三択

「じゃあ、またね、結衣」


「う、うん。またね、優斗くん」


 学校が終わり、放課後になった。

 俺は結衣とそんなやり取りをして、学校を出た。

 今日は結衣の匂い? なんかもついてないだろうし、真奈に何も言われないよな、と思いながら、俺は帰り道を歩いていた。

 この前は結衣に抱きついたりしてたから、匂いがついてるとか言われただけで、今日はそんなことないしな。


【今帰ってるけど、真奈、起きてる?】


【起きてるよ】‎


 そうして、真奈にそんなメッセージを送ると、いつも通り直ぐに返信が返ってきた。

 起きてるのか。……まぁ、そりゃそうか。流石に朝から今の時間までずっと眠っている、なんてこと、あるわけないもんな。

 そもそも、少なくとも昼には絶対起きてたしな。


【何か用だった?】


【用は無いんだけど、真奈が今どうしてるかが気になったから聞いただけだよ。迷惑だった?】


【全然迷惑じゃないから、大丈夫だよ!】


【そう? なら、良かった】


 匂いのことを気にしてたけど、これ、別に今日は真奈に会うことにはならなさそうだな。

 用事も無いし。

 ……いや、用事が無かったら会いたくないってわけじゃないけどさ。

 昨日そういうことをした相手だし、好きな子なんだから、会いたくないわけが無い。


 そんなことを思いながら、家の前まで帰ってきた俺は、そのまま普通に自分の家の中に入った。


「あ、優斗、おかえり」


「……ただいま」


 すると、何故かそこには真奈がいて、俺を出迎えてくれた。

 いや、なんで? 

 俺もなんか「ただいま」って言っちゃってるけど、なんで? 


「昨日、鍵を返し忘れてたから、返しに来たんだよ」


 あー、そういえば、俺、今日家を出る時、普通にいつもとは違う鍵を使ってたな。

 なるほどな。

 ……それならそれで普通にびっくりしたから、メッセージで言っておいて欲しかったけど、まぁ別にいいか。

 こんな美少女におかえりを言って貰えるなんて、嬉しいサプライズすぎる。


「そうだった。鍵、真奈に渡してたんだったね。忘れてたよ。わざわざありがとね」


 そう言いながら、玄関で靴を脱いだ俺は、真奈にさりげなくボディタッチをした。

 

「う、うん。大丈夫だよ。……あ、あのさ、優斗」


「ん? 何?」


「だ、抱きついてもいい? き、昨日みたいに、ギュッとして欲しいの……」


 真奈は顔を赤らめながら、そう言ってきた。

 

「うん。もちろんいいよ」


 だから、俺はそんな真奈の気持ちに答えるために、優しくそう答えて、真奈を抱きしめた。

 それと同時に、ポケットに入れていたスマホが振動した。


「……優斗、今の通知、何?」


「え? あー、友達からのメッセージだと思うよ」


 俺の登録してある連絡先的に、誰からの連絡かなんて三択だ。

 結衣と由菜、そして母さんだ。

 ……母さんなら問題ないんだけど、結衣と由菜は大丈夫か? いつかは言うつもりだけど、まだ真奈に言うのは絶対早いぞ? ……大丈夫、だよな?

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