俺が無自覚な振りなんてしてるから

 今、俺と真奈は風呂を上がって、俺の部屋で気まずい雰囲気を垂れ流していた。

 理由は分かっている。

 俺が無自覚な振りなんてしているから、真奈は俺がそうさせたなんて微塵も思ってなく、自分が無理やりしてしまった、と思っているからだ。


「真奈」


 正直に俺からそうさせたことを言うつもりはないけど、真奈が自己嫌悪に踏み潰されないようにするためにも、俺は真奈の名前を呼びながら、体を密着させた。

 すると、それだけでもさっきのことを思い出してしまったのか、一瞬だけ幸せそうな雰囲気を醸し出すも、直ぐに泣きそうな表情になってしまった。


「ゆ、優斗……ごめん、なさい」


「なんで謝るの?」


「それは……私が、無理やり、優斗の大事なもの、奪っちゃったから」


「俺は別に何も奪われてなんかないよ? ……もしかして、さっきのことを言ってる?」


「ッ​──」


 真奈が息を飲んだ。

 

「あんまりよく分かんなかったけど、真奈の中は暖かくて気持ちよかったし、嬉しかったよ?」


 よく分からなかった、というところ以外は、嘘は言っていない。

 唯一問題があるとすれば、自分で言っている言葉なのに、気持ち悪すぎることくらいだろう。

 

「ぇ……で、でも、私、無理やり……」


「あれが何なのかは分からないけど、真奈ともっと深い関係になれた気がして、俺は嬉しかったんだけど、真奈はそうじゃないってこと?」


「そ、そんなわけない! わ、私も、ダメだって分かってるのに、優斗と繋がれて、嬉しかった……」


 よ、良し、取り敢えず、もう真奈は泣きそうな表情はしてないな。


「真奈、もう一回、しない?」


「ぇ?」


「真奈は無理やりしてしまったって部分を気にしてるんでしょ? なら、俺から誘うから、もう一回、しよ? ……まだあんまりよく分かってないから、またさっきみたいに真奈に色々してもらうことになっちゃうけど」


 多分、上手く無自覚な振りをしつつ、俺はそう言った。

 もう泣きそうな表情では無いけど、まだ感じなくてもいい罪悪感っていうのは残ってるだろうしな。

 ……まぁ、一番の理由は俺がもう一度したいからなんだけどさ。


「い、いいの?」


「うん」


「ほ、ほんとに、するよ?」


「俺から誘ったんだし、大丈夫に決まってるでしょ」


 強いて問題があるとすれば、母さんがもう少しで帰ってきてしまうかもしれない、といったところだろう。

 ……うん。もしもやっている途中で母さんが帰ってきたら、ここは貞操が逆転してる世界だからこそ、真奈の方が悪者になってしまう可能性があるんだよ。

 だからこそ、やるなら早くしたい。


 そう思っていると、俺は真奈に優しく、ベッドに押し倒された。

 また、柔らかい女の子特有の真奈の体が俺に当たる。

 ……さっきしたばかりだって言うのに、もう俺の下半身は準備万全だった。

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