俺が普通の男だったら
「……結衣のことも、真奈と同じくらい好きだから、です」
「は?」
まだ早い。
そう、分かっているのに、俺はそう言った。
すると、案の定と言うべきか、ただでさえ消えていた真奈の表情が更に消えた気がした。
そしてそのまま、俺は真奈に押し倒された。
ご丁寧に痛くないように器用に。
「ま、真奈?」
痛みがないからこそ、逆に怖さが増したような気がして、俺は咄嗟に真奈の名前を呼んでいた。
「何、言ってるの?」
「い、いや……言った通り、そのままの意味、です」
恐怖は確かにあるけど、ここで引いたら俺は結衣とはそういう関係になれないと思い、そう言った。
かなりクソ野郎発言なのは分かっているが、結衣のことは絶対にもう惚れさせてしまっているし、今更結衣とは付き合えない、なんて本人に言えるわけが無い。
だから、俺はここでなんとか結衣を説得しなくちゃならない。
……まぁ、もちろん俺がハーレムを作りたいって野望があることは否定しないけどさ。
「ダメ。優斗には私がいるんだから、それで満足でしょ。他の奴なんて、要らない」
「ま、真奈が居てくれるのはもちろん嬉しいんだけど、さっきも言った通り、俺は結衣とも仲良くしたいんだよね」
……なんなら、最近もう一人俺のタイプな美少女を見つけてしまってるんだよな。
流石に、本当にそれは今言う訳にはいかないけど。
結衣だけでさえ、こんな感じになってしまっているのに、あろうことかもう一人そんな存在が居るだなんて言えるわけが無い。
そう思っていると、俺は押し倒されたまま、突然キスをされて、口を塞がれた。
「優斗は私の。私も、優斗の。何か、間違ってる? それ以外なんて、必要無いよね?」
「…………」
普通に、生きていくためにも、真奈以外の存在は必要だけど、そういう意味で言ってるわけじゃないだろうし、そもそも、今この状況で否定なんてしたら、ただでさえ怒ってるのに、火に油を注ぐようなものだ。
……そう、分かっていながらも、こんな世界じゃなければともかく、こんな世界で結衣を惚れさせてしまった責任を考えると、頷くことも出来ずに、俺は無言になってしまった。
「……そう。……なら、体に教えてあげる。私以外、いらないって」
俺がこの世界の普通の男だったら、いくら好きな人でも少しはマイナスなことを思ったかもだけど、俺は前世の記憶があって、この世界では普通じゃないし、真奈にそんなことを言われながらそういうことをされたら、普通にご褒美になってしまうぞ?
「……え、えっと、優しく、してね?」
そんなことを思いながらも、俺は性懲りも無くまだ無自覚な振りを続けようとして、そう言った。
もはやこれが無自覚な振りなのかはもう分からないけど、何も言わないよりはいいはずだ。
「ッ。おしおきってこと、忘れないで」
そうして、俺はまた、真奈に襲われた。
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