ちゃんと登録してくれたんだな

「……ダメ。そんなことで誤魔化されない。そもそも、その臭いが優斗の部屋に染み付いたらどうするつもりなの」


 ……正直、結衣の匂いが俺の部屋に染み付いてくれるのなら大歓迎なんだけど、そんなことは言えるわけないし、どうしたら……いや、そうだ。俺もちょっと恥ずかしいけど、多分、どうせこの前見られてるんだ。今更だ。


「な、なら、お風呂、入ってこようかな。真奈も一緒に入る?」


 そう思って、俺はそう言った。

 すると、主導権を握り返せたのか、真奈は顔を真っ赤にして、動揺し始めた。


「えっ? お、お風呂に一緒って……な、何言ってるの!? そ、そんなの、だ、ダメに決まってる、でしょ」


「なんで? 幼馴染でしょ? なら、大丈夫だと思うけど」


 幼馴染だからって大丈夫なわけないことくらいもちろん分かってるけど、俺は首を傾げながら、不思議そうにそう聞いた。


「わ、私は女なんだよ!? ゆ、優斗、自分が言ってる意味、わ、分かってる?」


 ……まぁ、前の世界でも、言ってることはやばいだろうな。

 でも、実際この風呂の話のおかげで、結衣の匂い? の話からは上手いこと真奈の意識を逸らせているわけだし、仕方なかったと思う。

 ……うん。仕方ない仕方ない。俺の下心があるわけでは決して無い。

 見たいかみたくないかで言えば見たいけど、タオルは体に巻くだろうし、どうせ見れないんだ。つまり、違うったら違う。


「分かってるよ? ……あ、流石に家のお風呂だと狭いからダメって話?」


「そ、そうじゃなくて……ゆ、優斗は男の子なんだから、もう少し、危機感って言うか、警戒心を持たないとダメだよ!」


「? よく分かんないけど、真奈なら大丈夫でしょ?」


「​──ッ、だ、大丈夫……じゃない、けど、ゆ、優斗は、ほ、ほんとにいいの?」


 恐る恐るではあるけど、何かを期待するような目で俺を見ながら、真奈はそう言ってきた。

 

「うん。別にいいよ? 真奈もいいのなら、着替え、家から持ってきたら?」


「ぇ、ぁ、う、うん。持って、来る」


 顔を真っ赤にしながら、首を縦に振ってくれた真奈はそのまま俺の家を出て、自分の家に着替えを取りに向かった。

 何とか上手くいったな。


 そう思いながら、俺は少しだけ自分の服の匂いを嗅いでみた。

 ……うん。全然結衣の匂いなんてしないぞ。

 臭くもなければ、別にいい匂いという訳でもない。

 そんな感じだ。

 ……真奈はよく気がついたな。

 鼻が良かったりするのか?


「タオルでも用意するか」


 真奈が体に巻くタオルと、俺が腰に巻くタオルを用意しておかないとだからな。

 着替えを持ってくるついでにタオルも自分で用意してくるかもだけど、こっちで用意しておいて損はないからな。


【言われた通り登録した。後、お前の名前も教えて】


 着替えもタオルも用意し終わったから、適当にスマホを見ると、連絡先が登録されたばかりの不良少女……由菜からそんなメッセージが送られてきていた。

 ちゃんと登録してくれたんだな。


【優斗だよ。遅れてごめんね。これからよろしく】


 先生が俺の名前を呼んでたし、知ってると思うけど、俺から聞きたかったのかな、と思うと、めちゃくちゃ可愛らしく思えてくるな。


【別に、お前と仲良くする気なんてないけど、一応、よろしく、優斗】


 由菜からそんな返信が帰ってきたところで、真奈が着替えを持って帰ってきた。

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