第二話 出会い

『ラ・ラポーネ』は普通の裏カジノではない。『ラ・ラポーネ』はある程度のお金があれば誰でも入れる裏カジノであり、『ラ・ラポーネ』内には3つのエリアが存在している。


ここが他の裏カジノと違うところである。1つ目のエリアはノーマルエリア、ここでは一般的なギャンブル、ポーカーとかルーレットなどを行うことが出来る。2つ目のエリアはオリジナルエリア、ここでは名前の通り『ラ・ラポーネ』オリジナルのゲームでギャンブルをする。最後に3つ目のエリア、その名もクリエイティブエリア、ここは特殊で、まぁ、オリジナルエリアも特殊だったけど、それよりも特殊なエリアで、このエリアの壁際にはトランプやらなんやらのギャンブルに使えそうな道具がびっしりと並んでいる。さらに、数台のテーブルが設置してあり、テーブル一台につき一人の担当がついている。このエリアにはゲームのルールが存在せず、ここでギャンブルする二人がルールを作って合意のもとギャンブルが行われる。ギャンブルで負けた人が合意を無視してお金を払わない可能性があるため担当が設置されているらしい。


なぜこんな特殊な裏カジノに川名春吉が足を運んだのかと言うと、まぁ、言わなくてもわかるとは思うが、陣間組と闘えるギャンブラーを探すためにほかならない。


『ヴレ・ノワール』の提示するゲームは毎戦ごとに違う内容になる。しかもそれら全てがオリジナルのゲームだ。


普通の裏カジノでポーカーが強いギャンブラーをつかまえたところで、そいつはポーカーというゲームを深く理解しているから強いのでまあって、『ヴレ・ノワール』が提示するオリジナルのゲームが強いわけではない。俺らが今求めている人材は初見のゲームでも強い人間なのだ。


そんな人材を見つけるのにオリジナルエリアやクリエイティブエリアの存在する『ラ・ラポーネ』は最適なのだ。


川名春吉は『ラ・ラポーネ』に入るなり、ノーマルエリアを素通りして、オリジナルエリアに足を運んだ。


だが、陣間組と闘えそうな人材は誰一人としていなかった。川名春吉は今日もいないか、と落胆しながらも一部の望みにかけて、クリエイティブエリアに足を運んだ。


川名春吉が足を運んだクリエイティブエリアの一角に人だかりができていて、異様に盛り上がっていた。


これは期待できると思った俺はその盛り上がりの正体を目にするために人という人をかき分けながら進むと盛り上がりの中央にいる一人の男、金髪で長髪のメガネをかけている男に出会った。


なんでクリエイティブエリアがこんな盛り上がっていたのか周りにいる人達に聞いみたら、その男の名前は獅子川宗隆ししがわむねたかと言うそうで、その男が今日だけでこのクリエイティブエリアで12連勝してるって言われた。普通はありえないことで、相当な実力があるか、それともイカサマか、イカサマであったとしても12人全員に気づかせないほど高度なイカサマをつかうことが出来るということだ。


俺は獅子川宗隆に組の存亡をかけるべきかどうかを悩んでいた時に後ろから一人の黒髪、黒スーツ、赤目の男がやってきて、獅子塚宗隆に向かって言葉をはなった。


「君、とても強そうだね。俺とギャンブルしない?」


唐突にやってきた見ず知らずの男が12連勝もしている獅子川宗隆にゲームを挑んできたんだ。周りに群がっている人達は目の前で獅子川宗隆の実力の高さを見せつけられていたのか、その男を必死にとめていた。「やめた方がいい。」とか「彼はすごく強いんだ。なんたって10連勝以上しているんだぞ。勝てるわけない。」とかね。


だけど彼は聞く耳を持たずに獅子川宗隆のことをじっと見つめていた。


「1000万だぞ。」


その男に向けて獅子川宗隆が口を開き、淡々と言葉をはなった。


「それって現金じゃなくてもいいのかな。」


「あぁ。現金に替えられるならなんでもいいぜ。」


「それならあるよ。」


「そうか、それならうけてやる。ただし、ルールはこっちが決めさせて貰うぜ。なぁに心配するなそっちが不利になるようなルールにはしねぇよ。それでいいか?」


「いいよ。」


獅子川宗隆が黒髪、黒スーツ、赤目の男の勝負にのってきた。周りの人達からは、あんなに止めたのにどうなっても知らねぇぞ。みたいな空気が漂ってくる。


阿黒賢一あぐろけんいち。君の名前は?」


阿黒賢一と名乗った黒スーツの男は右手を獅子川宗隆の前まで移動させる。


「獅子川宗隆だ。」


自身の前にだされた手を勢いよく握りながら自身の名前を口にする。


握手が終わると阿黒賢一は獅子川宗隆とテーブルを挟んで座った。


「獅子川さんね。把握した。」


僕はこの時から既に阿黒賢一が普通の人間じゃないことはわかっていたんだ。何故って、それは彼の纏う空気が常人のそれじゃなかったからだよ。


「それで、どんなゲームなのかな。」


「とても簡単なゲームだぜ。その名もフォースだ。」


これが俺と阿黒賢一との初めての出会いであった。この出会いをきっかけに川名組の運命は大きく動くこととなる。

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