無自覚な人間は……

「美味しかったね、真奈」


 クレープを食べ終わった俺は、連れてきてくれた真奈に向かってそう言った。


「な、なら、良かったよ」


 すると、真奈は未だに顔を赤くしながら、そう言ってきた。

 もう俺が口をつけた場所なんてとっくの前に食べ終わってるのにな。……まぁ、俺もまだちょっと意識してしまってるし、分からなくはないんだけどさ。


「じゃあ、お互い食べ終わったし、帰ろっか」


「う、うん。分かった……ま、また、手、繋いでもいい?」


「うん。もちろんいいよ」


 そう言って頷きながら、俺は真奈の手を握った。

 暖かい。……ここに来る時に繋いだ手よりも、暖かい気がする。


「……えへへ」


 そんなことを思っていると、真奈からそんな声が漏れ出ていた。

 可愛いけど、聞かなかったことにした方がいいよな。




 そんなこんなで、適当な話をしながらゆっくりと一緒に歩いていると、俺と真奈の家が両方見えてきた。

 

「今日はありがとね、真奈」


 俺はそう言って、真奈と繋いでいた手を離した。

 すると、また残念そうな雰囲気を醸し出してきたけど、もう声が漏れ出ることは無かった。


「また明日」


「……う、うん。また明日、優斗」


 そして、お互い家の中に入った。

 まだ母さんは帰ってきていない。仕事に行っているんだろう、当然だ。


「……結局、どうしようかな」


 家に入るなり、俺はそう呟いた。

 さっき思っていた、裏垢を作る話のことだ。

 別にバレなければ問題ないと思うんだけど、もしもバレたら、もう無自覚な振りなんてものは出来なくなるんだよな。

 そういうことに無自覚な人間はエロい感じの裏垢なんて作らないだろうし。

 ……まぁ、今は一旦置いておいて、服でも着替えるか。

 

 そして、服を着替え終えたところで、スマホが振動した。


「真奈か?」


 そう呟きながら、俺はスマホを手に取った。

 すると、それは真奈からのメッセージではなく、結衣からのメッセージだった。


【優斗くん、これからよろしくね!】


 ちゃんと連絡先を登録してくれたんだな。

 

【こちらこそ、よろしく】


 よし、これでいいかな。

 無難だけど、無難なのが一番だ。

 ……正直、結衣を照れさせたい気持ちもあるけど、メッセージで照れさせたところで、反応を見られないしな。


「……一気に暇になったな」


 俺はそう呟いた。

 俺のスマホにはゲームも入ってないし、本当に暇だ。何かダウンロードでもしようかな。

 

 そう思って、ゲームのダウンロードサイトを色々と見たんだが、俺が気になるようなゲームは無かった。

 いや、だってさ、大体のゲームのメインキャラがイケメンなんだよ。……ストーリー的に恋愛要素があるものが大体だし、イケメンと恋愛なんてしたくねぇよ、俺。


「……昼寝でもするか」


 元の……前世の俺からは程遠い感じで過ごしたからこそ、正直疲れた。

 寝て休憩するのも悪くない。どうせ暇だしな。

 

 そして、ベッドに横になった俺は、目を閉じた。

 すると、自分で思っていたよりも疲れていたみたいで、直ぐに眠りにつくことが出来た。

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