放課後デート
「ごめん真奈、ちょっと遅くなっちゃった」
教室から急ぎ足で校門まで来た俺は、そこで待っていた真奈に向かってそう言った。
「だ、大丈夫だよ。私も今来たところだから」
「ほんと? なら良かった」
「う、うん」
そんなことないと思うんだけど、せっかく真奈がそう言ってくれてるんだから、俺はそれに乗っかることにした。
「じゃあ、行こっかって言いたいところなんだけど……」
「え? どうしたの? 優斗」
「いや、行くのは行くんだよ? ただ、なんで真奈はスマホを持ってるのかと思ってさ」
俺も人のことをとやかくと言える立場じゃないことは分かってる。だからこそ、注意をしようとしている、という訳ではなく、単純な興味本位だ。
俺は知らなかったから、という、少なくとも自分の中では言い訳が立つんだけど、真奈に関してはそんな言い訳絶対できないだろうしな。
「もしかしたら、優斗から連絡が来るかもって思って、いつも持ってるよ」
当たり前のような顔をして、真奈はそう言ってきた。
……あー、なる、ほど? 前世のことを思い出して、今日の朝俺が真奈に話しかけたから、今でこそこんな感じで普通な感じだけど、少し前までなら、俺と真奈はこうやって普通に話をするような仲じゃなかったもんな。
……うん。それ、本当に持っていっちゃいけないところにスマホを持っていく理由になってるのか? ……まぁ、なってるってことにしておこうか。その方がいいはずだ。
「そうなんだ。それじゃあ、理由も分かったことだし、デート、行こっか」
「う、うん……え? で、デート?」
「ん? 違った?」
てっきりデートのつもりで誘ってきてるのかと思ったけど、違ったのか? ……そうだとしたら、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。
……まぁ、それでも、突き通すつもりではあるけどさ。
「う、ううん。違うくない! デート、行こっか」
そう思っていると、真奈は顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにしながらも、笑顔でそう言ってきた。
……可愛すぎるな。
「うん」
俺は頷いて、真奈に着いて行った。
流石にもう場所も分からないのに俺が前を歩こうとなんてしない。
少なくとも今日だけで二回もそれで失敗したからな。いくら俺でも学んでるんだ。
「……優斗、手、繋いでいい?」
そうして真奈に案内されながらも一緒に歩いていると、真奈は緊張した面持ちで突然そう聞いてきた。
朝は俺から繋いだから、勇気を出して聞いてくれたのかな。
「もちろんいいよ」
そう思いつつも、頷いて、俺の方から真奈と手を繋いだ。
俺も繋ぎたかったし、ちょうどいいからな。
「そういえば、真奈」
「えっ? な、何?」
そして、真奈が俺と手を繋げたことを嬉しそうにしているのを気が付かない振りをしながら、俺は大事なことを言うことにした。
「……クレープ、食べに行くんだよね? 俺、今更だけど、お金ないんだよね。帰ったらもちろん返すから、貸してくれない?」
「大丈夫。優斗の為なら、お金なんていくらでもあげるから、心配しないで」
ん? あれ、もしかして、真奈って貢ぎ癖があったりするのか? ただでさえハーレムを作ろうとしてるクソ野郎なのに、ヒモになるのは本当にまずいぞ?
「い、いや、借りるだけで、返すから」
まだ中学生だし、バイトなんて出来ないから、お小遣いとして貰ったお金になるけど、俺はそう言った。
……まぁ、この世界の男なら、中学生でも正直お金くらい稼げそうな気はするけどな。
前の世界じゃ男がなんて想像もつかないけど、体を売ったり、とかさ。嫌悪感とか無いし。
……裏垢でも作ってちょっとえっちな写真でも売ろうかな。
……やばい。ちょっといいかもしれないって思ってしまう自分がいる。
「優斗? お金なんて返さなくていいけど、今、何考えてたの?」
「え? あぁ、クレープ、どんなのがあるかなぁ、って考えてただけだよ?」
流石に今考えていたことをバカ正直に言う訳にはいかないから、俺はそう言って誤魔化した。
「ほんと?」
「ほんとだよ。というか、あれじゃないの?」
「あっ、あれだよ。行こ!」
よし、上手く誤魔化せたみたいで良かった。
アカウントについては、帰ってから作ろうかな。
そう思いながら、俺は真奈の後を追った。
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