第三話 フォース
「とても簡単なゲームだぜ。その名もフォースだ。」
獅子川宗隆はこのフォースというゲームで12連勝をしている。
「フォースは、これらのカードを使ってやるギャンブルだ。」
テーブルの上に置いてある8枚のトランプカードを手にもつ。
「これがルールを書いた紙だ。」
獅子川宗隆が阿黒賢一に1枚の紙を手渡す。
紙には以下のことが書かれていた。
~~~フォース~~~
1.このギャンブルは1~3のカードとジョーカーを二組ずつ使用する。
2.先攻後攻を何かしらの方法で決め、先攻が最初にベットを行う。
3.レイズまたはベットを行う際には最低でも100万以上でなければならない。
4.持ち金が100万以下になってしまった場合、残りの全額を賭け、もう一方がそれと同額を賭ける。
5.このギャンブルは全4ラウンド行われる。
6.ギャンブルの1ラウンドの主な流れは、ベット→コールorレイズorドロップ→コールorドロップ→カードセット→カードオープン→カードセット→カードオープン→カードセット→カードオープン→カードセット→カードオープンである。
7.カードセット→カードオープンの流れを1セットといい、1ラウンド4セット行う。
8.カードセットの順番は最初に先攻→後攻の順で行い、次のカードセットは後攻→先攻の順で行う。これを交互に繰り返していく。
9.後攻でドロップをした場合、100万を相手に払う。
10.先攻でドロップをした場合、ベットした賭け金を相手に支払う。
11.ドロップした場合、先攻後攻を入れ替え次のラウンドを行うのではなくもう一度同じラウンドを行う。
12.カードオープンでは、カードの数字が高い方が勝利する。また、同じ数字の場合引き分けとなる。
13.カードの強さは、1が一番弱く3が一番強い。だが、1のカードは3のカードにのみ勝つことが可能である。
14.ジョーカーは自身が前にセットしたカードと同じ数字になる。だが、一番最初にジョーカーをセットした場合、ジョーカーの数字は0として扱う。0のカードは全てのカードに勝つことが出来ない。
15.手札に存在するカード全てを使い切り、勝敗が決まった場合そのラウンドは終了し先攻後攻を入れ替え、次のラウンドに移行する。
16.ラウンドで最も多く勝利した者が今回の賭け金を得ることができる。
17.ラウンドで勝敗がつかなかった場合卓上にだされた賭け金はそのまま残し、またベットからやり直す。
18.ベットからやり直しになった場合、ラウンドは流れるのではなく、先攻後攻を入れ替えもう一度同じラウンドを行う。
19.同じラウンドをもう一度行ったラウンドでドロップする場合、先攻であったのならばベットした賭け金+元々あった賭け金を支払う。後攻でドロップした場合は100万+元々あった賭け金を支払う。
20.両プレイヤーは4ラウンドで最低でも合計1000万はかけなければならない。
21.4ラウンド全てが終了するとフォースも終了となる。
22.片方のプレイヤーの賭け金が0を下回った場合、フォースは終了する。
23.ベットやレイズ、コール、カードセット、カードオープンなどをする際、五分を経過してもそれらの動作を行わなかった場合、強制的に100万を相手に支払い、またベットから同じラウンドを繰り返す。
(理解出来ねぇだろ。それもそうさ、なんたってワザと理解するのが難しいように説明しているんだからな。)
「ルールはわかったか?はやくはじめようぜ。」
(急かすとだいたいの奴はわかってねぇのにゲームをはじめちまう。まったく馬鹿だよなぁ。)
「把握した。はじめよう。」
(ほらな。)
「じゃあ、その前にその紙にサインしな。俺は既にサインしてある。」
獅子川宗隆が自身のポケットから取り出したペンを阿黒賢一の目の前に突き出す。
「これにサインすればいいんだね。わかった。」
流れるかのように阿黒賢一はフォースのルールの書かれた紙の一番下にあるサインをするところにサインをする。そこには、獅子川のサインも書かれていた。
「じゃあ、カードを配るぜ。」
阿黒賢一のサインを確認した後、獅子川宗隆が持っている8枚のカードのうち4枚を阿黒賢一に渡す。
「先行後攻選ばせてやるよ。」
「お言葉に甘えて、先攻にしようかな。」
阿黒賢一は悩みもせずに先攻を選んだ。
(こいつは意外だな。大抵の奴は出方を伺うために後攻を選ぶものだが、まぁ、いい。)
このテーブルの担当である黒スーツの男性が声高らかに宣言をする。
「ではこれより獅子川宗隆様と阿黒賢一様によるギャンブル。フォースを開始致します。」
こうしてフォース、第一ラウンドが幕を開けた。
「じゃあまずは、これくらいかな。」
阿黒賢一が100万をベットする。
(まぁ、そうだよな100万だよな。初めてのゲームでいきなり大金はかけられない。だから最低の100万しかないわな。)
「レイズ100万。」
(さぁ、どうする。のるのか、のらないか。)
「う〜ん、コールしようかな。」
(こいつは馬鹿だ。はやくも200万ゲットだぜ。)
卓上に200万ずつ、合計400万がだされた。
「さぁ、好きなカードをセットしな。」
「そうさせてもらおうよ。」
鼻歌をしながら阿黒賢一が手札にある一番右のカードを卓上にセットする。
(やっぱりコイツは馬鹿なカモだ。俺がイカサマしているのにも気付かないマヌケ。お前の手札はお前の後ろにいる俺の部下がきっちりと見ているんだよ。万が一イカサマがバレたとしてもお前がサインしたルールにはイカサマを咎めるものは何一つ書いてないから俺は無傷なんだよなぁ。)
長い髪に隠されている左耳には髪色と同じ金色の小さなワイヤレスイヤホン型の無線機がついていた。
『阿黒とかいう男は2のカードをセットしました。』
(お前のセットするカードは全て俺に筒抜けなんだよ。ハハッ。やべぇ。笑いがついついこぼれちまう。)
「俺もセットするかな。」
笑いを表に出さないように隠しながらカードをセットする。
「両名カードをセット出来ましたので、カードをオープンして貰いましょう。」
担当がゲームを観戦している人達に向けて声高らかに宣言をしたのと同時に二人が自身のセットしたカードを自分の手で表にかえした。
阿黒賢一:2
獅子川宗隆:3
「阿黒賢一様が2、獅子川宗隆様が3ですので、第一ラウンド、1セット目を獲得したのは獅子川宗隆様です。」
担当が獅子川宗隆が1セット獲得したことを声高らかに宣言した。
「今回は俺の勝ちだな。」
「あちゃあ、負けちゃったよ。じゃあ、次は獅子川さんの番だね。」
負けたのにも関わらず悔しさの欠片も見せずに獅子川宗隆に向き合う。
「あぁ。そうだな。」
獅子川宗隆はなんの迷いもなく自身のカードをセットした。
「どれにしようかな。悩むなぁ。」
(おぉおぉ。悩んでる。悩んでる。まぁ、悩んだところで結果は変わらないがな。)
数十秒の間をあけた後、阿黒賢一もカードをセットした。
「それでは、二回目のカードオープンです。」
担当が宣言したのと同時に阿黒賢一と獅子川宗隆が自身のカードを表にする。
阿黒賢一:3
獅子川宗隆:ジョーカー
「阿黒賢一様が3、獅子川宗隆様がジョーカーです。獅子川宗隆様は前回3のカードをだしていたのでジョーカーは3となります。これにより第一ラウンド、2セット目は引き分けとなります。」
「おぉ。今回は引き分けだったな。」
(ハハハハッ。このラウンドは俺の勝利だな。このマヌケ。)
「そうだね。次は俺の番だよね。」
「あぁ。そうだぜ。」
阿黒賢一は先程とは違い一切迷わずにカードをセットする。
『阿黒賢一は3のカードをセットしました。』
小型のワイヤレスイヤホン型の無線機から部下の声が聞こえる。
「次は俺の番か。」
(まぁ、セットするカードは決まっているが、悩むフリでもしとくか。)
少しの間をあけたのち、カードをセットした。
「第一ラウンド三回目のカードオープンです。」
先程と同じように両者カードをオープンする。
阿黒賢一:3
獅子川宗隆:1
「阿黒賢一様が3、獅子川宗隆様が1をセットしていましたので、第一ラウンド、3セット目は獅子川宗隆様が獲得致します。これにより、第一ラウンドは引き分けと獅子川宗隆様の2勝になりましたので、第一ラウンドの勝者は獅子川宗隆様になります。」
獅子川宗隆の勝利を先程と同様に声高らかに宣言した。
「また、俺の勝ちだ。これでこのラウンドは俺のものだな。」
「そうだね。」
「第一ラウンドをおとしたってのにえらく余裕そうじゃねぇか。」
「まあね、まだ第一ラウンドだしね。」
(第一ラウンドだけじゃねぇよ。これからのラウンドずっとお前は俺に負け続けるんだよ。)
「その余裕が最後まで持てばいいなぁ。」
まだまだ余裕そうな阿黒賢一の顔を睨みつける。
「それはお互い様だよ。」
これで阿黒賢一がこのラウンドで勝利することは不可能となったため、第一ラウンドは獅子川宗隆の勝利で幕を下ろした。
(お前は絶対に俺に勝てねぇ。ここからお前にとっての地獄がはじまるぞ。1000万全てを失うことになるんだ。覚悟しておけぇ。)
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