第二十五話 ポイズンアンドホーリー

「それでは、ポイズンアンドホーリーのルール説明をさせていただきます。あぁ。すみません。」


ルールを説明しようとした黒服の男は何かを思い出すような仕草をする。


「まずその前に自己紹介をさせていただきます。今回のゲームを取り締まることになりました。ゲームマスターの林と申します。」


白い手袋をした手を腹部の斜め前に置き、頭を軽く下げた。


「今回行うポイズンアンドホーリーはクオーターランクには珍しいレベル5のゲームでありますのでお気を付けてください。それでは今度こそ、ポイズンアンドホーリーのルール説明をさせていただきます。まずお2人には8枚のカードを配らせてもらいます。」


すると、2つの机の中央が開きそこから8枚のカードが飛び出してくる。


「素晴らしいですね。カードも白とは、運営の方はわかってらっしゃいますね。」


傍から見ても嬉しそうなのが伝わるほど、君塚渉は喜びに満ち溢れていた。


「お二人のカードは全て同じであり、1~6の数字が書かれたカードと聖杯と注射器が描かれたカードがそれぞれ1枚ずつあります。このゲームはA《アタック》側とD《ディフェンス》側に別れて行い、まず初めにA側が四分間の間に裏でカードを机の上にあるくぼみにセットし、その後同じようにD側も四分間の間にカードをセットします。両者がセットし終えた後、私の合図でカードをオープンし、数字の差×0.1mlの量の毒がD側のタンクに溜まります。これを1ターンといい、1ラウンド8ターンで構成されています。話は変わりますが、この毒は特別性でして、0.9mlまでなら人が死ぬ程の害を及ぼしません。ですが、1ml以上摂取してまうと、大変なことになってしまいます。運が良ければ助かるかもしれませんが。」


次にゲームマスターは四角い機械からむき出しになっているタンクを指さして説明した。


「それをA側、D側交互にやっていき、手札を全て使い切ったらそのラウンドが終了となり、5分間の休憩の後、またお互いに8枚のカードが配られ次のラウンドが開始します。ですが、あのタンクには1mlまでしかはいりません。もし、タンク内の容量を超えてしまうとタンク内にある毒が全て自身の体内に入ってきてしまい死んでしまいます。それを防ぐのが聖杯と注射器のカードでございます。聖杯カードが出された場合、A側、D側関係なく相手の出したカードの数字に応じた聖水を毒のタンクとは別の聖水のタンクに流し込みます。正確に言いますと相手が1.2のカードを出した場合は0.1mlの聖水が3.4のカードだった場合は0.2mlの聖水が5.6のカードだったら0.3mlの聖水がタンク内に溜まります。次に注射器カードです。注射器カードは出した瞬間に自身の毒タンクと聖水タンク内のものを全て体内に注入するカードとなっております。ただし、毒タンク内に毒がない時に使ってしまった場合、無条件で0.1mlの毒が注入されるので注意してください。」


ゲームマスターは一呼吸おき、続きを話し始める。


「もしそのラウンドが終わった時、毒タンク内に毒が残っていた場合、次ラウンドに持ち越しになりますが、次ラウンド開始前にタンクを2つとも新しいものに交換してしまいますので、次ラウンドで初めて毒が自身の毒タンクに溜まった時、前ラウンドの毒もプラスして溜まります。聖水も同様です。この説明だけだと分かりづらいと思いますので、例えば、前ラウンドに0.2mlの毒が残っていたとします。そしてこのラウンド初めてのD側で相手が3のカードを自身が4のカードを出したとしましょう。本来この場合、0.1mlしか毒タンク内に毒がたまりませんが、今回は、前回の毒と合わせた合計0.3mlの毒が溜まってしまうというわけです。」


ゲームマスターは無数に設置してあるカメラを順々に見ながら話し続ける。


「これだけでは味気ないと感じた人もおられるかもしれないので、ここで少量のスパイスを入れたいと思います。それは、毎ラウンド終了時、お互いのタンクに0.1mlの毒が流し込まれるというものです。まぁ、この0.1mlは次のラウンドに持ち越しになりますがね。それでは最後に勝利条件についてお話致します。勝利条件は、どちらかが死亡した時、又は続行不可能な状態になった場合、カードを時間以内に出せなかった場合敗北となります。最後に何か質問とかありますか。」


「じゃあ、いいかな。」


椅子に座っている阿黒賢一が手を挙げる。


「なんでしょうか。阿黒様。」


「前ラウンドに0.2mlの毒が残っていたとして、今回のラウンドで自身のタンクに何も無い状態で注射器を使用した場合はどうなるのかな。」


「はい。その場合、0.1mlの毒が体内に注入され、前ラウンドの0.2mlの毒は自身の毒タンクが溜まった場合にプラスして溜まります。」


「もうひとついいかな。」


続けて質問をする。


「なんでしょう。」


「両者が聖杯カードを出した場合ってどうなるのかな。」


「その場合、両者共に0.1mlの聖水が溜まります。ちなみに注射器と聖杯でも、同じよう0.1mlの聖水がたまります。」


「把握した。」


ニコリとした笑みを顔に浮かべながらゲームマスターである林を見る。


「他に何か質問はありませんか?」


阿黒賢一と君塚渉のことを順々に見つめ、質問がないことを確認するなり、開始の合図をはじめた。


「それでは、これより『ポイズンアンドホーリー』を開始致します。」




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あとがき

ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。これからもっと面白くしていきます。

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