し言葉さえも出てこなかった。


(なっ、何をやっているんだこの男は!?)


そして、頭をあげた間鳥はそのまま続きを話し出す。


「加納組を無くしてしまって。」


「なっ、」


加納仁はその言葉に絶句した。だが、その後すぐさま正気を取り戻した。


「それは、加納組にゲームを挑むということですか?」


その言葉に間鳥明は首を縦に振って答えた。つまりYesだと。


(どうして今の時期なんだ?この後にも桐口組とのゲームも控えていると言うのに。)


「ゲームは3日後。それでどうだい?」


(加納組をとって千葉一になるつもりか。舐められたものだな。こんなできたばかりのヒヨコのような組に加納組がとれるとでも思っているのか。)


「それでいい。舐めたヒヨコはここで潰して置かないとな。」


先程までの人物とは人が変わったかのように語気を強めながら間口明に向けて言葉を放った。


なんだかんだあり、3日後の間鳥組とのゲームの時がやってきた。


加納組のギャンブラーであり、森葉組を下した男である沖合颯翔おきあいそうとと間鳥組のギャンブラーである亜久津成義とのゲームが今、始まった。





桐口組とのゲームから数日が経ったある時、組長に組長である川名春吉と若頭である岩田叡山が2人してとあるDVDを見つめていた。


「組長。あからさまに怪しいです。直ぐに捨てるべきではないでしょうか。」


そのDVDは先程、川名組に送られてきた。送り出し人不明の謎のDVDであった。


「でも気になるからな。」


川名春吉がそのDVDを見るかどうかを悩んでいると、川名の脳裏に捨てる予定であったもう使わないDVDプレイヤーのことがうつる。


「あれがあったじゃないか。」


岩田叡山にそのDVDを渡し、どこかに走り出して行った。


それから数分が経った時、古いDVDプレイヤーを抱えた川名春吉が戻ってきた。


「これで再生すれば大丈夫でしょ。」


DVDプレイヤーをこっちに見せながらニコリと笑ってみせた。


「そうですね。」


「じゃあ、早速再生してみよう。」


DVDプレイヤーの蓋をあけ、そこに岩田叡山の持っているDVDをセットしなのち、再生をする。


ジジ、ジジジ。


そんな音ともにDVDプレイヤーの画面から光が発した。


画面には椅子に座っている男とその後ろに立っている男の計2人の男が存在していた。


「俺は、」


画面の中の椅子に座っている男が話し始める。


「間鳥明。間鳥組組長だ。俺らは、先日加納組をゲームで負かし、千葉を手に入れた。」


間口明という男から語られた話しはDVDを見ている2人を驚愕させた。


「俺らは関東地方の頂点にたつ。川名組、神崎組の皆様にはその礎となってもらおう。まず初めに川名組をとる。その後は神崎組だ。俺らがお前たちを蹂躙するから楽しみにしておけよ。」


そこでDVDは終わった。

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