今は真奈の匂いでしょ?

 結衣との昼食を終えて、食器を返しに学食に行っている途中、ポケットに入れていたスマホが震えた。

 ……真奈が起きて、返信が返ってきたのか?

 正直、今すぐにでも確認したいけど、今は食器を持っていて、スマホを取り出せない。

 ……一応、地面に食器を置いたら確認できないこともないけど、別に後ちょっとで学食に辿り着くしな。


「今日も美味しかったです」


 そんなことを考えながら、学食に着いた俺は、そう言ってお姉さん達に食器を返した。

 こういうのって俺のイメージ的に普通おばさんだったりするんだけど、この世界じゃこれが普通らしい。


 みんな綺麗なお姉さんだけど、この世界の男的に目の保養にはならないんだよな。

 いや、俺はもちろんなるよ? 毎日めちゃくちゃ目の保養になってる。

 真奈や結衣……最近だと由菜もいて、みんな別格の美少女なんだけど、やっぱり美人な人って言うのは美少女とは別の感じで保養になるからな。

 ……うん。でも、多分だけど、俺だけなんだよな。この世界でこのお姉さん達が目の保養になるのって。

 事実、ここを利用している男たちでお姉さんたちに話しかけてるやつ、見たことないし、お姉さんも最初こうやって言った時めちゃくちゃ驚いてたし。


「え、えぇ、いつもありがとうね」


 どう考えても俺……というか、ここを利用している俺たちのセリフだと思うんだが、ここはそういう世界だ。

 俺はその人に微笑みを向けて、その場を後にした。

 俺が学食を出ると、何か学食の中がお姉さんたちの声で騒がしくなった気がしたけど、気のせいではないだろう。

 ……一応、俺以外の男もまだいたし、文句を言われなきゃいいんだけど。


 そう考えながら、廊下に出た俺は、スマホを取り出した。

 さっき着ていた通知を確認するためだ。

 ……こんな廊下で堂々とスマホなんて取り出していいのか、とも思うけど、もう今更だし、そこは気にしない。


【本当に知らないなら、そんな臭いなんてつかないから】


 ……本当にそんなに言うほどついてたのか? 結衣の匂いなんて。

 仮についてたとしても、普通にいい匂いだと思うけどな。

 ……やっぱり、ヤンデレだからか。


【仮に俺に誰かの匂いがついてたんだとしても、今は真奈の匂いでいっぱいでしょ?】


 そう思いながら、俺はそんな返信をした。

 実際、昨日そういうことをしたのは、真奈とだし、俺にはよく分かんないけど、今匂いがついてるとしたら絶対真奈の方だと思うからな。


【……うん。確かに、そうかも】


 少し時間を置いて、真奈からの返信が返ってきた。

 ちょっとチョロいな、と思いつつも、余計なことは言わずに、俺はそのまま適当な返信をして、時間的に教室に戻った。

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