一旦、見なかったことにするか
「そういえば、由菜ってクラスどこ?」
学校に着いたところで、俺は由菜にそう聞いた。
今更だけど、俺、由菜のクラス知らないし。
「……三組だよ」
すると、由菜は素直にそう言ってくれた。
……反発してくる時とこうやって素直になってくれる時の違いが全然分からないけど、まぁ、可愛いから別にいいか。
「そっか、じゃあ、俺は一組だから、またね」
「……別に私はお前とまた会いたくなんて無いし」
「それでも、またね」
「……また」
「うん」
そんなやり取りをして、由菜と別れた俺は自分の教室に向かった。
「あっ、優斗くん、お、おはよう!」
「あ、結衣、おはよ」
真奈とはそういう関係になれたけど、結衣とはまだだし、どうやってそういう関係に持っていけばいいんだろう。
肉体的関係が既にあれば、真奈も認めてくれるかもだし、出来れば早めにしておきたい。
……うん。考え方がちょっと……いや、かなりクズすぎるけど、もうそれは今更か。
と言うか、結衣ともしちゃったら、真奈にビッチだと思われたりしないかな。
別に大丈夫か。その為に……って訳では無いけど、無自覚な振りをしてるんだし、問題は無いだろう。
「あの後、大丈夫だった?」
「あの後?」
あの後って、どの後だ?
「何事もなく家に帰れた?」
「……えっと、家の目の前で別れたよね?」
「う、うん。でも、もしものことってあると思うから」
結衣が心配性なのか、この世界では普通のことなのか……まぁ、どっちでもいいか。
「心配してくれてありがとね。大丈夫だったよ」
「良かった……」
……その後に真奈に襲われてるんだけど、まぁ、あれはノーカウントだし、嘘は言ってないよな。
あれ、俺から襲わせたようなもんだし。
「そういえば、優斗くんはどこか行きたい場所とか、あるの?」
「今度行くデートの話?」
「う、うん」
俺がそう言うと、改めて理解したのか、結衣は顔を赤らめながら、頷いてきた。
デートの行きたい場所か。……んー、正直に言うと、結衣……に限らず、真奈でも由菜でも、その中の誰かが一緒に居てくれるのなら、正直どこでもいい。
「結衣が一緒なら、どこでもいいかな」
「う、うん……わ、私も、優斗くんが一緒なら、どこでも楽しいけど、ほ、ほんとに、どこでも大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「な、なら、頑張って考えるね!」
……あれ、一緒に考えるって話じゃなかったっけ?
いや、別にいいんだけどさ。
この世界では、それが普通なんだろうし。
俺がちょうどそう思ったところで、チャイムが鳴った。
それと同時に、スマホの通知を切っていなかったみたいで、通知音が鳴った。
【そういえば、昨日は聞きそびれちゃったけど、あの女の臭いって、何?】
……一旦、見なかったことにするか。
この授業が終わった時、何かしらの言い訳くらい思いついているだろう。……多分。
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