第五話 入口

(お前のセットしたカードは、3だな。)


阿黒賢一のセットしたカードの裏面にえがかれているマークを見て獅子川宗隆はセットしてあるカードを知る。


「じゃあ、俺もセットするか。」


軽い手つきで自身の手札にある1のカードをセットした。


「両者カードセットが完了致しましたので、第三ラウンド、1セット目のカードオープンです。」


担当の合図と時を同じにして阿黒賢一と獅子川宗隆は自身のセットしたカードを表にした。


阿黒賢一:3

獅子川宗隆:1


「阿黒賢一様が3、獅子川宗隆様が1でした。第三ラウンド、1セット目を獲得したのは獅子川宗隆様です。」


その結果に阿黒賢一は読みが外れたかのような表情をとる。


(おまえの読みは当たってるよ。だが、イカサマは一つだけじゃないんだぜ。)


「さぁ、次は俺の番だな。」


(俺がセットするカードはなんだっていいんだよなぁ、どうせ2セットは絶対に俺のもんなんだから。)


獅子川宗隆は何も考えずにテキトウにカードをセットした。それから数十秒おくれて阿黒賢一も同様にカードをセットする。


「両者カードセットが完了しましたので、第三ラウンド、2セット目のカードオープンです。」


担当の合図とともに両者共にカードを表にする。


阿黒賢一:2

獅子川宗隆:2


「阿黒賢一様が2、獅子川宗隆様も2でした。第三ラウンド、2セット目は引き分けとなります。」


ゲームを見ている全員に聞こえるほど大きな声をはなつ。


「おいおい。もうあとがないぜ。」


ニヤニヤとしながら阿黒賢一の方に目をやる。


阿黒賢一はもうあとがないため、真剣に自身の手札を見つめたかと思えば周りをキョロキョロとし、そしてまた自身の手札を見つめる。


(イカサマの正体を見つけるために周りをみているのか、だが、意味ないぜ。なんたってイカサマの種はお前が持っているそのカードの裏面にあるんだからな。しかも、特殊なメガネをつけた俺にしかそのマークは見えねぇ。お前がイカサマに気づくことなんて絶対に有り得ねぇんだよ。)


数分もの間悩んだのち、ゆっくりと机の上にカードをセットした。


『阿黒賢一の出したカードがわかりません。』


(やっぱりな。だが問題ない。あいつのセットしたカードはこのメガネで見れるんだからな。)


阿黒賢一がセットしたカードの隅をじっくりと見つめる。


(1か。だったら俺が出すカードはジョーカーだな。)


獅子川宗隆は悩む素振りを見せながら少しの間をあけたのち、カードをセットした。


「それでは、両者カードセットが完了したみたいですので、第三ラウンド、3セット目のカードオープンです。」


担当の掛け声と同時に各々がセットしたカードを表にする。


阿黒賢一:1

獅子川宗隆:ジョーカー


「阿黒賢一様が1、獅子川宗隆様がジョーカーでした。獅子川宗隆様は先程セットしたカードが2でしたので、このセットを獲得したのは獅子川宗隆様です。これにより、第三ラウンドは、引き分けと獅子川宗隆様の2勝という結果となりましたので、第三ラウンドの勝者は獅子川宗隆様です。」


掛け金の合計900万が獅子川宗隆様のものになった。


第三ラウンドが終了した時、阿黒賢一が唐突に獅子川宗隆にとある提案を投げかけてきた。


「ひとつ提案があるんだけど、いいかな。」


「なんだ?」


少しドスの籠った声で答える。


「フォースのルールの22を無効にしないかな。」


獅子川宗隆が阿黒賢一の提案の意味を理解するのに時間はかからなかった。


(あぁ、なるほどこいつは負けを取り戻したいのか、今のままだと50万しか賭けることしかできない。だが、ルールの22を無効にすることが出来れば、いくらでもかけられるというわけか、コイツは思った以上にいいカモだな。いいぜ、その提案受けてやるよ。そして、お前を破産させてやる。)


「いいぜ、その提案受けてやる。」


そういうと獅子川宗隆は新しい契約書をすぐさまつくり、その場でサインをした。無論、阿黒賢一もサインをした。そして、この決断が獅子川宗隆を地獄に落とすことになるとはこの時の獅子川宗隆は思いもしていなかった。

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