第一話 裏カジノ
「う〜ん。」
スーツ姿の男が椅子に座りながら机に腕をのせて、俯いた頭をそれぞれ交差させた指の上に置きながら唸っていたのは、
最初は断ろうと思っていた川名春吉だったが、部下達からどうしてもと頭を下げてお願いされてしまったので、組長の座に着いた。
そんな男が何に悩んでいるのかと言うと、今、敵対している
「はぁ、どうしよう。」
川名組にはゲームをする有用なギャンブラーが存在しないのだ。何故ならば、先代と一緒にとある出来事によってなくなってしまったからである。ならば、なぜ今までこの組は存続しているのかと言うと、ここら辺というか、埼玉と群馬の両県の中で一番大きい組である。陣間組、いや、
赤坂晨人はとてつもない実力を持っており、川名組にゲームを仕掛けてくる輩をことごとく返り討ちにしていった。だから今まで存続できていたし、俺もそれに甘えていた。
そんな埼崎組が先日何者かによって乗っ取られ、陣間組という名に変わったのだ。そして、川名組にゲームを仕掛けてきた。
埼崎組を乗っとたのは、
「どうするか。」
ゲームは来週の水曜十三時からであり、今日が木曜だから、今日を合わせてもたったの6日しか猶予がない。
「本当にどうしたものか。」
そうやって悩んでいる間にも時間は刻一刻とすぎていく。そして、気づけば外は暗闇に覆われていた。
「もうこんな時間か。」
川名春吉の腕時計は21時を示していた。
「一応、今日も行くか。」
机の横に置いてある黒いカバンを手に持ち、部屋にある全身をうつすことの出来る鏡を使い軽く見出しを整えた後、組長室の扉を開き、組長室をあとにした。
廊下を歩いていると若頭である
「組長、どちらに行かれるのですか。」
「あそこだよ。」
その一言で岩田叡山は組長がどこえなにしに行くのかを悟った。
「こちらでもさがしてはいるのですが、あのレベルのギャンブラーはなかなかみつかりません。」
「そうだよね……。じゃあ、行ってくる。」
前までは俺が外に出ようとすると、護衛を何人も付き添わせようとした叡山だが、俺はそれがイヤだった。なぜなら、街でめちゃくちゃ見られ恥ずかしいから。まぁ、それ以外にもいっぱい理由はあるのだが。そんな感じで、もうしないでくれ、もしまだするって言うんだったら組長を辞める。と言ったところ、護衛を辞めてくれた。
「行ってらっしゃいませ。」
岩田叡山は川名春吉が視線からいなくなるやいなやズボンのポケットからスマホを取り出し、電話をかけ始めた。
「なんでしょうか。若頭。」
岩田叡山のスマホから若い男の声が響く。
「伊月、組長の護衛だ。」
「いつものやつですね。」
「いつも言っているが、絶対にバレないようにするように。」
「わかってます。」
そこで電話は終了した。
◆
外に出た川名春吉は組を出て、少し歩いたところでタクシーを広い、近くの駅に向かった。
駅に着いた川名春吉は東京行きの電車に乗のり、目的地の駅で降り、また歩みを進める。
歩いてすぐの時には人がたくさんいたが、歩いていくうちに人が少なくなっていく。無理もない。川名春吉が歩いている道は特に人の少ない裏路地なのだから。
そんな裏路地を進んで行くと、『ラポーネ』という看板のある四階建てのボロボロのびるが姿をあらわした。川名春吉は到着するや否やはなんの迷いもなく『ラポーネ』に足を踏み入れる。
ラポーネの中は外見よりはましだが、綺麗かといわれたら、首を横に振るくらいには汚かった。
そんなラポーネの中を歩いていくと奥にエレベーターが見えてきた。川名春吉はなんの迷いもなくそのエレベーターに乗り込むやいなや、階のボタンを4→2→3→4→1→1→4の順番で素早く押した。するとどうだろうか、エレベーターは上の階しかないはずなのにも関わらず下に進み始める。
チーン。
エレベーターの扉が音をたてながら開く。
扉の先には赤い絨毯が敷かれた廊下が存在しており、その先に1つの扉が設置されており、その手前には3人の黒服、黒サングラスの男性が立っていた。
川名春吉は赤い絨毯の上に足を乗っけながら、扉に向かって歩いていく。
今日こそ見つかるといいな。という一種の願望を抱きながら。
奥に設置してあった扉の上には『ラ・ラポーネ』と書いてある看板が設置してあった。
「会員証を提示してください。」
真正面にたっている黒服の男が話しかけてきた。
川名春吉はポケットに入っていた財布の中から『ラ・ラポーネ』の会員証を取り出し、黒服の男に手渡す。
会員証を手渡された黒服の男はスーツの内ポケットからスーパーのレジにあるバーコードを読み取る機械のようなものを取り出し、それを会員証にかざした。
ピコン。
そんな音が機械から発せられると、黒服の男が会員証をこちらに手渡しながら声を発する。
「どうぞ、お入りください。」
正面に存在する扉を川名春吉は手で押して、開く。
ガチャ。
扉の先で川名春吉を待っていたのは、裏カジノであった。そして、ここで彼と出会うことになる。『ヴレ・ノワール』で伝説となった彼と。
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