まさかな

 目が覚めると、もう部屋の中はかなり暗くなっていた。

 結構時間が経ったんだな。


 そう思って、スマホを確認すると、もうそろそろ母さんが帰ってくる時間だった。

 ……昨日の今日だし、このまま眠ってたら、あの母さんのことだから、何か体調が悪いのかと思われて、病院に連れていかれてしまう可能性もあるから、ちゃんと起きるか。

 もう疲れは取れたしな。


【ゲームってする?】


 それでも、暇なことには変わりないから、俺は真奈と結衣に向かってそんなメッセージを送った。

 もしもするのなら、何か面白いゲームでも紹介してもらおうと思って。

 最初から二人に聞いておけばよかったな。

 しないのなら意味は無いけど、するのなら、共通の話題だって見つかることになるんだしな。


【しないかな。私には優斗がいるし】


 そう思っていると、ほぼ同時に通知の音が鳴った。

 真奈の方は……どういうことだ? なんで俺がいたら、ゲームをしないんだ? ……もしかして、イケメンと恋愛要素があるゲームしかこの世界には無いのか? そういう意味で、俺がいるからそんなゲームをする必要が無かったって意味か?


【……一応、たまにするよ】


 そんな疑問を内心に思いながらも、今度は結衣のメッセージに目を向けた。

 結衣はするのか。なら、結衣に聞こうかな。


【なら、何か俺におすすめのゲームって無いかな? 最近暇でさ】


【……優斗くんにおすすめできるようなゲームは無い、かな】


【別になんでもいいんだよ?】


【……私がやってるのは、全部優斗くんにだけはおすすめ出来ないから】


 俺にだけって……エロゲ的なゲームだったりするか? ……いや、まさかな。

 ……違うと思うけど、もう触れないでおこうかな。

 

【そっか。わざわざ、ありがとね】


【今回は役に立てなかったけど、他のことなら、なんでも言って】


 結衣同様真奈にもお礼のメッセージを送って、俺はスマホを閉じた。


「ゆうちゃん、ただいま〜」


 それと同時に、家の扉の鍵が開いて、母さんが帰ってきたみたいで、そんな声が聞こえてきた。


「母さん、おかえり」


 部屋を出て、母さんを出迎えながら、俺はそう言った。


「学校、大丈夫だった?」


「大丈夫だったよ。普通に友達も出来たし」


「本当? それなら、良かったわ。……でも、嫌になったら、直ぐに学校なんてやめたら大丈夫だからね」


「うん。分かってるよ」


 心配症だな、と思いながらも、俺はそう言った。

 少し前までの俺の様子が、母さんをこんな心配症にさせてるんだから、文句なんて言えるわけが無いしな。


「お風呂にはもう入った?」


「まだだよ」


「なら、入ってきてもいいわよ。その間に、夕飯の準備をしておくからね」


「分かったよ、母さん」


 ちょうど風呂には入ろうと思っていたところだし、俺はそんな母さんの言葉に頷いて、風呂場に向かった。

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